表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

ユークリウッド、幕間1

「何回目の洗礼の儀式かしら?」

悩まし気に呟く。

儀式の回数を数えるのは10を超えたときからやめてしまった。

儀式で彼の手の甲には勇者である証、紋章が浮かぶのだ。

それは私にとってはとても不都合な事実で、消し去りたい出来事だった。

だけど、それは出来なかった。

なぜか、簡単だ。

勇者の紋章はその血筋の者に時を超えて浮かび上がる。

だけれど、それは要因の一つでしかない。

一番大切なのは勇者になろうとする意志だ。

心の在り様。それが一番大切な軸なのだ。

世界を救い、巨悪を倒し、民を救う。

子供染みた妄想。そう笑うものもいるだろう。

しかし、意思と資質が合わさったときにそれは現実となる。

だからこそ私は10を超える回数、勇者と相見えたのだ。

精神をコントロールしてしまえばいい?

ふむ、確かに、私の力を以てすれば十分に可能だった。

それは、心を操るということ。

「彼が彼じゃなくなってしまうじゃない」

誰ともなく呟く。

そう、私は彼が欲しいのだ。彼の身体だけではなく。彼の心だけではなく。彼の全てが欲しい。彼が自分の意思で私自身を好きになってほしいのだ。

「だから、私は彼の意思を尊重するわ」

勇者になりたいという意志も、その力を以て巨悪を倒すというのであればそれすらも。

そしてその先に待つのがユークリウッドであったとしても。

「この身に刻まれた血と運命、役割を魔王として配置されたとしても、彼に関われて、彼の目に留まるのなら喜んで」

そんな事を呟いた後、ふうっ、とため息を吐く。

「神様なんてものがいるのなら、残酷ね。なんで私が彼を好きになるなんて設定にしたんだろ。なんで、私が彼を好きならば、魔王なんて役割に配置したんだろう。普通に彼を好きな可愛い幼馴染でいいじゃない。彼の隣で暮らして、一緒にご飯食べて。そして、死んでいく。それで、いいじゃない」

自嘲気味に笑う。そして、続ける。

「ふふっ、全知全能に近い私が言うようなセリフじゃないわね」

やめた、やめた。こんなことばかり言っていたら鬱っぽくなってしまうわ。私が魔の血を受け継いだこと。そして最高の力を手に入れたこと。これは考えようによっては大きなアドバンテージだ。

ラスボスとしての役割を、彼にとって最大の障害として。

「魔王なんて勇者にとっては欠かすことのできない存在だもの。対となる存在じゃない」

プラス思考、プラス思考。今回の人生も頑張っていこー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ