Count 2.1 円東寺要クン(巫子芝安里)
始業式の体育館でもだけど、1年2組の教室ででも彼は目立っていた。鈍色の銀髪と暗紅色の目の彼を、皆が遠巻きに見て距離を置いていた。
そんな扱いに慣れているのか、彼は黙って自分の席に座っていた。あっ、飴を取り出して口に入れた。純露? い、意外と渋い趣味してるんだね。
「何なに~、安里はそんなに彼のことが気になるの?」
キジちゃんがそう言ってボクをからかう。やばい、あんまり見過ぎてたみたい。
「名前は円東寺要くんだって。何なら相性占っとく? 生年月日調べておこうか。あと髪とか爪とか……」
えっ? モンちー、それはダメだよ! 最初はもっと自重して? だけど円東寺要クン……うん、覚えた。
「自重って言えば安里もだよ。初日くらいはおとなしくしてなよ~」
な、何をおっしゃる雉田サン。失礼しちゃうわ。恵玄高校ではゼッタイ汚名返上するんだから! 「あ~はいはい」って、何で温くニヤニヤ笑うの!
今日は午前中で解散。ボクもキジちゃんとモンちーと帰り支度で昇降口に向かう。
でも下ろしたての水色のバッシュを手にしたとき、ボクの耳に離れたところにいる上級生の声が飛び込んできた。
「1年生のあいつ、さっそく磯島に目ぇつけられたみたいだぜ?」
「最初からアレじゃあそうなるだろうよ。私刑場にご招待ってわけか」
えっ、それってもしかして円東寺クンのこと? そう思ったらもう止まらなかった。キジちゃん、自転車借してちょうだい、円東寺クンが!
「えっ、今日はおとなしくしてるんじゃなかったの? これはこないだ出たばかりの『白兎馬』……はあ、しょうがないわね。全損は勘弁してよ?」
ボクは鍵を受け取って駐輪場に急ぐ。ハイヨー白兎馬!
「まったくもう……どうするモンちー?」
「場所知らないから走り回るだろうしね。待っててもしょうがないから帰ろうか?」
(離れた場所の男子)
「おい、あいつ【三なし】じゃねー? いきなり格付け対決かよ」
「あー絶対無理だって。終わったな、磯島も」