かるがも
寒くなると思い出す。
よろしくお願いします
清々しい初夏の頃だったと思う。
お日様眩しい昼過ぎの帰宅途中、住宅街で引越し中のかるがもの親子を見かけた。
おお〜っ!可愛い!
と、思って見たが、お母さん鴨の様子がちょっと違う。
ガァガァと焦ってキョロキョロしながら鳴いていて、その場を離れようとしない。
あれ?もしかして一人足りないんか?
と思って私もキョロキョロ探す。
するとどこからかピーピーと鳴く声がする。
ガァガァと母鴨の呼びかけに、ピーピーと答える子鴨。
子鴨の声を辿ると、すぐそこにあるフェンスの向こうの小さな空き地の側溝の中っぽい。
必死に鳴く子鴨が心配で離れられない親鴨。
んん〜…
仕方がない。
私はカルガモのために一肌脱ぐことにした。
…
私は持っていた荷物をフェンスの脇に置き、下ろしていた髪の毛をきゅっとお団子に結く。
周囲に人がいない事を確認し、フェンスに手を掛けひょいっと飛び越える。
……
嘘です。
私の妄想映像をお届けしました。
実際は…
私は持っていた荷物をフェンスの脇に置き、下ろしていた髪の毛をきゅっとお団子に結く。
きょどきょどと周りを確認。がしっとフェンスを掴み、フェンスの網目に爪先をぐいっと入れ込んでチマチマと登り、フェンスのてっぺんでグラグラしながら反対側にポテっと降りた。
が正解です。
……
声がする側溝を覗きます。
浅い側溝ではなく、その先の深めのところから声がします。
私は四角いコンクリートの蓋をフンヌと持ち上げ、ズズズと横にずらします。
いました。
小鴨がいる底まで80センチくらいあります。
私はもう一度周りをしっかり見回し、人気のない事を確認してから側溝に手を伸ばし、頭を突っ込みました。
急いで小鴨をそっと捕まえます。
小鴨って…
小鴨って…
ふわふわ〜!!
私の匂いがつくといけないかな?と思って、一瞬だけそのふわふわを堪能し、すぐに小鴨を放つ。
前のめりに走り出す小鴨と、前のめりで迎えに来る母鴨。
良かった良かった。
ここで助けても、この後カラスに食べられちゃうかもしれない。
けど、それはそれ。
カラスにだって赤ちゃんがいるかもしれないから、カラスを追い払うことはしないけど、穴に落ちたくらいは助けるよ。
どうか無事に育ってね。
そのふわふわに触らせてもらえたのが恩返しと思っていますので、ネギの事は気にしなくて大丈夫ですからね。
触らせてくれてありがとうね。
拙い文章をお読み下さりありがとうございました