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ひな祭り

「火筒でクイーンにアタックします」

「盾で防ぐわ」

「それは、扇では?」

「なんで指揮官が戦場で扇を持つのよ、指揮錫かしら?」

「クイーンは火筒が無効ですか?」

「安心なさい、盾はこれで壊れたことにしましょう」



 陸軍の執務室。若き女性司令が色鮮やかな人形を前にしている。


「お父様からプレゼントを貰ったわ、異国より取り寄せた物らしいの」

「おや、これはひな……」

「私ね、これが何か考えてみたのよ。これは私達の事じゃないかしら!?」

「……伺いましょう」


 女雛を手に取る。


「これが私」

「綺麗ですね」

「……あなたはそうね、これかしら」


 五人囃子から横笛を手にとった。


「こちらの剣を持った立派な武人ではなく?」

「私ね、あなたの笛の音が好きなの」

「ありがとうございます」

「さっそく、並べてみましょう」


「司令は上のほうですね」

「当然ね」

「私は一番下ですね」

「そうよ」

「それで、これは何をあらわしているのですか?」


「よく見なさい、武装しているでしょ?」

「たしかに」

「これは軍事教練用のコマね」

「囚われの司令を助けに向かう私、では無いのでしょうね」

「丘の上に要塞を構える私にあなたが挑む構図よ」

「真っ赤な丘ですね」

「壮絶な戦いだったわ」


 雛道具を指して。


「随分と食料品が多いですね」

「食べるもの無しに戦争は出来ないわ、兵站を想定した教練ね」


 二段目の女雛を指し示す。


「なぜ司令が最上段ではなく、他の女性が居るのです?」

「あなた、私をバカにしているの? 女官を私より前線に出すわけ無いでしょ」


 最後に箱に入れたままの男雛を指した。


「あの立派な将軍は使わないんですか?」

「まだ使わないわ」



「私の勝ちね!」

「その扇が火筒を防ぐ盾だとは思いませんでした」


 火筒ではなく小鼓だった。


 副官をあらわす五人囃子の横笛を取られてしまった。


「そういうわけで、これは捕虜にします」

「待遇の改善を要求します」

「まかせなさい、この私を追い詰めた武人を無下にはしないわ。その手腕を高く評価し、重用します」


 司令は男雛と取り替えると最前列に添える。


「ほら、こんなに立派になったわ、前線指揮の将軍よ悪くない待遇でしょう?」


 どうだろう?

 悪くはないかも知れない。

 しかし、副官は脇に置かれた横笛を手にする。


「私はこの笛持ちで十分ですよ」


 女雛の一つ下の段に置いた。

 女雛を護るように。

 ここが良い。


 しかし、それをひょいと司令が持ち上げてしまった。


「あなたってばもっと野心を持ったほうがいいわよ」


 そう言って、人形を起き直す

 副官がそこで良いのかと視線を送るも、司令はきょとんとした顔を返すだけだ。


「ん? なに?」

「いえ、なんでもございません」


 横笛は女雛に寄り添っていた。


つづけ

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☆『【完結】昼は黒騎士を従える魔王城、夜は黒騎士の後宮【短編】』
― 新着の感想 ―
[良い点] 早くてホワイトデーだと思っていたのに、ひな祭りが来るとは予想外でした。 おそらく雛人形について知っているのに軍事教練に付き合う副官優しいですね。 [気になる点] フルセットならいるはずの左…
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