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ラウンド2:誰がスキャンダルを作るのか?〜権力、メディア、大衆〜

(ラウンド1で各々が自身のスキャンダルについての「言い分」を語り終え、スタジオには様々な感情…自己正当化の熱、悲痛な弁明、皮肉な達観、そして謎めいた沈黙が渦巻いている。あすかが、その複雑な空気を受け止め、静かに次のテーマへと導く)


あすか:「皆様、ラウンド1では、それぞれの立場からの『真実』と『言い分』を、魂を込めて語っていただきました。ありがとうございます。…しかし、皆様のお話を伺っていると、いわゆる『スキャンダル』というものが、必ずしもご本人の行動だけによって生まれるものではない、という側面が強く浮かび上がってきたように感じます。」


あすか:「誰かの意図、情報の流れ、そしてそれを受け取る人々の心…そういった周りの様々な要因が複雑に絡み合い、時に事実を歪め、あるいは針小棒大に伝え、特定のイメージを作り上げていく…。そこで、ラウンド2では、この点について深く掘り下げたいと思います。テーマは『誰がスキャンダルを作るのか?〜権力、メディア、大衆〜』です!」


あすか:「まず、このテーマについて、最も切実な思いをお持ちかもしれません。マリー・アントワネット様。あなたは、当時のメディア…例えばパンフレットや風刺画によって、非常に悪意のあるイメージを植え付けられた、と言われていますね。」


マリー・アントワネット:(頷き、再び悲痛な表情を浮かべる)「はい…その通りです。わたくしがフランスに嫁いだ当初から…いえ、嫁ぐ前から、『オーストリア女』として、多くの偏見の目に晒されていました。」


マリー・アントワネット:「そして、宮廷での暮らしが長くなるにつれ、事実とは異なる、あるいは些細なことを針小棒大に描いたパンフレットや、目を覆いたくなるような下品な風刺画が、パリの街中に溢れるようになったのです。」(当時の屈辱を思い出し、扇子で顔を半分隠す)


マリー・アントワネット:「例えば…(少し躊躇いがちに)わたくしが贅沢な髪型を楽しんでいることを、『国民が飢えているのに、小麦粉を髪に塗りたくっている!』と非難したり、フェルセン伯爵と親しくしているだけで、『不貞を働き、オーストリアに機密を漏らしている!』と断定したり…。『首飾り事件』の時など、わたくしがまるで主犯であるかのような、おぞましい絵が出回りました…。」


マリー・アントワネット:「そういった印刷物は、文字の読めない民衆にも、絵を見れば内容が伝わります。悪意をもって単純化され、繰り返し刷り込まれたイメージは、いつしか『真実』として人々の心に根付いてしまうのです。どれだけ否定しても、弁明しても、一度広まった悪評を覆すことは、本当に…本当に難しいことでした。」(声を詰まらせる)


オスカー・ワイルド:(マリーに同情的な目を向け)「…お察しします、王妃様。言葉や絵の持つ力は、時に剣よりも鋭く、人の心を傷つけ、評判を殺すことができますからね。特に、それが大衆の妬みや不満と結びついた時、その力は恐ろしいほど増幅される。」


ヘンリー8世:(腕を組み、ふんと鼻を鳴らす)「ふん、王妃たるもの、そのような下々の雑音に心を乱されてどうする。毅然として、無視しておればよいものを。まあ、女子供には難しいかもしれぬがな。」


マリー・アントワネット:(ヘンリー8世に少し反論するように)「陛下、それは…無視できるようなものではございませんでした。その『雑音』が、日々の暮らしを脅かし、最後にはわたくしたちの命をも奪ったのですから…!」


ラスプーチン:(低い声で、マリーに語りかけるように)「…憎しみは、伝染うつる病のようなものだ、王妃様。そして、噂やデマは、その病を運ぶ風だ。一度広まれば、どこから来て、誰が広めたのかなど、誰も気にしなくなる。ただ、目の前の『敵』を憎むことだけに夢中になるのだ。」


あすか:「ラスプーチンさん、あなたご自身も、数多くの怪しげな噂に常に付きまとわれていましたよね。それらは、一体どこから生まれてきたとお考えですか?やはり、あなたを快く思わない人々…宮廷内の敵対者などが、意図的に流したという可能性も?」


ラスプーチン:(目を細め、意味ありげに頷く)「フフ…宮廷とは、常に権力闘争の場よ。ワシのように、皇帝陛下と皇后陛下から篤い信頼を得ている者を、快く思わぬやからは、掃いて捨てるほどいた。」


ラスプーチン:「ワシが酒を飲めば『酔っ払いの乱暴者』、女と話せば『色欲に溺れた怪僧』、皇帝陛下に助言すれば『国政を壟断する黒幕』…何をやっても、悪く解釈され、尾ひれがついて広まっていった。もちろん、中にはワシの評判を貶めるために、意図的に嘘を流した者もいただろうな。特に、ワシを追い落とそうとしていた貴族どもは、あらゆる手段を使ってきた。」


ラスプーチン:「だがな…(少し声を潜め)面白いことに、その悪評や怪しげな噂こそが、ワシの『力』の一部にもなっていたのだ。人々はワシを恐れ、同時に、その不可解な力に惹きつけられた。噂は、真実よりも早く、そして遠くまで届く。それを理解し、利用することもまた、生き抜くすべよ。」(悪びれる様子もなく、むしろ楽しんでいるかのように語る)


オスカー・ワイルド:「なるほど…スキャンダルを逆手に取って、自らのカリスマに変えてしまうとは。実に悪魔的な手腕だね。私には到底真似できないが。」


ヘンリー8世:「貴様のような怪僧が、王家に取り入ること自体が、国家にとってのスキャンダルなのだ!噂がどうこう以前の問題よ!」(ラスプーチンを忌々しげに睨む)


あすか:「ヘンリー陛下、あなたご自身は、情報…当時のメディアである印刷物などを、どのように捉え、利用されていたのでしょうか?宗教改革の際など、ご自身の主張を広める必要があったと思いますが。」


ヘンリー8世:(少し得意げに)「うむ。余は、印刷術の持つ力を、早くから理解していたつもりだ。トマス・クロムウェル(側近)などにも命じて、ローマ教皇庁を批判し、イングランド国教会の正当性を訴えるパンフレットや書籍を、広く流布させた。」


ヘンリー8世:「だが、同時に、それは諸刃の剣でもあった。ルター派のような異端の教えや、余に批判的な意見もまた、印刷物によって広まる危険があったからな。故に、厳しい検閲制度を設け、不穏な書物は徹底的に弾圧した。王に逆らう言論など、許しておくわけにはいかぬからな!」(権力者としての情報統制の必要性を説く)


ヘンリー8世:「それに、民というものは、えてして単純な物語を好むものだ。複雑な神学論争よりも、『強欲なローマ教皇からイングランドを守る勇敢な王』といった分かりやすい構図の方が、受け入れられやすい。情報をどう見せるか、どう語るかは、統治において極めて重要なことなのだ。」


オスカー・ワイルド:「(皮肉たっぷりに)ほう、陛下もなかなか、現代で言うところの『プロパガンダ』や『スピンコントロール』に長けていらっしゃったようだ。しかし、陛下、情報を統制し、都合の良い物語だけを流布させることは、結局のところ、民から真実を知る権利を奪うことにはなりませんかな?」


ヘンリー8世:「民に与えるべきは、秩序と安寧である!余計な情報で混乱させる必要などない!王が示す道こそが、民にとっての真実なのだ!」(断固として言い放つ)


あすか:「権力による情報操作…これもまた、スキャンダルを生み出す大きな要因と言えそうですね。ワイルドさん、あなたの場合は、クイーンズベリー侯爵という個人の憎悪が発端でしたが、それが大きなスキャンダルへと発展した背景には、当時のメディアや大衆の目があったのではないでしょうか?」


オスカー・ワイルド:「まさにその通りだ。クイーンズベリー侯爵の個人的な恨み…それは、彼の息子アルフレッド・ダグラスが私と親しくしていることへの、野蛮な父親としての怒りに過ぎなかった。だが、当時のタブロイド紙は、その下世話な親子喧嘩を、センセーショナルな『スキャンダル』として、これでもかと書き立てたのだ。」


オスカー・ワイルド:「彼らは、事実関係などお構いなしに、私の私生活を暴き立て、同性愛に対する社会的な偏見を煽り立てた。読者もまた、成功した芸術家が破滅していく様を、安全な場所から覗き見て、溜飲を下げていたのだろう。私の裁判は、法廷というより、むしろ大衆の好奇心を満たすための見世物と化していた。」(苦々しげに語る)


オスカー・ワイルド:「結局のところ、スキャンダルを作り出すのは、特定の個人の悪意だけではない。それを増幅させるメディアの扇情主義と、ゴシップを渇望する大衆の心理…その三者が結びついた時に、スキャンダルは最も醜悪な形で牙を剥くのだよ。」


マリー・アントワネット:(ワイルドの言葉に深く頷く)「本当に…その通りですわ。一度、大衆の好奇心と悪意の対象になってしまうと、もう何をしても、何を言っても、悪いようにしか受け取ってもらえなくなってしまう…。」


ラスプーチン:「フン、大衆など、風になびあしのようなものよ。昨日まで称賛していた者を、今日は石もて追う。気にするだけ無駄だ。」


ヘンリー8世:「だからこそ、王がしっかりと手綱を握り、導かねばならぬのだ!」


あすか:「権力者の意図、メディアによる情報の選択と誇張、そして大衆の心理…。スキャンダルは、実に様々な要因が絡み合って生まれる、複雑な社会現象なのかもしれませんね。」


あすか:「では、一体『誰』が、そのスキャンダルに対して、最も責任を負うべきなのでしょうか?スキャンダルを起こした(とされる)ご本人なのか、それを意図的に広めた者なのか、あるいは、それを信じ、消費し、増幅させた私たち大衆一人ひとりなのでしょうか…?」


あすか:「この問いは、次のラウンド…『プライバシーvs公共の利益』という、さらに根源的な問題へと繋がっていきそうです。皆様、ラウンド2の議論、ありがとうございました。」


(ラウンド2終了のジングル。スキャンダル発生のメカニズムが浮き彫りになり、議論はより核心へと向かうことを予感させる)


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― 新着の感想 ―
 ヘンリー8世のコメントに、NHKの行ったユヴァル・ノア・ハラリ氏へのインタビュー記事を思い出しました。  そこでは「情報はテクノロジーと結びつき、ゆがんだ情報が時に大惨事を引き起こす。さらにAI開発…
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