第6話〜落ちこぼれのケイン〜
興味を持ってくれてありがとうございます。
最近は勉強せずに小説書いてます。
良かったら感想ください。
俺たちは入学試験の結果を見るために学校に向かった。
結果が張り出されている管板の周りには多くの人だかりができているそうだ。
ミケが言う。
「ケイン、何ビビってんの?大丈夫だから、そろそろ目を開けて歩いてよ。もうすぐ見られるから。」
はたから見たらやばい奴だろうから俺は目を開けて歩き始める。
こんな人生を左右しかねない状況になったのは去年の高校入試の時以来だ。あの時は高校に着いてから受験票を持ってないことに気が付き、家に戻った時にはインターネットで掲示されて、母から受かったことを聞かされたっけ。高校で合格発表の緊張感はこの先、味わえないと思ってたけれどまさか異世界で味わうとは。
俺が掲示を見る番だ。受験票がブルブルと震える。
「受験番号8313k…8313k…あった!」
俺とミケは飛び跳ねて喜んだ。
「受かっちゃったよ、俺。異世界で高校デビューかまそうかな。でもなんで俺の番号は赤文字で書かれてるの?他にも、ちらほらいるけれど。」
なぜか周りから視線を感じる。ミケは可哀そうな人を見る目を向けてきた。
「受かったから、ひとまずおめでとう…赤文字の意味についてなんだけど…簡単に言うと『落ちこぼれ』かな。説明すると、赤文字の人は入学試験の成績が合格者の中で下位10%の人たちなの。この人たちは学校で勉強しても意味がないんだから、少しでも国のために尽くせと、人員が必要な時に呼び出される言わば『何でも屋』みたいな存在なの。招集がかかれば授業中でも寝ている時でも集まらなきゃいけない。だから普通の貴族なら赤文字にならないし、なったとしてもお金積めば一般生徒に戻れる。だからより赤文字は差別されちゃうから気を付けてね。」
嘘だろ。『落ちこぼれ』ってなんだよ。しょっぱなから教育放棄すんなよ。公立学校じゃないのかよ。
突然背中から痛みがはしる。背中を触ると何かが刺さっている。振り返ると三人の青年がいた。
「お前ら、何すんだよ!」
俺はこいつらを睨みつける。ミケはすぐに回復魔法を俺にかける。痛みが徐々に引くがそれと同時に怒りがふつふつと増していく。
「お前、赤組だろ。俺たちの視界に入るな。消え失せろ…なんだその目は。」
そういうと仲間の二人が近づいてきた。こいつらは俺をリンチにする気だ。俺は両手を二人の靴に向けて唱えた。
『タイム・ストップ』
その瞬間、二人の靴が止まった。
だが二人は笑っている。
「なんだよ!そのへなちょこな魔法は。こんなのガキでもできるから。ここは魔法学校だぞ。」
そういうと二人は魔法を唱える。
『『ブレイク・スペル』』
光が靴を包み込んだ。そして歩み始めた。
俺は絶望した。どうしてこんな目に合わなくちゃいけないんだ。俺って弱いのか。どうしてどうして…何も考えられない、どうしたらいいんだ。頭が真っ白になって呼吸が荒くなってくる。息が苦しい。誰か助けて。
ミケが俺の手を握る。
「ケイン、私に任せて。困ったときは助け合うんだろ。だから君には味方がいるのを忘れるないでね。」
ミケはそういうと、目を閉じて唱える。
『タイム・ストップ』
学校全体が一瞬で光に包まれる。明らかに俺の出した魔法よりも広大な力だということが俺でも分かる。そして俺の背中に刺されていたものも無くなって傷が一つもない。辺りを見渡すと俺とミケ以外動いていない。
ミケが微笑みながら言う。
「行こう、ケイン。合格したから、入学手続きしなくちゃね。」
俺はこのミケの優しさに甘えていいのだろうか。この優しさが今は俺の心を傷つける。ミケがこんなに強いなら俺っていらなくないか…どうして女子に助けてもらってるんだ。何で俺はこんな異世界にいるんだ。何で俺なんだ。
俺はミケにやり場のない怒りや自分の情けなさをこぼす。
「俺ってさ、いつも肝心なところでダメなんだよね。どうしてミケはこんな俺に付き合えてるの。何で異世界なんかに呼び出したの。ミケがこんなに強ければ俺っていら…」
時間が止まって静かな空間に乾いた音が鳴り響く。
それと同時に頬がヒリヒリする。
ミケは今にも泣きだしそうな声で言う。
「『いらない』なんて言わせない!今は弱くたっていいじゃないか。悔しければ頑張って強くなればいい。君はこの世界に必要だし私にとっても大切だ。でも自分が弱く惨めだからって自分がいらないなんて言っちゃだめだ。『落ちこぼれ』って君の価値が分からない奴には言わせておけばいい。他人の言葉で君の価値は変わらない。立ち止まるな、ケイン。」
俺は泣き崩れた。もうプライドなんて関係ない。俺を必要としてくれる人がいる、俺はこの世界で頑張ると誓った。
ミケは俺に寄り添ってくれた。
泣き止んだ俺は共に入学手続きをする受付に向かった。そこでミケが魔法で時間を進めた。
受付では色々なことを教えてもらった。
赤組は支給される赤の制服を着なければいけないこと。
招集に遅れると懲罰房に入れられること。
今日から寮で生活すること。
ちなみに普段は二人で一つの部屋だが、俺は端数だったらしく二人部屋を一人で使えるそうだ。まあミケがいるから実質二人だけど。
後は一般常識だな。
諸々の手続きが終わったので、俺たちは寮に行くことになった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
暗い展開になっちゃいましたね。
次回もお楽しみに!