日常
「…て、起きてあーくん」
ばっ、と布団を勢いよく布団をはねのける。ここは…。
「あーくん…?」
怪訝そうな顔でみてくるのは幼馴染のユークリウッドだ。
「凄い汗、大丈夫?」
手の甲で額を拭う。嫌な夢を見ていたような。そんな気がする。
すっ…。優しいユークリウッドはハンカチで俺の額を拭ってくれる。
「嫌な夢でも見た?」
「うん、内容は覚えていないけれど…」
「そう、なんだ」
ユークリウッドは少し眉をひそめる。彼女はふっと手を持ち上げる・
「よしよし、私が居るから大丈夫だよー」
猫のようにコロコロと笑いながら俺の頭を撫でてくる。
「やっ、やめろよ。もう、子供じゃあるまいし」
「恥ずかしがっちゃってー、かわいいなー」
俺は子供扱いされた気恥ずかしさからか、手をふりはらう。
「むー、なによー。少しくらいいいじゃない」
頬を膨らます彼女は少し子供っぽく、あまり年上にはみえなかった。
「こんなんじゃ、嫁に行くのはまださきかなぁ…」
ユークリウッドの頬は更に膨らむ。
「…ふん、そんなことないもん。それともあーくんがお嫁さんに貰ってくれる…?」
上目使い。何かを期待するような顔。
「ふん。そんなの知らねーよ」
「あー、ひどいー!!」
いつも通り、甘々な日常。さっき見た夢とは大違いだ。さっきのは悪い夢。なんであんな夢を見たのだろう?この日常の裏返しだろうか。我ながらあまのじゃくな性格だ、と思う。
「あーくん、今日は何の日か覚えてる?」
「ん?生誕祭だろ?」
俺たちの村には年に一度生誕祭とよばれる祭りがある。俺たちの村からは昔、世界を救った
勇者を輩出をしたらしく、その勇者が生まれた日を祝おうと始まったらしい。
「そうそう、今日のお祭り、楽しみだねー、一緒にお祭りまわろうよー」
能天気にユークリウッドは言う。俺はまた少し照れてしまう。
「…、しかたねーなぁ、いいよ、一緒に行ってやるよ」
顔が赤くなってる自覚があるため彼女の顔を見れずにそっぽを向く。
「わーい」
そんな俺の気持ちも知らずユークリウッドは能天気に喜んでいる。彼女のその好意のストレートさがむず痒い。
「パイに、アメに、ケーキ沢山たべよー」
「甘いものばっかじゃねーか」
「なによーじゃあ、あーくんはなにがたべたいの?」
「そうだな、やっぱ肉かな!」
「単純ねー、男の子は」
そんなたわいのない会話。
「それに洗礼の儀式、それが楽しみだな」
「洗礼の儀式…」
洗礼の儀式とは勇者がこの村に残したという守護の剣、それを手に持ち焚き木の前で掲げる。勇者がこの村を旅だった年の子、つまり16歳になるとその儀式が許される。俺も今年がその年だった。