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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

国が存亡の危機にある姫様に召喚された勇者ですが、いきなり屋根をぶち抜いてしまいました。

作者: 鰯づくし

※自分でもやりすぎたとは思っております。反省しておりますが、恐らく今後も自重はしないかと思われます。

 時折地面が揺れ、遠くから地響きのような音がする。

 今まさに、高い壁によって城塞化された王都が、落ちようとしている。

 魔物の群れが押し寄せている正門から遠く離れた神殿の、その奥にある儀式の間にまで聞こえてくるのだ、その時は遅くないのだろう。

 今この場にいる神官達や貴族達も一様に悲愴な顔を揃える中、床に書かれた魔方陣の前に跪く一人の少女だけが、その瞳から力を失っていなかった。

 少ない明かりの中にあっても輝きを失わない金の髪は長く、腰の辺りまで。

 ほっそりとした身体、知性を感じさせる翠の瞳のたおやかなその姿は、これで耳が尖っていればエルフと見まごうほどの美しさ。

 いや、その神聖とも言える存在感はあるいはそれを凌駕するか。

 今この場において、彼女の存在が貴族達の心をギリギリで支えているのは明らかだ。


「ひ、姫様、まだでございますか!?」


 一際大きな、破裂するような音が響いたのを聞いてついに我慢出来なくなったのか、貴族らしき中年男性が上擦った声を上げるも、少女はゆっくりと首を横に振った。

 まだ、今ではない。

 星の巡りが、まだ合わない。力が、束ねられない。


 今こうしている間にも、一人、また一人兵士達の命が失われていく。

 それは痛い程にわかっているが、しかし、この儀式を失敗するわけにもいかない。

 荒れ狂いそうな感情を抑えながら、姫と呼ばれた少女は、神経を研ぎ澄ませてその時を待ち。


「……今!」


 彼女の合図とともに、神官達が、貴族達が魔力を魔方陣へと注ぎ込み始めた。

 まばゆい程の光を放つ魔方陣へと、少女が祈りを捧げ始める。

 祈ることは、ただ一つ。


「勇者様……どうか、この世界をお救いください……お願いです、勇者様!」


 強大な力を持つ魔族が人間の国へと侵攻を始めて数年で、人類は滅亡の危機に瀕していた。

 数の多いゴブリンやオークらと、巨人族などの強力な魔物を組み合わせた軍隊は強力で、特に巨大なゴーレム兵には全く手も足も出ず、こうして今、この国も侵攻を食い止めることが出来ないでいる。

 為す術のない彼女らが最後に縋ったのが、『勇者召喚』の儀式魔法。

 異世界に存在する強力無比な力を持つという勇者を召喚し、助けを請うその魔法の成功例は、ほとんどない。

 だが、ほんの僅かな可能性であっても、ゼロでないのであれば賭ける価値はある。

 例え、己の命を投げ出してでも。


 十数人の魔力を込められた魔方陣が異世界への扉を開き、その向こうへと呼びかける少女。

 この世とあの世の狭間に立って祈り続ける彼女の魂は、少しずつこの世から離れていく。

 離れていくに従って、因果の糸が鮮明に見えてくる。

 後一歩。あと少し。たぐり寄せるべき糸は、もうすぐそこ、だというのに。


「ひ、姫様、もう限界です!」

「まだよ、まだいける! ここで諦めるわけにはいきません!」


 一人、また一人と神官が、貴族が倒れていく。

 注ぎ込まれる魔力が尽きかけ、このままでは扉が閉じて彼女の魂はあの世とこの世の狭間で押しつぶされるだろう。

 だが、彼女は退かない。退けるわけがない。

 ここで彼女が退けば、最早民を救う術などないのだから。


「お願い、お願いよ! 助けて、勇者様!!」


 少女の切なる祈りが、響いて。


 ピィン……と、弦が弾かれた音がした、気がした。


「はい! あなたの願い、聞き届けました!」


 いや、気がしただけでは、なかった。

 確かに、返事の声が響いて。

 糸が、繋がった。感覚的に、それがわかった。


 途端、大きな力が魔方陣の向こうから光となって溢れ出し、儀式の間を塗りつぶす。


「きゃっ!?」


 力の奔流に耐えきれなかった姫が尻餅をつくも、神官も貴族も力を使い切ってしまったために駆け寄ることも出来ない。

 そんな彼らの目の前で、確かに何かがやってくる気配。


「皆さんの願い、祈り、確かに届きました! 勇者アクシティア、ここに推参です!」


 響いたのは、女性の声。溌剌として透明感がありながら、しっかりとした力強さも併せ持つその声に、確かに勇者なのだと何故か納得をしてしまう。

 成し遂げたのだ、と喜びと安堵の感情が湧き上がり……。


 その感情は、長続きしなかった。


「え? ちょっ、ええ!?」

「あ、あれ? ちょ、ちょっと、ここ狭すぎますよ!?」


 急に慌てた声になったのも仕方が無いところだろう。

 魔方陣の向こうから現れたのは、巨大な人影。

 それも、人間としてどころか、魔物としても大きすぎるもので。

 ついに5m以上の高さがある天井にまでその頭頂部が到達し、さらに上へ。

 見えたのは、白銀の金属鎧を全身に纏ったかのような姿。

 声から受けた印象通り女性的な体つきではあるものの、顔もその肌も、何もかもが金属光沢を帯びている。

 そんな存在が天井にぶつかったのだ、バラバラとガレキが落ちてきて……。


「ひ、姫様、逃げませんと!」

「む、無理よ、だって!」


 彼女自身も疲労困憊だが、それ以上に力を使い果たした神官や貴族達は動くことすら出来ない者達までいる。

 彼らを見捨てて一人で逃げるなど出来る彼女ではないのだ。


「す、すみません、壊しちゃいますね!? 『レゾナンス・ブレイク』!!!」


 それを見た巨大な存在、アクシティアと名乗った彼女……彼女と言っていいのかはわからないが、便宜上彼女としておく存在が、謝罪をしながら宣言するように叫ぶ。


 と。


 キィン! と耳をつんざくような甲高い音が一瞬だけして。

 崩壊を初めていた天井が、なくなった。

 いや、正確には、粉々になった。文字通り、粉末レベルに。

 もうもうと立ちこめるかつて天井だった砂埃は、やがて風に流されて、晴れて。


 その向こうには、見上げる程に巨大な人影が……申し訳なさそうに縮こまっていた。


「あ、あの、すみません、いきなり皆さんを危険にさらした上に、建物を壊しちゃって」

「い、いえ、それはその、こちらの落ち度でもございましたし……申し訳、ございません……?」


 と、どうにも微妙な空気となってしまったのだが。


 そこに、また耳をつんざくような轟音が響いた。


「あっ! その、助けて欲しいんですよね!? 謝罪はまた改めて後でゆっくりとさせていただきますので、どうしたらいいか教えてください!」

「あ、はいっ! あちらの方、我が王都の正門に魔物の群れが迫ってきており、それを撃退していただきたいのです!」

「わかりました!」

「え、ええ!?」


 お願いに対して、即答である。

 あまりのあっさり具合に少女は思わず声を上げてしまったのだが、当のアクシティア本人は全く気にしていないようだ。


「それでは早速……っと、その前に。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「は、はい? あの、リュミアナと申します、が……」

「リュミアナ……素敵なお名前ですね!

 では、リュミアナさん、あなたに勝利を捧げましょう!」

「え、ええ!?」


 騎士のような礼をしながらの台詞に、少女、リュミアナは面食らってしまう。

 いや、確かに10mを越えようかという巨大な体高ではあるものの、その姿は鎧姿の騎士に似てはいるのだが。

 こんな場面での思わぬキザな台詞に、何だか耳が赤くなっていくような感覚。


「それでは、行って参ります!」


 そんなリュミアナを置いて、アクシティアは駆け出した。

 その余りに巨大な身体に不似合いな程の軽やかな足取りで。

 何しろその巨体だ、数十歩も駆ければ外壁に到達する。


 そのままハードルを飛ぶ要領で人類の持つ城壁の中でも有数の高さを持つそれを飛び越え、一気に魔物の群れの前へと飛び出した。

 ……着地の際、哀れなゴブリンやオークが相当数犠牲になったようだが、今それを気にしている場合ではないだろう。


「数が、多すぎる! まずは……指向性制御、射界180度に設定……いきます、『レゾナンス・ウェーブ』!!」


 彼女がそう叫んだ瞬間、空気が震えて。彼女から半径100m圏内にいたゴブリンやオーク達が吹き飛んだ。

 立て続けに起こった理解を超える出来事に、魔物達も人間達も、声を出すことが出来ない。


「さあ、次は……お前だぁ!」


 城壁を破壊しようとしていたサイクロプスを、宣言とともに殴り飛ばす。

 身長3m越えの巨人も、倍以上の身長を持つアクシティアにかかれば軽々と飛んでしまい、地面に落ちたところでゴブリン達を押しつぶした。

 押しつぶされたゴブリン達の悲鳴に、やっと我に返ったゴブリンやオーク達は……立ち向かおうなど思うわけもなく、我先にと逃げだし始める。


 これはまずいと見たか、サイクロプスよりも更に巨大なゴーレム達が差し向けられるが、それでもまだ身長は5mほど。

 アクシティア相手には歯が立たず、蹴散らされるばかり。


「もういい、お前らは下がれ!」


 と、そこに大きな声が響き、その声を聞いた魔物達が一斉に下がり始めた。

 中にはそのままどこかへ逃走してしまった者達もいたが……出てきた存在は、それを気にする素振りもない。

 現れたのは、ウェアウルフ、人狼を模したかのような巨大な人型の存在。

 全身がアクシティアと同じく金属光沢を放っており、身長も同じくらい。


「なんだてめぇ、同類みたいだが見ねぇ顔だな」

「あなたに同類扱いされるのは甚だ遺憾ですが、見ない顔なのは当然でしょう。

 何しろたった今、こちらに召喚されたばかりですからね!」


 アクシティアの答えに、ウェアウルフの目が少しばかり見開かれる。

 どうやら、表情を出す機能はあまり豊富ではないようだ。


「召喚だと!? まさか、『勇者召喚』に成功したとでも言うのか!?」

「そのまさかですとも! 遠く世界の壁を越えて響いたリュミアナさんの切なる願いを聞き届け、この私、勇者アクシティアが参上いたしました!

 さあ、このまま退けばよし、そうでなければ倒させていただきます!」

「はっ、ほざけぇぇぇぇ!!」


 びしりと指を突きつけながらの勧告に、もちろんウェアウルフ従うわけがない。

 雄叫びを上げながら飛びかかり、爪を備えたその手を振り回す。

 だが、人間であれば簡単に引き裂かれるであろうその一撃をアクシティアはがっちりガード、続くウェアウルフの連続攻撃もあるいは受け、あるいは避け、と全て捌いていく。


「どうしたどうした! 守ってばっかか、この亀野郎!」

「失礼な、私は野郎ではありません!」

「ぐぉ!?」


 ウェアウルフの煽りに、妙なところで怒ったアクシティアの拳が顔面にクリーンヒット、たまらずウェアウルフは一旦距離をとった。

 そんな彼へと追撃をかけず、アクシティアはファイティングポーズを取り直して。

 

「アナライズ・コンプリート! 固有振動数捕捉、ハーモナイズスタート!」

「な、何言ってやがるお前は!」


 慌ててもう一度飛びかかったウェアウルフの攻撃を見切ったアクシティアは、それを大きく飛んでかわした。

 そして、腰だめに拳を固め。

 足下から猛烈な勢いで空気を噴射、ホバーの要領で地面を滑り、強烈な高周波音を立てながら一気にウェアウルフの前に飛び込む。


「ハイパー・ヴァイヴレーション! くらえ、『レゾナンス・ブレイク』!!」

「ぐあああああ!?」


 特定の振動数で震える拳をウェアウルフの胸に叩き込めば、重々しい音が響き……そこから崩壊が始まっていく。

 金属の身体が災いし、アクシティアが生み出した振動が彼の体中へと走ってその結合を断ち切っていって。


「成敗!」

 

 ついに致命的なダメージへと至ったウェアウルフの身体が爆散、それを背景にアクシティアは拳を突き出すポーズを決めた。


「この勝利を、リュミアナさんに捧げます!」


 高らかな宣言に、呆気に取られて見ていた人間達から少しずつ声が上がり、やがて大きな歓声が巻き起こっていく。

 総指揮官だったウェアウルフが倒されたことで魔物の軍勢の士気は崩壊し、一気に逃走を開始。

 追撃こそ出来なかったが、それを見た人間達は、勝ったのだとやっと理解したのだった。





「それはそうとすみませんでした、先程は建物を壊してしまって……」


 勝利の立役者というべき勇者アクシティア、を名乗る巨大な彼女が、城壁へと向かってぺこぺこと頭を下げていた。

 謝罪する先にいるのは、姫様と呼ばれていた少女、リュミアナである。


「いえ、こちらこそ……まさか召喚される勇者様が、あなたのように巨大な方だとは思いもせず……。

 魔導書にも、屋外で実行することを推奨されていましたが……こういうことだったのですね。

 今回使いました儀式の間が、最も正確で強力な魔方陣を描くことが出来る場だったものですから……」

「あ、あ~……なるほど、それは仕方ないですね!」


 リュミアナの説明に、アクシティアは納得した様子で頷く。

 彼女達人間がイメージする勇者であれば、同じような身長だと考えるのも当然のこと。

 また、今回の召喚がギリギリだったことを考えれば、出来る限り魔力を込められる環境を作ることは必要なことだった。

 となれば、こうなってしまったのも仕方の無いところだろうし、建物の持ち主であろう彼女が良いと言うのならば、良いのだろう。


「私のデータベースの中には、人間の勇者という存在も異世界には居るとありますから、そちらをお考えだったのでしょう。

 というか、私のような機械生命体の勇者の方が珍しいようですしね」

「……はい? あ、あの、アクシティア様の知識には、異世界のものまであるのですか?」

「ええ、何故か入っていますね! だからか、こうしてあなたともお話出来ていますし!」

「言われてみれば……異世界の方と、こうして言葉が通じているのは普通はありえませんものね……」

 

 同じ世界でも国が違えば言葉が違い、意思の疎通は難しい。

 それが、異世界から召喚した勇者とはこうして話せるのだから、不思議なものである。


「ところで、言われるままに追い払いましたが、あの連中は一体?」

「あ、そうですね、まずはその説明をしませんと」


 問われて、リュミアナが答えるに、この世界では今、魔王の侵略によって滅亡の危機に瀕している。

 尖兵たるゴブリンやオークの数の暴力も恐ろしいが、何よりも先程の巨大ウェアウルフのような存在が複数おり、それには魔法もほとんど通用せず、手も足も出なかったそうだ。


「あんな敵が、複数ですか……ちなみに、どんな存在かはおわかりになりませんか?」

「いえ、全くわかっておりません。魔王の腹心の部下ということで、魔族と呼んではおりますが……その、ゴーレムの一種かと思っておりました」

「なるほど、そう認識されるのも仕方ないですね。あれは……うーん、私と同じく機械生命体の一種のようにも見えましたが、これ以上はわかりません。

 それよりも重要なのは、複数いる、ということでしょう。どれくらいいるのかはわかりますか?」

「今のところわかっているのは、四天王と呼ばれる存在がいることくらいで、正確な数はわかりません。

 ただ、侵攻速度から考えるに、十数体ではないかと」


 どうも魔族と呼ばれる機械生命体達は、各方面軍に一体ずつしかいないらしい。

 そして侵攻の広がりを考えるに、方面軍は八から十程度。

 四天王と魔王を含めて十数体ではないかとリュミアナは予測していた。


「なるほど……では、あのような敵がまだまだいるということですね!」

「はい、そうなります。……申し訳ありません、あなたには多大な負担をおかけすることになってしまいますが、わたくし達も最早こうするしかなく……」

「いえ、私は大丈夫です! これもまた勇者の務めですから!」


 心から申し訳ないと頭を下げるリュミアナへと、笑顔を向けるアクシティア。

 人間の身体ほどある上に、金属で出来た人形のような顔だというのに。

 何故だかその笑顔は、リュミアナや城壁で彼女を見ていた人間をほっとさせるものがあった。






 一方その頃。


「ほう、『勇者召喚』に成功した国が出たと」

「左様でございます、魔王様。いかがいたしましょう」

「一体であれば力押しで潰せようが、それも芸が無い。

 何か策のある者はおるか?」


 黒い巨大なシルエットの魔王が問えば、その眼前に膝を衝く四体の影の内一つが顔を上げた。


「恐れながら申し上げます。『勇者召喚』により呼び出された勇者は、その召喚主との繋がりでもってこの世界に留められております。

 であれば、召喚主である王女リュミアナを暗殺してしまうのはいかがでしょう。

 かの勇者もその巨体が邪魔をして屋内には入れず、王女を守ることはできません。

 為す術無くこの世界から退去する勇者、併せて指導者と勇者を同時に、そして不意に失って右往左往する人間共が見られるのではないかと愚考いたします」

「ほう……コソコソとした暗殺など好みではないが、そういう趣向であれば悪くはない。

 よかろう、やってみるがよい」

「ははっ! 必ずや吉報をお持ちいたします!」


 魔王の言葉に人の形をした影が頭を下げ、そして退出する。

 

「では、これにて本日の会議は終了とする。

 皆の者、大儀であった」

「ははっ!」

 

 魔王が告げれば、残った影達も頭を下げ、そして、それぞれに姿を消していった。





 それから数日後。


「……暇だな~……」


 アクシティアは、王都の中心にある王城の中庭に作った木造シェルターの中、体育座りの格好でぽや~っと独り言を言っていた。

 何しろこの巨体だ、まともに収まる場所がない。

 城壁の修復のために石材となる岩を集めては来たが、それも一日足らずで終わり、後はすることがない。

 迂闊に歩き回ると人を踏んでしまいそうだから、怖くておちおち散歩も出来ない。

 他に仕事はと尋ねても、彼女ほどの巨体にお願い出来るような仕事がない。

 強いて言えば、彼女が寝泊まりする場所がない。


 ということで、近くの山から木を何本も引っこ抜いてきては組み合わせ、雨風を凌げる掘っ立て小屋未満を作ったのが昨日のこと。

 何しろ駐機場、ハンガーのようなものが存在しない世界だ、彼女が大人しくしているための場所も自分で作らないといけなかったわけで。

 それはそれで仕方ないと思いつつ、作り終わった今はそれはそれで、何とも手持ち無沙汰だ。


「暇だけど、敵が来てくれとか想うわけにもいかないしな~……」


 彼女が魔王軍を撃退してから、あちらに目立った動きはない。

 そのため彼女が出張るような事態も起こらず、こうして暇を持て余している訳で。

 だからといって、攻めてくることを願うのもどうだろうと思えば、彼女としても暇だと言いながらこうしているしかないわけだ。


 だが、そんな長閑な時間は、唐突に終わりを迎えた。


「……ん?」


 アクシティアのセンサーが、人ならざるものの存在を感知した。

 それも、よりによって、この王城の中に。


「えっ、ちょっ、侵入者!? だ、誰か、誰かぁ!」


 思わず声を上げるも、誰も反応する者はいない。

 先程まで彼女が工事というか作業をしていたのだ、人が遠ざかっていたのも仕方のないことだろう。

 さらに、何やらばたばたと騒がしく、なおのことアクシティアの声に反応することは望めない。


「ちょ、え、どうすれば……私、この身体じゃ中に入れないしっ」


 アクシティアの身体からすれば、侵入者を建物の上から叩き潰した方が早いほど。

 だが、当然そんなことをするわけにはいかないし、したくもない。

 であれば、どうすれば。


「えっと、確か、外に『魂』を飛ばす方法が……ああっ、でも、受け入れ先がっ」


 何か無いか、どうにか出来ないか、必死にアクシティアは付近をセンサーで走査する。


 


 そうやってアクシティアが右往左往していたころ。

 城内も城内で、右往左往していた。


「兵を集めろ、姫様を守れ!」


 大臣らしき貴族の叫びに応えて、兵士や騎士が姫様ことリュミアナの周囲を固め、方々から駆け寄ってくる。

 不意を打たれて統制は取れていないが士気自体は高く、適切な配置を取ってリュミアナの周囲を固めた。

 普通の暗殺であれば、それで十分に防げたところだろう。

 

 しかし。


「あはははははは!! お前等が何人いても一緒だよぉ!!」


 人と同じ大きさの、人の形をした金属人形が、固めている兵士達を一人、また一人と弾き飛ばしていく。

 人間に擬態していたメタルゴーレムが正体を顕し、リュミアナへと迫る。

 この場に居る兵士も騎士も、リュミアナの近くに配される面々だ、精強と言って良い力を持っているのだが……暗殺者である機械人形の前には及ばず、打ち倒されていく。


「ぐぅっ! ひ、姫様、お逃げくださいっ!」

「逃がすわけないだろぉ!?」


 身を挺してリュミアナを守ろうとした騎士を蹴倒しながら暗殺者がリュミアナへと迫り。

 一瞬、その動きが止まる。


「誰が逃げるものですか! 痴れ者め、下がりなさい!」


 リュミアナの鋭い視線が暗殺者を射貫き、その『魂』を一瞬縮こまらせる。

 止まったのは、一秒にも満たない時間。

 

 それで、十分だった。


「やらせるかぁぁぁぁぁ!!!」


 叫び声とともに繰り出される跳び蹴りが、暗殺者を吹き飛ばした。

 そして、リュミアナを守るように立ち塞がる人影。

 リュミアナよりも幾分高い身長、艶めいた長い黒髪。

 見たことのない姿なのに、その背中がもたらす安心感。

 何より。


「そ、その声……アクシティア様、ですか……?」

「はいっ、私です! 何とか間に合いましたね!」


 細身の身体にぶかぶかのローブをまとっただけの姿は、本来ならば貧相なはずなのに、堂々と経つ彼女を見ればワイルドな頼もしさを感じさせる。

 ……それと、ほんの少しばかりの色香も。

 

 そんなことを考えてしまったリュミアナは、ぶんぶんと頭を振って邪念を振り払った。


「皆さん、よくぞ頑張ってくださいました! 皆さんが稼ぎ出した一分一秒のおかげで、私は間に合いました!

 ですから、ここから先は私にお任せください!」


 アクシティアの口上に、倒れうずくまっていた兵士や騎士達の顔に誇りが戻る。

 無様に蹂躙されていた時間は、しかし無駄ではなかった。

 希望を繋ぐことが、出来たのだから。


「くっ、くそっ、貴様まさか、勇者か!」

「はいっ、その通りです! さあ、勇者アクシティア、参ります!!」


 怯んだ暗殺者へと挑みかかるアクシティア。

 そして、一分足らずの時間で彼女は暗殺者をぼこり、制圧した。



 

「あの、アクシティア様、そのお体は一体……?」

「あ、すみません、錬金術師殿の研究室にあったフレッシュゴーレムの素体をお借りいたしました!」


 暗殺者が片付いた後にリュミアナが問えば、アクシティアは経緯を語り始めた。

 元の身体では城内に駆けつけることなど出来なかった彼女は、身体となるものを探し、研究室でフレッシュゴーレム、生体素材ベースのゴーレムを発見、それに『魂』を乗り移らせたのだという。

 するとまだまだ不完全だったはずの素体は自在に動き、アクシティアの『魂』の力を得て普通のゴーレムを遙かに凌駕する身体能力を手にしたらしい。


「すぅばらすぅぃぃぃぃいいいい!! まさか、勇者様と合わさることによってこんな結果が出るとぅはっ!!」

「やかましいので退場させてください」

「はっ」


 勝手に使われたことを咎めるどころか喜びで興奮する錬金術師が騎士達によって運び出される。

 これで終わればめでたしめでたしだったのだが。


「た、大変です、魔族が単独で北方から向かってきています!」

「なんですって!?」


 一難去ってまた一難、よもやの急襲に一同は慌てるのだが。


「この魔力のパターン……さっきの暗殺者が、本来の身体に戻ってリベンジに来たみたいです」

「えっ、そんなことがわかるのですか? いえ、しかし、そうなると……」

「はいっ、私の出番ですね!」


 そう言うと、アクシティアはゴーレムの身体のまま走り出す。

 そして、中庭に待機していた本来の身体へと駆けよって。


「ライド・オーン!!」


 かけ声とともに飛び上がれば、そのまま巨体の胸あたりに吸い込まれていく。

 そして、彼女が中へと入った瞬間、本体の目が光り、動き出した。


「さあ、迎撃に……っと、ぉ!?」


 駆け出した瞬間、よろめきかけて。

 すぐにバランスを取り戻すと、アクシティアは駆け出した。

 先日よりもさらに軽やかに。


「こ、これ、何? 出力が上がってる……これなら!」


 手応えを感じながら走り、北からくる道化師のような格好の巨大魔族へと急接近。

 その突進速度に慌てて足を止めた道化師に配慮することなく、駆けつけ様に殴り飛ばす。


「ぎゃああ!?」

「すごい、力が溢れてくる……今なら、いけるっ!」


 殴り飛ばされた道化師がもんどりを打っている間に、アクシティアは仁王立ちになって。


「アームドフォーム、ライズアーップ!!!」


 かけ声と共にエネルギーを纏った光が迸り、地面を走る。

 大地がひび割れ、裂け、浮き上がり……形を成して。

 アクシティアの脚に、胴に、肩に、そして兜のごとく頭部に、新たな装甲を追加していく。


「ガイアニック・セイバー!!」


 一回りも二回りも大きな姿になったアクシティアが叫べば、背中から巨大な剣が射出され、宙で一回転、差し出したアクシティアの手へと下りてくる。

 しっかりとその剣を掴んだアクシティアは、一度力強くそれを振り抜いてから、右肩の上で八双の構えを取る。


「ハイパー・ヴァイブレーション!! ヴィヴロ・ブレード!!」


 勢いよく地面を滑るように突進しながら叫べば、刀身が高速振動を始め、白く輝き出す。

 やっと道化師が体勢を立て直した時には、眼前に迫っていて。


「『レゾナンス・スラァァッシュ』!!」


 道化師の左肩から右腰へと袈裟斬り、ついで身体を回転させながら横をすり抜け様、腰を横に両断。

 叩きつけた振動が不思議なハーモニーを奏でるなか、道化師を背に立ち。


「成敗!」


 ぶん、と剣を払いながら言えば、道化師が大爆発を起こした。

 その爆炎を背景にもう一度剣を振り、そして背中に仕舞う。

 ……仕舞えるとは思えないほどに長大な剣だったはずだが、何故か仕舞われた。


 そして最後に、もう一度決めのポーズ。

 その姿は、勇者の名にふさわしい凜々しさだった。





「つまりですね、こちらの世界で作られたフレッシュゴーレムを媒介することにより魔力親和性が向上したことで、今まで以上の力を発揮することが出来たのだと考えられます」

「な、なるほど……?」


 王城の謁見の間にて、ペラペラと錬金術師が語った末の結論に、リュミアナは若干疲れた顔で頷く。

 アクシティアも実感したパワーアップは、周囲で見ていても明らかだった。

 そのため現象の解析を錬金術師に指示、その結果が報告されたわけである。


「ということは、私はこの身体でいた方が強いってことですね?」


 疲れた顔をしているリュミアナの隣に立つ、長い黒髪の美少女が嬉しそうに笑う。

 もちろん、アクシティアである。

 

 大きな身体を持て余していた彼女は、手に入れたこの小さな身体が気に入ったようで、今もこうして憑依状態のままだ。

 そして、そのことにメリットがあると言われたのだから、喜ぶのも無理はないところだろう。


「その通りでございます! 私としても貴重なデータが取れますので、是非とも勇者様にはそのままお過ごしいただきたく」

「ありがとうございます、それならこのままで!」


 ということで、アクシティアは二つ目の身体を手に入れてご満悦である。


「まあ……アクシティア様がいいのなら、わたくしもいいのですけれど」


 疲れた顔のまま、呆れたような口調で。

 しかし、浮かれるアクシティアを見ながら、リュミアナは口元に小さな笑みを浮かべた。





 そして、人間サイズの身体を手に入れたアクシティアは、王都のあちこちに出かけるようになった。


「わぁ……これが市場! 色んなものがいっぱいです!」

「もう、はしゃぎすぎですよ、アクシティア様」


 初めて触れる市場の空気に浮かれるアクシティアと、それを窘めるリュミアナ。

 もちろん護衛の騎士も数人付いてきているが。

 ややもすれば護衛もリュミアナも引き離す勢いで駆け出しそうになるのを、アクシティアは何とか堪えながら市場巡りを堪能している。


 と、あちこちからリュミアナへと声がかけられていく。


「姫様、お元気そうで! あちらの方はお友達です?」

「あら、ごきげんよう。そうね、お友達、です」


 そんなやり取りを耳にして、アクシティアは『にへへ』と擬音が付きそうな緩い笑みを浮かべる。

 友達。

 そんなことは、初めて言ってもらえた。

 何しろ、彼女は。


 ……思い返しそうになって、すぐに考えるのを止める。

 それはきっと、今必要なことではないから。


「あ、お花! 知ってます! これは薔薇、これはガーベラ、これは百合ですね!」


 目に入った花の名前を挙げて、思考を切り替える。

 そしてすぐに、その鮮やかさに目を奪われた。

 色とりどりの花々は、いつまでも見ていられるくらいに美しくて。


「ねえ姫様! お花って素敵ですね!」


 城の人間に合わせてか、気がつけば彼女はリュミアナのことを『姫様』と呼ぶようになっていた。

 それが少しだけ寂しくて。

 そして、くるりと振り返ったアクシティアの笑顔に、リュミアナは思わずどきっとする。

 花のように純粋で、柔らかで。……どこか儚げで。

 思わず手を握って、繋ぎ止めてしまう程に。


「え、ひ、姫様?」

「あ、いいえ、なんでも、ありません。……そうですね、素敵、ですね」


 いきなり手を繋がれてびっくりするアクシティアに、しかし説明する言葉を持たず。

 誤魔化すように言えば、きゅ、と手を繋ぎなおす。


「それはそうと、急に走り出したらいけませんよ、アクシティア様。人の迷惑になりますから、ね?」

「あ、はい、ごめんなさい……」


 リュミアナが注意すれば、しゅんとした顔で反省するアクシティア。

 その姿に、思わずリュミアナも笑ってしまって。


「いえ、いいのです。折角なのですから、もう少し回りましょう?」

「あ、いいんですか!? 嬉しいです!」


 しょげていたのもどこへやら、すぐに元気を取り戻すアクシティア。

 それから屋台を回り、アクセサリーを見繕い、大道芸を見て。

 これでもかとばかりに市場を堪能していく。


「凄いですね姫様、ここには素敵がいっぱいです!」


 笑顔を弾けさせるアクシティアに、リュミアナは言えなかった。

 あなたの笑顔の方が素敵です、だなんて。

 それでもリュミアナは、そしてアクシティアは、満足そうだった。




 そんな穏やかな日々ばかり続けばよかったのだろうが、残念ながら魔王の侵攻は一時的に大人しくなっただけであり、戦いは続いていく。


 リュミアナ暗殺に失敗した魔王サイドは、各方面軍をリュミアナ達の国へと向かわせ続けるも、アクシティアがこれを撃退。

 これには、各方面軍の魔族達が水面下で競い合い、協力をしようとしていなかったのも幸いした。

 人間よりも遙かに強い力を持つ彼らは、基本的にプライドが高い。

 そのため、協力して戦うことを嫌う傾向がある。

 また、別々の方向に展開していた軍団を向かわせたのも災いした。

 到着タイミングがずれるため、それを良いことに抜け駆けをして挑んできたのだ。


 もしも魔族達が例えば同時に三体かかってくれば、いくらアクシティアが強くとも敵わなかったことだろう。

 だが彼らはそうせず、結果として各個撃破していくことになったわけだ。


「……いつまで失態を続けるつもりだ、貴様等」

「はっ、誠に申し訳なく……」


 失敗続きの四天王を呼び出した魔王は、不機嫌さを隠すことなく問い詰める。

 何しろ既に魔族が五体以上、全体の三分の一を越える数が失われたのだ、被害は深刻と言わざるを得ない。

 それも、たった一体の人型によって、なのだから。


「なぜそこで頭を使わぬ。協力して攻めることが出来ぬのであれば、強力な個体に行かせればと何故考えん」

「も、申し訳ございません、愚昧なる我らでは考えつくことも出来ず……」


 言われて見ればその通りだ、と羞恥と屈辱に声を震わせながら、四天王の一人、スクリーズが答える。

 搦め手のような策略は考えつくのに、正規戦力を上手く使うことが出来なかったのは知恵者を気取る彼からすれば汗顔の至りであろう。

 

「まあよい。ではそうだな、ノイズィオ、貴様が行ってこい」

「はっ、かしこまりました!」


 魔王が指定したのは、四天王の中で最も正面からの殴り合いが強い、重装備の騎士を思わせる姿をした魔族。

 一対一で勇者アクシティアを撃破するにはうってつけの選択であろうと、他の面々も納得顔である。

 ……一瞬だけ、スクリーズの顔が歪んだ気がしたが、それには誰も気付かなかった。




 そして、ノイズィオは魔王の期待通りの戦いを見せた。


「こ、この人、強い!」


 アームドフォームのアクシティア相手に互角以上の戦いを見せ、むしろ押し気味に戦いを進めていく。

 互いに刃を交え、質量のせいかパワーで勝るノイズィオの剣がアクシティアのそれを削り、既にその刀身はボロボロだ。


「ワハハハハ!! 貴様も中々やるな! だが、この俺相手には少しばかり足りなんだ!!」

「ま、まだ、負けていません!」


 勝ち誇るノイズィオに負けじと言い返すも、アクシティアの限界は近い。

 起死回生の手は無いかと必死に頭を巡らせ、隙がないかと探るも、ノイズィオに油断は見られない。

 こうなってしまえば、最早打つ手は。


「ハイパー・ヴァイブレーション!!」

「破れかぶれか! だが諦めぬその意気やよし! ブレード・バーン!!」


 アクシティアが刀身を高速振動させれば、ノイズィオも応じて、刀身に炎を纏わせる。 

 互いに高エネルギーを纏わせた剣を振りかぶり、打ち込み。

 二人の中間でぶつかって。

 

 ゴギン、と致命的な音がした。


「く、ううううっ!」


 アクシティアの剣、ガイアニック・セイバーの刀身が折れ、宙に飛び……ざくり、地面に突き刺さる。

 ここまで押され、武器も失って最早勝ち目などなくなった。

 だがそれでも、アクシティアの目は光を失っていない。


「それでも! それでもまだ私は、動けます!」

「その往生際の悪さ、嫌いではない! だからこそ、トドメを刺してやろう!」


 そう言いながら、ノイズィオが大きくその剣を振りかぶった瞬間だった。

 

 ドカン、と彼の背中で爆発が起こった。


「ぐぉあ!? だ、誰だ!」

 

 思わず背後を振り返るも、しかしその先には誰もいない。

 そもそも、何かが飛んできたときに聞こえるはずの風斬り音が聞こえなかった。


「……まさか!?」


 己の背中に、爆弾が仕掛けられていたとでもいうのか。

 それを問う時間など、なかった。


「うわあああああ!! ハーモナイズ・スタート、ハイパー・ヴァイブレーション!!」


 ノイズィオの意識が背後へと向いた瞬間、アクシティアは前に踏み出した。

 拳が高速振動を始め、魔力の光を纏い。

 ボロボロの身体を突き動かす何かに身を任せ、ノイズィオへと向かって突進する。


「くっ、だがっ、この程度で!!」


 ノイズィオもすぐさま反応して剣を振りかぶる。

 だが。

 それでも、僅かに遅かった。


「バーニング……」

「『レゾナンス・ブレイクゥゥゥゥ』!!!」


 炎を上げる刀身がアクシティアを捉える直前に、その拳がノイズィオの胸元を貫く。

 鋼の身体を震わせ、破壊の痕が広がっていき。

 

「『ブレイク・バースト』!!」


 打ち込んだエネルギーが一気に弾け、ノイズィオの身体が吹き飛ばされた。

 地面へと倒れ込むその巨体を見ながら、アクシティアは魔力の欠乏から息切れのように荒い呼吸を繰り返し。

 それが収まるのを待つことなく、ノイズィオへと向かって歩み寄る。


「ははっ、とんだ邪魔がはいっちまったが……まあ、楽しかったぜ?」

「すみません、私、私は……」

「いいってことよ。こんなもん仕掛けられたのは俺の油断、これも含めて俺の実力ってもんさ」


 身体の崩壊が始まっているというのに、ノイズィオの声は明朗で、表情は晴れ晴れとしており。

 そんな戦士を前に、アクシティアは沈んだ顔をするのは失礼だとしか思えなかった。


「……私は、アクシティアと言います。あなたのお名前は?」

「ノイズィオだ。……アクシティア、良い名前だ! 冥土の土産にふさわしい!」


 楽しげに笑って。

 直後、ノイズィオの身体は大爆発を起こした。


 間近の距離で爆風を受けたアクシティアは、揺らぐことなく受け止め。

 彼の身体が上げる炎を、いつまでも見ていた。





 この戦いは、両者に大きな影響を与えた。


「まさか奴が敗れるとはな……」

「ノイズィオは白兵戦において四天王最強……そんな奴を破るとは、勇者アクシティアとは一体……」

「……」


 動揺する残ったメンバーと、一人ほくそ笑むスクリーズ。

 言うまでもなく、ノイズィオの背中に爆弾を仕掛けたのは彼である。

 四天王筆頭という目障りな彼を排除し、勇者に大きなダメージを与えるという彼の目論見は成功した。

 後は残る二人を利用して……そんな皮算用を口に為ることなく二人の話を聞くと無しに聞くスクリーズ。

 それが、後々に彼自身の首を絞めるとは思いもせずに。




 そして、もう一つの影響。


「いやあ~~~不幸中の幸いとはこのこと!

 派手にばらまかれた破片のおかげで、勇者様の剣を構成する金属の解析が進みましてね!!」


 と、それはもう喜色満面で言う錬金術師。

 今までは削り取ることも出来なかったアクシティアのガイアニック・セイバーが、ノイズィオとの激闘で削られ、破片となったおかげで研究することが出来るようになったのだという。

 

「これで修理することはもちろん、強化だってやってやらぁ! とドワーフの職人達が盛り上がっていましてね!」

「きょ、強化なんて出来るんですか!?」


 錬金術師の説明を聞いていた人サイズのアクシティアが驚く。

 こう言っては何だが、この世界の技術はアクシティアの居た場所よりも遙かに劣る。

 だから、強化だとかが出来るとは夢にも思っていなかったのだが。


「ええ、まだ恐らくという程度でしかありませんが!

 オリハルコンにミスリル、アダマンタイトといった希少金属の合金ではありますが、ドワーフ達に言わせれば鍛造が甘いそうで!」

「ま、まってください、あんな大きな剣を鍛造するつもりですか?」


 思わず待ったを掛けるリュミアナだが、錬金術師の目はギラギラと輝くばかり。


「もちろんですとも! いえ、私ではなくドワーフ達がですが!

 いいですよねぇ、あのとてつもない目標に向かって邁進しようとする狂気一歩手前の目!

 私、一求道者として尊敬の念に堪えません!」

「それ、まったく褒めてるように聞こえないのですが……?」


 呆れるように言うリュミアナの声は、もう錬金術師には聞こえていないようだった。




 そして、実際にガイアニック・セイバーの修復と強化が始まった。

 特別に作られた細長い工房で熱せられた刀身が引き出され、それに向かって十数人のドワーフ達が一斉に大槌を振り下ろす。

 

 トンカントンカン。

 いや、もう少し鈍く大きい音だからドンガンドンガンだろうか。

 ともかく。誰が音頭を取っているわけでもないのに、揃ったリズミカルな槌の音が響く。

 その光景を、離れた安全な場所でアクシティアは見ていた。


「アクシティア様、どうかしましたか?」

「あ……姫様……」


 普段よりも随分と弱々しい様子で、アクシティアが振り返る。

 まるで捨てられて迷子になった犬のようだ、などと失礼なイメージを持ってしまって、リュミアナは慌てて小さく首を振りそんなイメージを振り払う。


 そんな、若干不審なリュミアナの様子に、アクシティアは気付くことが出来ない。


「いえ、その……皆さんが頑張っているのに、私一人、何も出来ないな、って……」


 そう言いながら顔を伏せるアクシティア。

 

 ノイズィオとの激戦で傷ついた彼女の本体は今、自動修復のためのスリープモードに入っている。

 もちろん襲撃があれば即座に対応出来るようにはしているが、今は出来るだけ身体を休めるのがアクシティアの仕事。

 本体が使えれば、例えばこの巨大な剣の鍛造などというとんでもないプロジェクトにおいても、力作業で貢献出来たであろうに。

 そんな悩みを吐露するアクシティアへと、リュミアナは思わずくすっと笑みを零してしまう。


「ふふ、す、すみません。あなたは、あんな戦いを経てなお、やはり勇者なのですね」

「い、いえ、私なんて、勇者の名にふさわしいかどうか……あんな、見苦しい勝ち方をして……」


 思い返すのは、ノイズィオとの戦い。

 一対一の戦いにおいて、彼女は負けた、と言っていいだろう。

 しかし彼女は、思わぬアクシデントによって出来た隙を突いて、ノイズィオを倒した。

 そのことが、トゲとなって彼女の心に刺さっている。


「申し訳ないのですが……わたくしは、あなたが勝ってくれてほっとしました。

 わたくし達が生き延びる明日が得られた。何より、あなたが帰ってきてくれる。そのことが、嬉しくて」

「あ……そ、そうですね、私が負けたら、皆さんが……」


 今更ながらにそのことを思いだし、アクシティアは背筋をぶるっと震わせる。

 彼女の命は、最早彼女一人のものではないのだ。


「あなたには、とても重い物を背負っていただいています。

 ですから、その背負っているものを利用していただけないでしょうか」

「背負っているものを、利用する……?」

「はい。あなたはご自身の誇りよりも、わたくし達を守ることを優先してくださいました。

 それだけの価値がわたくし達にある、と思っていただけることが出来れば、少しはお心が軽くなりませんか……?」


 問われて。

 アクシティアは、目を見開いた。

 リュミアナに、そして彼女が背負う国民達に価値があるかないかと問われれば、あると即答出来る。

 それだけの価値を、召喚されて今まで、ずっと味わってきていた。

 

「お、思います、思っています! 皆さんも、姫様も、すっごくすっごく、素敵です!」

「あ、あらあら……」


 思わずリュミアナの両手を握りながらアクシティアが力説すれば、その勢いにリュミアナも押され。

 ぽ、と頬を染める。


「あ、す、すみません、こんな不躾な!」

「い、いえ、大丈夫、大丈夫ですよ……?」


 むしろウェルカムです、なんてはしたないことは口にしない。

 彼女は、姫なのだから。


 そう自分に言い聞かせながらリュミアナが己を保っている間に、アクシティアはまた落ち込みかけていた。


「そんな素敵な皆さんを、この先もお守りすることが出来るかどうか……四天王の一人にあの体たらくでは……」


 言うまでもなく、彼女はノイズィオが四天王最強の男であることを知らない。

 むしろ最初に派遣されてきたのだから、最弱だったのではとすら思っている。

 あくまでも、彼が強敵だったことを認めた上で、だが。

 であれば、今の彼女ではとても守り切ることが出来ない、と思ってしまっても無理はない。


「……確かに、あの相手はとても強力でしたね……」

「ええ、ですから、私ももっと強くならないと……」


 二人してノイズィオの強さを思い出せば、口数も少なくなり。

 沈黙が、しばし訪れた、が。


「でしたら、もっと強くなるしかありませんね」

「え!? ……そ、それもそうですね!?」


 唐突なリュミアナの言葉に、アクシティアは驚き。

 しかし、すぐに納得もする。

 相手が強かったのならば、自分がもっと強くなればいい。

 単純ではあるが、代替の場合において通じる真理である。


「で、でもどうやって強くなれば……?」

「それなのですが……一度、試してみたいことが」

「試してみたいこと、ですか……?」


 怪訝な顔のアクシティアへと、リュミアナは悪戯っぽい笑みを見せた。





 そして、彼女が提案したアイディアとは。


「ひ、姫様、本当にやるんですか……?」

「はい、そんなに危険は感じませんし……そもそも、これがだめならどの道遠からず、ですもの」


 怖じ気づくアクシティアに背負われたリュミアナが、きっぱりと応じる。

 二人は今、修復のため休息状態に入り横たわっているアクシティアの本体の胸元に登ってきていた。

 

「きっと大丈夫です、あなただっていつも何事もなく戻ってきていますし」

「そ、そうですけどぉ……ああもう、やるしかないですね!」


 吹っ切るように言いながら、アクシティアがジャンプして飛び上がり。


「ライド・オーン!!」


 そう叫べば、アクシティア本体の胸元から光が放たれ、二人の身体を捉える。

 そのまま、引き寄せられて……二人は、アクシティア本体の中に吸い込まれていった。





「こ、これは……ここが、アクシティア様の中なのですね……」

「うう……なんだか無性に恥ずかしいです……」


 ふわふわとした空間の中、リュミアナがアクシティアの背中から降りる。

 どうやら、地面らしきものもあるらしい。


「……うん。やはり、この中でも魔力を感じることが出来ます。大地の力は特に……これは、恐らくアクシティア様の属性によるのでしょう」

「ふわっ!? な、なんだか、姫様が魔力を探ると、くすぐったい感じが……?」

「そ、それは……申し訳ないですけれど、今は我慢していただかないと。……これならば、大地の精霊に強力してもらうことも……」


 リュミアナが呟いた直後、急速にアクシティアへと魔力が集まってくる。

 それは、今までの何倍にも及ぶもので。


「わ、わわ!? ひ、姫様すとっぷ! 集まりすぎですよ!?」

「はっ、ご、ごめんなさい? 思った以上の集まり方だわ……ええと、このくらいで……」


 とリュミアナが調整すれば、やっとアクシティアも落ち着きを取り戻す。

 それでも、今までに感じたことのない勢いで魔力が集まってきているのだが。


 そして、その集まってきた魔力が、急激にアクシティアの身体を修復していく。


「わ、わぁ……これなら、今日中に修復が完了してしまいそうですね……?」

「それはよろしゅうございました。あちらの四天王を撃退したとは言え、その後を狙ってこないとは限りませんし」


 と、リュミアナが慎重な姿勢を見せる。

 そして、実際に魔族が襲来してきたのだが、パワーアップしたアクシティアは、修復完了前の不十分な状態であっても、一蹴してしまったのだった。





 こうして凄まじいパワーアップを遂げたアクシティアは、強化されたガイアニック・セイバーを手にして残る四天王を撃破。

 二人の四天王を囮にして漁夫の利を得ようとしたスクリーズは、五体バラバラどころでないほどの細切れにされた。


 そこまでの大打撃を魔王軍に与えたことで、ついにリュミアナは打って出ることを決断。

 ギリギリで耐えていた他の人間の国と連携しながら逆侵攻を開始し、ついに魔王との決戦にまで持ち込んだ。


「よもや異世界の勇者ごときに、我がここまで迫られるとはな!」


 追い詰められたはずの魔王は、それでもなお余裕を失っていなかった。

 それもそのはず、ここまで強化されたアクシティアですら押されるほどの力を持っていたのだから。


「こ、これが、魔王……それも、私の同系機!? ど、どうして魔王にだなんて!」

「決まっている、我が優れた存在だからだ。人間共など塵芥も同然、そんなつまらぬ存在のために身を投じて何になる!」


 アクシティアに比べて豊富に揃えている遠距離攻撃、中距離でも使える速射性の高い散弾兵器が着実にアクシティアを追い詰めていく。

 しかしそれでもアクシティアは挫けない。怯まない。膝を衝かない。

 彼女は彼女が信じるもののために、何度も立ち上がる。


「何かには、なります! まだ、私にはわからないけれど!

 それでも、皆さんの営みの先に大きな花が咲くと、断言出来ます!」

「馬鹿な! 人間ごときに、そんな未来があるわけがなかろう!」


 凄まじい勢いの一撃を受けてアームドフォームのアクシティアが後退するも、すぐに体勢を立て直し魔王へと向き直る。


「あります! 人間には、私達ではわからない可能性がある!

 だって、みんなみんな、素敵を持っているから!」

「何を戯れ言を! 素敵だなどと、そんなものが何になる!」

「素敵は、心に響きます! 心を震わせて、力になって、そして! 次の人に伝わります!

 素敵を受けた人が素敵になって、また次の人へと響かせていく! それが素敵の力で、人間の可能性なんです!」


 叫びながら震われた刃は、受けた魔王の剣を軋ませる。

 ただの衝撃だけではない、響くような揺れに、手元が怪しくなりかけて、握り直す。


「馬鹿馬鹿しい、何が響くだ、伝わるだ! 惰弱な存在に伝わったからといって、何になる!」

「わからないのならば、見せて差し上げましょう! 一つ一つの音が響き合い、束ねられて紡がれた力を!

 ハーモナイズ・スタート!!」


 アクシティアが告げれば、ガイアニック・セイバーの刀身が震え出す。

 その刀身が奏でる高周波は、最初は単純なもので。

 しかし、次第に複雑さを増していく。

 それは、同乗するリュミアナの響き。

 そして、彼女が導き集めていく人々の、世界の響き。

 

 複雑に絡まり合いながらどこか懐かしくもある響きが、アクシティアの元へと集まり、交響楽のごとき響きを奏で出す。


「オーケストラル・ヴァイヴレーション!! さあ、これが正真正銘、私の、私達の全身全霊です!」

「小賢しい! 羽虫共がいくら集まろうと、有象無象でしかないわぁぁぁぁ!!」


 世界の響きを具現化したかのような刀身を大きく掲げて構えるアクシティア。

 対する魔王はやや前傾姿勢で突き出すように剣を構え。

 

 両者が、同時に踏み込んだ。


「『ディスハーモナイズ・スラスト!!』」

「『レゾナンス・スラァァァッシュ』!!」


 互いに放った必殺の一撃。

 その勢いのまますれ違い、離れたところで動きを止めて。

 1秒の、沈黙。


 ガラン、と音を立ててアクシティアの肩から追加装甲が剥げ落ちて。


「ば、ばかな……」


 己の胸に刻まれた袈裟斬りの痕を手で押さえながら、魔王がその場に崩れ落ちる。


「ばかな、ばかな! 私が、この私が、羽虫共に敗れるなど!」

「例え羽虫の立てる音だとしても。響きは、波は、重ねれば増幅されて大きくなっていく。

 一つ一つは小さくても、重ねていけばあなたですら越えられる。これが、私達が奏でる未来です!」

「重ねる……そんなことが、貴様等矮小な羽虫にぃぃぃぐああああああ!?」


 断末魔の声と共に魔王が爆散。

 その炎を背景にアクシティアはガイアニック・セイバーを一振りし、大きく息を吐き出した。






 こうして、魔王は勇者アクシティアによって打ち倒された。

 後は彼女が居るべき場所に戻るだけである。


「アクシティア様、送還の準備が出来ました」


 アクシティアの身体も入るよう建て直された神殿の儀式の間、そう告げるリュミアナの顔は、笑顔を載せていた。

 決して本意からのものでないことは、誰よりも彼女自身がわかっているのだが。

 それでも、彼女は責任者としてそう告げなければならない。

 それが、彼女が背負ったものだから。


 だから。


「いえ、帰りませんよ?」


 その荷物を除けてやるのが、勇者の仕事だ。

 少女の姿をしたアクシティアがあっさりと言えば、リュミアナは途端に狼狽える。


「か、帰らない?? あの、しかしアクシティア様、あなたは……」

「はい、私はこの世界の存在ではありません。ですが、こうして皆さんと縁を重ねていく内に、すっかり身体もこちらに順応してしまいました。

 ……いいえ、そんなのは後付けですね」


 一度そこで言葉を句切ると、アクシティアはリュミアナへと向き直った。


「私は、この世界でたくさんの素敵なものを見てきました。感じてきました。

 だからもう、この世界を愛していると言っても過言ではありません」

「は、はい……」


 突然語り出したアクシティアの言葉に、その表情に、リュミアナは動けなくなる。

 まさか。まさか。

 そんな言葉が頭の中でグルグルしている間に、アクシティアの語りは続く。


「でも、一番素敵だと感じたのは、あなたです。姫様、いえ、リュミアナ、私は、あなたを私が知る限りで一番素敵だと思っています。

 できれば、あなたが持つ素敵の全てを感じさせて欲しいと思っています!」


 きっぱりと、まさに勇者と言うべき表情でそこまで言い切って。

 それから、へにゃ、と表情が崩れた。


「だめ、ですか……?」


 上目遣いで、そんなことを問われて。

 

「だめだなんて、そんなことは、ないです!

 わ、わたくしだって、あなたに知って欲しい、感じて欲しい!

 で、出来れば、あなたの素敵も……もっと、もっと!」


 顔を真っ赤にしたリュミアナがそう告げれば、次の瞬間にはアクシティアがその身体を抱きしめていた。


「嬉しい! ああっ、リュミアナは素敵です、抱きしめただけで、こんなにも心が躍り出すくらいに!」

「ま、まってくださいアクシティア様!? こ、こんな人前で!?」


 至極真っ当な反論をしながらリュミアナが周囲を見回せば……居並ぶ神官や大臣達は全員背を向けていて。


「さあ、まずは祝宴のやり直しですかね~祝勝じゃなくて別のお祝いになりそうですけども!」


 錬金術師が場違いな程に明るい声で言えば、ぞろぞろと全員が外へと出て行く。


「ま、まって、皆さん、ちょっとまってください!?」

「いやいや、姫様方はどうぞごゆっくり。祝宴の準備には二時間くらいかかるでしょうし」

「な、何を言ってますのあなたは~~!?」


 抱きしめられて動けないリュミアナを振り返ることなく、彼らは退出して。

 儀式の間に残るのは、リュミアナとアクシティア、二人の少女だけ。

 何も起こらないわけはなく……。


「ね、リュミアナ……私のこと、知りたいんですよね?」

「し、知りたいですけども、もっとこう、段階を踏みましてですね!?」


 そんな声が響いて。


 それから何が起こったかは二人しか知らないこと。


 ただその後、復興が進む王国を主導するリュミアナの傍には常にアクティシアがいたことだけは確かなことだった。

※ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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[良い点] 途中までノリノリで爆発四散の特撮ヒーローやってたから意外だなと思っていたけど結局そこに落ち着くんですね(笑)
[良い点] 勇者ロボ好きなので大変楽しめました! 炎の勇者のアンドロイド素体が女性型だったらこんな感じな展開だったかもしれないですねw(中の人は性別無かったはずだし)
[良い点] 最高です! カッコ良くて尊いです!
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