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みんなの質問コーナー

(ラウンド4の重苦しい空気を打ち破るように、スタジオに明るいジングルが流れる。照明もやや明るくなり、あすかが笑顔で中央に進み出る)


あすか: 「いやはや、ラウンド4も魂のぶつかり合いでしたね! 『罰』と『時代の価値観』…うーん、考えれば考えるほど、答えが出ない問いかもしれません。テレビの前の皆さんも、きっと色々なことを感じられたのではないでしょうか。」


あすか: 「さて! ここで少し趣向を変えまして、この白熱の議論をリアルタイムでご覧になっている視聴者の皆様から、たくさんの質問が寄せられています! このコーナーでは、皆様の素朴な疑問から、核心に迫る鋭い質問まで、ゲストの方々に直接ぶつけてみたいと思います!」(手元のタブレット端末を操作する)


あすか: 「さあ、どんな質問が来ているでしょうか… まずは… やはりこの方への質問が多いですね! ヘンリー8世陛下!」


ヘンリー8世: (ふん、と尊大に構える)「よかろう。何でも聞いてみるがよい。王の寛大さを示してやろう。」


あすか: 「ありがとうございます! では早速… これは、非常に多くの方が気になっているようです。(ゴクリと息をのみ)ズバリ、陛下が6人の奥様の中で、一番『運命の人』だと感じていらっしゃったのは、どなただったのでしょうか?」


(スタジオが一瞬静まり返る。他のゲストも興味津々といった表情でヘンリー8世を見つめる)


ヘンリー8世: (一瞬、虚を突かれたような表情を見せるが、すぐに咳払いをして)「…な、なんという愚問であるか! 王の愛とは、個人の情愛を超えた、国家の安寧と繁栄のためのもの! 世継ぎを産むこと、王家を支えること、それこそが王妃の最も重要な役割である! 誰か一人を特別扱いするなど、王としてあるまじきことよ!」(早口で、やや狼狽しながら言い放つ)


オスカー・ワイルド: (くすくすと笑いを漏らす)「おや陛下、それは見事な言い訳…いえ、ご立派なご見解で。」


ヘンリー8世: 「な、なにがおかしい!」


あすか: 「な、なるほど、王としての公の立場を優先された、ということですね! では、次の質問です。陛下が断行された宗教改革ですが、ラウンド1では『世継ぎ問題と信仰心』が理由だと仰いました。しかし、正直なところ、ローマ教皇庁からの独立による政治的・経済的なメリットや、ご自身の権力強化への野心が、より大きな動機だったのでは? という厳しい意見もございますが…。」


ヘンリー8世: (今度は落ち着きを取り戻し、威厳のある表情で)「…野心と呼ぶなら呼ぶがよい。だが、イングランドをローマのくびきから解放し、真に独立した強い国家とすることこそ、王たる余の最大の責務であったのだ。教皇庁へ流れていた莫大な富を国内に留め、修道院の土地を有効活用し、王権を強化することで、国の基盤はより強固になった。これは紛れもない事実である! 結果として信仰の自由も、この国にもたらされたのだ。全ては繋がっておるのだよ!」(自信に満ちた口調で語る)


あすか: 「なるほど… 個人的な動機と、国家的な動機が複雑に絡み合っていた、と。ありがとうございます。では、最後に陛下へ。ご自身の娘であるエリザベス1世女王の治世は、イングランドの黄金時代とも称されます。父親として、彼女の統治をどのように評価されますか?」


ヘンリー8世: (一瞬、父親としての柔和な表情が垣間見える)「…エリザベスか。…ふん、女にしては、よくやったと言えよう。余の血を引くだけのことはある。…まあ、結婚もせず、世継ぎも残さなかった点は、いただけぬがな。」(少しだけ誇らしげに、しかし最後はやはり厳しく評価する)


あすか: 「(ツンデレ…?)陛下、ありがとうございました! では次に、マリー・アントワネット様へのご質問です。」


マリー・アントワネット: 「はい、なんでしょうか。」(少し緊張した面持ちで姿勢を正す)


あすか: 「『パンがなければお菓子を』発言は否定されましたが、当時のフランス国民、特に貧しい人々がどれほど苦しい生活を送っていたか、ヴェルサイユにいらしたマリー様は、本当に理解されていたのでしょうか? という質問です。」


マリー・アントワネット: (深く息をつき、悲しげな表情で)「…正直に申し上げますと、宮廷という閉ざされた世界で育ったわたくしには、国民の皆様の本当の苦しみを、肌で感じることは難しかったのかもしれません。報告は受けておりましたが、それがどれほどのものなのか、想像力が及んでいなかった… その点は、深く反省しております。」


マリー・アントワネット: 「ですが、決して無関心だったわけではございません。慈善活動にも関わっておりましたし、飢饉の際には、私財を投じることもいたしました。ただ…それが焼け石に水であったこと、そしてわたくしの行動が、しばしば誤解や反感を買ってしまったことは、痛恨の極みです。もっと早く、もっと違う形で、国民の皆様に寄り添うべきだった… 今となっては、そう思います。」(目に涙を浮かべ、後悔の念を滲ませる)


あすか: 「ありがとうございます。そのお気持ち、きっと伝わっていると思います。では、もし… もしフランス革命が起こらなかったとしたら、マリー様はどのような人生を送りたかったですか?」


マリー・アントワネット: (少し考え、儚げな笑みを浮かべる)「…もし許されるのなら、政治や儀礼から少し離れて…子供たちの成長をそばで見守りながら、プチ・トリアノンのような場所で、静かに、穏やかに暮らしたかったですわね。気の置けない友人たちと音楽を楽しんだり、庭仕事に精を出したり… そんな、ささやかな幸せを夢見ておりました。」


あすか: 「(涙腺が…)ささやかな幸せ、ですか…。ありがとうございます。最後にマリー様へ。現代のファッションや、社会で活躍する多くの女性たちの姿をご覧になって、どう思われますか?」


マリー・アントワネット: (少し驚いた表情から、興味深そうな表情に変わる)「まあ…! 皆様、とても自由で、活動的ですこと! ファッションも、窮屈なコルセットもなく、実に多様で…素晴らしいですわ! 女性が男性と同じように学び、働き、自分の意見を主張できる社会… わたくしの時代には考えられなかったことです。少し…羨ましくも思いますわね。」(素直な感嘆の声を上げる)


あすか: 「マリー様、ありがとうございました! それでは次に、オスカー・ワイルドさんへの質問です!」


オスカー・ワイルド: 「どうぞ。どんな難問かな?」(余裕のある笑みで応じる)


あすか: 「では… レディング監獄での生活、その中で最も辛かったことは、具体的にどのようなことでしたか?」


オスカー・ワイルド: (表情から笑みが消え、遠い目をする)「…最も辛かったこと、か。肉体的な苦痛…粗末な食事、硬い寝床、過酷な労働、それらも確かに辛かった。だが、それ以上に耐え難かったのは…精神的な屈辱と、美からの完全な断絶だった。」


オスカー・ワイルド: 「名前ではなく番号で呼ばれ、人間としての尊厳を奪われること。美しい言葉を読むことも、書くことも許されず、ただ醜悪な現実と向き合わされ続けること。そして何より、外界から完全に遮断され、愛する人々との繋がりを断たれる孤独… あれは、魂をゆっくりと殺していくような時間だった。『深淵(De Profundis)』から見上げる星だけが、唯一の慰めだったよ。」(静かに、しかし深く刻まれた苦痛を滲ませて語る)


あすか: 「聞いているだけで胸が痛みます…ありがとうございます。では、もしあなたがこの現代に生きていたら、どんな作品を書き、社会に何を訴えかけたいと思われますか? 例えば、SNSなどは使われますか?」


オスカー・ワイルド: (少し考え、再び皮肉な笑みを浮かべる)「現代、ね。実に騒々しく、情報過多な時代のようだ。もし私が今生きていたら… そうだな、やはり人間の偽善や、社会の矛盾を突くような喜劇を書くだろうね。題材には事欠かないようだ。」


オスカー・ワイルド: 「それと…SNS? フフ、それは格好の舞台かもしれない。ウィットと警句を140字に凝縮して、世界中の人々を煙に巻くのは楽しそうだ。だが、同時に、あの匿名性の陰湿さや、炎上という名の集団ヒステリーには、辟易へきえきとするだろうな。私は、顔の見える相手と、美しい言葉で議論したい。」


あすか: 「なるほど… ワイルドさんらしいですね。最後に、少し立ち入った質問かもしれませんが… あなたを結果的に破滅へと導く一因ともなった、アルフレッド・ダグラス卿のことを、今、どう思っていらっしゃいますか?」


オスカー・ワイルド: (表情が曇り、複雑な感情がよぎる)「…ボージー(ダグラス卿の愛称)か。…若く、美しく、そして…致命的なまでに未熟だった。彼の存在が、私の人生にこの上ない喜びと、そして底知れぬ悲劇をもたらしたことは事実だ。彼を…憎んだ時期もあった。だが、今は… そうだな、ただ、若気の至りが生んだ、一つの悲しい物語の登場人物として、記憶の中にいるだけだ。許すとか、憎むとか、そういう次元を超えたところにね。」(静かに語り、目を伏せる)


あすか: 「…ありがとうございます。深いお話でした。さて、それでは最後に、ラスプーチン殿への質問です!」


ラスプーチン: (それまで黙って他の質疑応答を聞いていたが、あすかに促され、ゆっくりと顔を上げる)「…フン、ワシにも聞きたいことがあるのか。」


あすか: 「もちろんです! まず、皆さんが一番知りたいであろう質問… あなたのその不思議な『力』、皇太子の血を止めたとされる力は、一体何だったのでしょうか? 本当に神から授かった奇跡だったのか、それとも…人心掌握術や、偶然、あるいは何か別のトリックがあったのでしょうか?」


ラスプーチン: (ニヤリと笑う)「力、か。それが奇跡であろうと、なかろうと、現に皇太子様の苦しみは和らいだ。皇后陛下は、それに救われた。それ以上、何が必要かね? 人は、信じたいものを信じるものだ。ワシは、ただ神の御心に従い、祈りを捧げただけよ。」


ヘンリー8世: 「詭弁を弄するな、怪僧め!」


あすか: 「(うーん、やはりはぐらかされましたね…!)では、次の質問です。あなたは一介の農民から、なぜあれほど皇帝夫妻、特に皇后陛下の信頼を得て、宮廷深くに入り込めたのでしょうか? その人心掌握術の秘密は? そして、皇后陛下との間には、巷で噂されるような特別な関係があったのでしょうか?」


ラスプーチン: (少し真顔になり)「…秘密などない。ただ、ワシはあの御方々の、誰にも言えぬ苦しみ、深い孤独を理解した。そして、恐れずに、ただ寄り添っただけだ。他の者たちが、体面や政治的計算ばかりを気にする中でな。皇后陛下は、純粋で信仰深いお方だった。ワシは、その信仰心に応えたに過ぎぬ。特別な関係? フン、下衆げすの勘繰りよ。我々の間にあったのは、神への信仰と、皇太子様を思う親心だけだ。」(真摯さを装いつつも、どこか計算された響きがある)


マリー・アントワネット: (ラスプーチンの言葉に、複雑な表情を浮かべる)「…孤独に寄り添う、ですか…。」


あすか: 「最後にラスプーチンさんへ。あなたは貴族たちに恨まれ、最終的に暗殺されましたが、ご自身の死を予期していましたか? 何か、最期の言葉などは…?」


ラスプーチン: (ふっと息を吐き、遠い目をする)「…死の影は、常にワシの傍らにあった。いつかこうなることは、分かっていたのかもしれぬな。だが、恐れはなかった。ワシは、ワシの運命を受け入れるだけだ。最期の言葉? ククク… それは、ワシを殺した者たちへの、呪いの言葉だったかもしれぬし、あるいは、ロシアの未来を憂う言葉だったかもしれぬ…。それは、想像に任せよう。」(再び謎めいた笑みを浮かべ、それ以上語ろうとしない)


あすか: 「ありがとうございました、ラスプーチン殿。…いやはや、質問コーナー、いかがでしたでしょうか? 皆様の意外な一面や、秘められた思いに触れることができたような気がします。」


あすか: 「まだまだ伺いたいことは山ほどありますが、残念ながらお時間のようです。この貴重な回答を踏まえ、いよいよ最後のラウンドへと参りましょう! テーマは『もし現代に生きていたら?』です!」


(質問コーナー終了のジングルが鳴り、和やかさと緊張感が入り混じった雰囲気の中、最終ラウンドへの期待が高まる)

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