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著者:万葉 「かぐや姫 現代バージョン」

 とある夫婦は、40歳に差し掛かり、多額の金銭を支払い、不妊治療に取り組んでいたがなかなか子供を授かることができなかった。妻である女はそれを気に病んでおり、会社では産休育休を取る同僚たちが残した仕事をこなす日々であり、旦那である男も周囲からの「子供はまだか」という声に鬱々としていた。不妊治療を二年ほどし、二人は諦めることにした。自分たちの子供を持つことを。支援団体に登録し、生みの親と暮らすことができない子供の、育ての親となる選択をしたのである。


 ある日、旦那が最寄駅からマンションへ歩いていると、近所にある所有者不明土地の中から赤ちゃんの泣き声がした。そこは数年前から、都内の一等地であるにも関わらず所有者が不明で、たくさんの木々が生い茂っている広い土地であった。真ん中に行くと、なぜか竹が生えており、そこには黄色に光る赤ちゃんが置かれていた。


 旦那は急いで妻と警察に連絡し、妻が駆け付け、数分後には警察が到着した。土地には勿論、防犯カメラは設置されておらず、誰がこの赤ちゃんを放棄したのか知る術はなかった。


「あの子、どうなるんだろう」


「……かなり幼かったから、生まれてすぐ置いて行ったのかもな」


「たまに、ニュースでやってるよね、望まれない妊娠っていうやつ」


 事情を説明し、家に帰れば丁寧に作られた夕飯がテーブルの上に並んでいる。不妊治療のために通っている病院で勧められているメニューで、旦那は何も言えなかった。言わずとも、二人とも思っていることは同じなのだ。あの子が、うちに来てくれていたのなら、妻のお腹に来てくれていたのなら、あんな雑草に覆われたところに置きっぱなしになんてしないのに、と。


 三日後、登録している支援団体から連絡がきた。何かのご縁かもしれない、と。


 次の日、赤ちゃんに会いに行った。三日ぶりに抱いた赤ちゃんは、少し前より暖かくて、二人で「かぐや」と名づけて、正当な順番を踏み、親となった。

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