Count 30 光の神子 アンリエッタ・グローリー
じゃあ、いくぜ。巫子芝、さっき言ったとおりにな。
「う、うん。じゃあいくよッ!……せ~の!」「「聖魔合一、剛力召来!」」
お互いのリングを合わせてそう唱えると、オレたちは白い光に包まれる。
そしてその光の中から現れるのは、オレたちが一つに重なった【聖魔合一】の姿だ。
『私は光の神子、アンリエッタ・グローリー。あまねく世界を照らすもの。悪しきに関わりなくば去るがよい。残るものには容赦はしない!』
顕現したアンリエッタの姿はアンリミテッドの姿がベースになっているものの、各所に加護の刺繍が施され、ウィンプルにも加護付きのエングレービングで飾られた鉢金がついている。もちろん能力もグレードアップしているな。
そして両手に天使の輪を思わせる一対の光る円月輪。投擲と打撃の武器だ。ただし聖職者の武器なので刃はついていない。輪の大きさが変えられるので、敵を引っかけたり拘束したりもできる。
名乗りの口上のあと、素に戻った巫子芝が「え、なにコレ! キラキラしてかっこいい!」と言ってクルクル回って見せる。
「あれ? でも円東寺クン、どこにいるの?」
お前のすぐ後ろだよ。正確には重なった位相空間にだがな。お気づきだろうか?
……ごめんな、怖がらせるつもりはなかったんだ。そんなに泣くなよ。
さて、海竜鬼との決着をつけよう。管理者になったことで、オレの異財は対偶の【遍在】に深化した。それは同時にアンリエッタの【ゆらぎ】の恩恵にも影響を与える。
「うん、今ならいくつでもいける気がするよ! 円東寺クンが一緒なんだもん! きゃっ、言っちゃった(小声)」
どこまでも真っ直ぐだな、巫子芝は。だからまぶしすぎるって! 光の神子になってキラキラ補正がまた上がってるし。
「悪いけどもう譲らないよ。押して押して押し破る!」
さらに速度を増したアンリエッタの攻撃に海竜鬼は防戦一方だ。【ゆらぎ】が作り出す残像分身が海竜鬼を翻弄する。それでも停止させるにはダメージがまだ足りない。
しかし次第に分身の数が増えていく。4人のアンリエッタが6人に、8人が10人に……。距離を取ってもアンリエッタの分身は消えない。つまり残像分身は実体を持った現身分身となる。その数は16人! 【ゆらぎ】の恩恵はもう一段階進化して【真影】に変わったのだ。
海竜鬼を取り囲んだ16人のアンリエッタが飛び交う燕のように舞い、止まらない波状攻撃を繰り出す。圧倒的な差を見せつけるように。
「16人でタコ殴り……確かに野蛮人のタテノリだわね」
見ているタツコさんが苦笑する。それでも手は抜かない。チート? 何それおいしいの?
そして海竜鬼がついに動きを止め、そのままばったりと後ろに倒れる。
「えっ、やったの? もう動かない……よね?」
分身を解いて一人に戻ったアンリエッタが思わず口に出す。しかしオレはこう呟いた。
ああ海竜鬼は、だけどな……。
「えっ、それどういうコト?」
○楽ちゃんも言ってたろ。「二度あることは三度あるアル!」って(注:言ってません)。まだ次がある。
『海竜鬼ノ活動停止ヲ確認。ふぇいず2ニヨル排除ヲ断念。コレヨリ最終ふぇいずニ移行』
合成音は二体から同時に聞こえた。見る間に天竜鬼が黒い炎に包まれていく。
「あわわ、こっちもだよ!」
海竜鬼も同じように黒い炎に包まれている。
そして空中に再び魔力雷が生じ、そこに何かが新たに召喚されているのが分かる。
2体が燃え尽きるように消えると、空中にそいつが出現した。
『我コソハ黒竜冥王。カリソメノ世界ヲ終ワラセ平穏ノ静寂ヲ持タラス存在。見エシ者ドモヨ、タダ粛々ト裁キヲ受ケ入レヨ』
全身を漆黒の鱗で覆われた巨大な竜。裏面最終ステージはまさに人外との戦いとなった。
「と、とりあえず何かお願いしたらいいのかなコレ? 『ギャルのパンティおくれーっ』みたいな」
それは絶対に違うと思うぞ、巫子芝。○山先生、ごめんなさい。




