Another -1 星辰の魔王 03(ユビキタス)
ユビキタスの追放から10年後、帝国は突如現れた【魔王】に宣戦布告を受ける。
「駄目です、歯が立ちません!」
「それでも騎士か! やらせるな前に出……ぎゃああ!」
攻撃隊は魔物の爪や牙に鎧ごと腹を裂かれ、突進する巨躯にはね飛ばされ踏み潰される。
「耐えきれません! こう数が多くては」
「門を閉じろ! こうなれば籠城戦しか……ぐああ!」
守備隊にスライムが襲いかかり、髪や眼球を溶かし口や肛門から潜って内蔵を灼く。
「あ、あれは何だ!」
「こっちに向かっ……うわああ!」
石造りの物見の塔が飛来した【魔竜】の体当たりに突き崩される。空を飛ぶ翼あるものに魔法は届かず、逆に【魔竜】のブレスが魔法使いたちをまとめて焼き焦がす。
『弱いな。弱すぎる……こんな虫けらに吾輩が追放されたとはな……さあお前たち、存分に暴れろ! ひれ伏しても容赦するな! くははははっ!』
降り立った【魔竜】は姿を変えて竜人となる。それを従え【魔王】は王の首を取るために城に入った。
「お、お前はユビキタスなのか? 見違えたぞ、ははは……ぐぎゃっ!」
引きつった笑いを貼り付け、懐柔を試みるガリユス公爵の首を【魔王】が手刀でへし折る。
『はじめてお目に掛かる、帝国の王よ。【魔王】がその首貰いうける。素直に差し出すもよし、剣を手に最期を迎えるもよし』
玉座で震える老人に【魔王】ユビキタスが言い放つ。
「なんということを……お前に人の心は無いのか」
『今更何を。それを忘れさせたのはお前たちだろう』
辺境の劣悪な生活の中でも、ユビキタスは【魔方陣】の研究を続けた。むしろそれしか彼を支えるものは無かったともいえる。
そしてある日、ユビキタスは忘れられた【遺跡】を見つけ、古の叡智に触れた。それは星の力を汲み上げることのできる星(聖)魔法の知識だった。
年月を重ねユビキタスは星魔法の護符を【魔方陣】と融合させ新しい魔法を編み出すに至った。
さらに【遺跡】の深層部には古代に絶滅した竜の化石があった。ユビキタスはそれを使ってゴーレムの【魔竜】を作り出した。そしてユビキタスは【星辰の魔王】となったのだ……。
その日、王都は一日で陥落した。王は恭順を示したが【魔王】は許さなかった。
王族貴族を根絶やしにした【魔王】を平民は救世主と喜んだが、彼らはすぐにそれが勘違いだったことに気付く。【魔王】は気に入らなければ誰彼容赦なく殺したからだ。
3日後に『また来る』と言い残し【魔王】は国を去った。
生き残った者たちは胸をなで下ろしたが、数日後に別の王国が滅んだことを押し寄せた難民の口から聞かされることになる。




