Another -1 星辰の魔王 01(ユビキタス)
この日、帝国の一級魔法技官であったユビキタスは国家反逆罪で辺境に追放された。しかしそれは功績を妬む上司や平民を嫌う貴族連中に着せられた濡れ衣だったが、無実を訴える声が届くことはなかった。
「ご苦労だったな、長官」
「いえ、なかなか隙を見せぬもので。公爵様にもお手を煩わせてしまい申し訳ございません。」
「まあよいわ、下がれ」
恐縮する魔法技術庁長官に屋敷からの退出を命じて、ガリユス公爵は追従する貴族たちとの歓談に戻った。
「ようやくあの痴れ者を追い出せましたな」
「然り。平民の分際で王太子に取り入り、あまつさえ国を乗っ取ろうとするなど」
「自分の魔子不足を棚に上げ、さもしい小細工で貴族を脅かそうなど言語道断」
集まった貴族連中は美酒を手に栄華に酔う。口々に勝利を祝いながらも、その根底にあるのは自分たちが搾取してきた利権を守りたい、それだけのことだ。逆にいえばユビキタスの発明はそれほどの脅威だということだ。
魔法の原理を少し説明すると、魔法使いは自分の体内に貯蔵した魔子をエネルギーに、魔力回路である【魔法陣】を描くことで魔法を発動する。
そして貴族は魔子を貯めておく魔臓庫の容量を重要視した。つまり魔臓庫の強大さが貴族を特権階級たらしめている要因でもある。
これには貴族同士が長い領土争いを経て、一騎打ちでの力比べで雌雄を決することこそが戦場の華であるという作法を産んだせいでもあった。派手で豪快な立ち回りで家門の武威を示すことが誉れとされて来たのだ。
そのことがさらに容量信仰に拍車をかける結果となり、それがずっと今もつづいているというわけだ。
平民の中にも魔法を使えるものはいるが、得てして魔臓庫の容量は小さかった。それが蔑まれる一因なのだが、むしろ平民の魔法使いの中にこそ真に魔法を極める者が生まれつつあった。二の次とされ軽視された地水火風の元素との相性を研究し【魔法陣】の巧妙さ精緻さを競った。貴族の多重詠唱に対しては集団で魔法を使う合成魔法を作り出した。
年月を経て貴族と平民の差はゆっくりとだが確実に埋まっていたのである。




