Count 31 魔の終極 アーリスター・クロゥリー
「ど、どうしよう、円東寺クン! どれだけ分身してどれだけ殴ればいいの? 見当つかないよ!」
大丈夫だ、巫子芝。こういうのは任せろ。オレの領分だ。
「え? 円東寺クンが殴るの? それとも蹴る? 想像つかないんだけど」
イヤイヤ、そういうんじゃなくて……こっちも取って置きがあるんだよ。巫子芝も一緒に唱えてくれ。いくぞ。
「「魔聖転身、超力召来!」」
それを合図にアンリエッタを紫水晶のような結界が包み込む。それが砕けたあとに【魔聖転身】を遂げたオレたちの姿が顕現する。
『我こそは全きにして一なる存在。魔の終極にしてアブラメリンの正統。……そうだな、アーリスター・クロゥリーとでも名乗ろうか』
アーリスターの姿はユビキタスをベースにしているが、肩章やモール、詰襟などに込められた魔法加護が段違いだ。そして手には魔法杖の幻夜鳥。普段は杖だがアーリスターの意思で自由に形を変えられる。
「こっちも宝石みたいでかっこいい! ……ところであぶらめりんって何?」
そう訊いてくる巫子芝。今度は彼女が位相空間に入っている。
あー、分かりやすく言うと大昔の偉い魔法使いかな?
「ふ~ん、ラーメン屋さんじゃないんだ?」
いやいやそれはさすがに無いだろ。アーリスターが持ってるのがチャルメラに見えるのか?
『アト987秒後ニ我ハ裁キノ黒イ光ト化ス。抵抗ハ無駄ダ。受ケ入レヨ。体内ヲ移動スル核ヲ捉エルコトハ不可能』
中の人がヒントをくれる。自爆するまでの16分弱の間に、体内のどこかにある核を破壊することがクリア条件ということだな。
黒竜冥王は掌に黒い雷球を作り出し、次々と打ち出してくる。闇属性の魔力弾か。アーリスターはそれを飛行しながら躱すが、外れた魔力弾は触れた建物や背景を魔子分解して還元してしまう。苦労したんだぜ。あんまり壊してほしくないんだが。巫子芝、アーリスターの回避を任せていいか? オレは別にやることがあるんでな。
「うん、いいけど?」
アーリスターは幻夜鳥をしまって右手に魔法陣、左手に魔方陣を展開する。
改めて2つの違いを説明しよう。あらかじめ術理を設定し、テンプレ化したものが魔法陣だ。発動が短い利点があるが、オートなので途中でキャンセルや追加変更はできない。
もう一方の魔方陣は術理を都度自分で組むため時間がかかるが、発動のタイミングや効果の調整、変更が途中でもできる。魔法陣よりも威力は劣るが、術者の力量が足りていればいくつでも重ね掛けができるし問題ない。
アーリスターも闇属性の魔力弾を魔法陣から撃ち出す。ぶつかり合った威力の相殺具合をもとに黒竜冥王の攻撃を反射分析し、最大能力値を見積もる。……これならいけそうだ。
今度は黒竜冥王の魔力弾を魔法陣の盾で吸収し、魔方陣を組み合わせた立方陣のエネルギーに利用する。環境破壊も低減できて一石二鳥だ。
しかしここからが至難。攻撃を吸収しあるいは躱しながら作った立方陣を黒竜冥王の周囲に展開させ配置していく。途中で壊されれば作り直しだ。くそ、言ってる側から! 手加減しろっての、知らない仲じゃないんだし。
そうして10分後。8つの立方陣の配置が完了した。意外と手間取ったな。時間が無いから一発勝負だ。
手元の魔方陣にコマンドを入力。カウントダウン。3・2・1!
立方陣から格子状に魔子のグリットが拡散して、8つの立方陣を頂点とする巨大な紫水晶の牢獄を作り出す。これで黒竜冥王の自爆攻撃、黒イ光も封じ込められるはずだ。
「えっ? 何コレ、すごくきれい! どうなってるの、円東寺クン!」
ちょっとしたもんだろ? 今度クリスマスに庭に飾るか。
アーリスターは再び幻夜鳥を取り出し、身の丈ぐらいの大鎌に変化させる。このまま黒竜冥王を切り刻んでもいいし、時間切れまで拘束してもいい。
派手な爆発を見るのもゲームなら感無量といったところだが、オレは中の人に呼びかける。
さて、これで詰みだが……ギブアップという選択肢は用意してないのか、月霊姫?




