模擬戦で技術を磨いてきます
自己練磨は大事です。
「模擬戦の承認をおねがいします」
陸軍の執務室。副官がいつものように書類を差し出した。
受け取ったのは美貌の司令官だ。
「へぇ、我らが第7軍の挑戦をうける、かわいそうな被害者はどこのどなたかしら?」
「財務局です」
司令はサインをしようとしていた手を止めた。
「…どうやって、財務局と7軍が戦うの?」
「財務局には百戦錬磨の古強者が在籍しております」
「ざ、財務局って第7軍に対抗できる千人の古強者がいるの!?怖いわ!」
「とんでもありません、一名です。ですから個人戦です」
「だれと?」
「わたしですが?」
司令はペンを持つ左手を空いていた右手で抑える。
「ちょっと待ってちょうだい。嫌な予感がするわ。これはそう、戦場で身につけるという軍人の直感に違いないわ」
司令は普段、書類に目も通さずサインをしている。
副官を信頼しており、必要であれば必ず助言をしてくれるからだ。
司令はその書類に目を落とした。
「素敵なホテルね?」
「はい、場所の下見も兼ねております」
「模擬戦するの?」
「やはり、経験を積むことでしか得られない知識というものは大事だと考えました。必ずや司令が満足するに足る技術を身につけてまいります」
副官が極上の笑顔で司令に微笑みかけた。
「お父様に相談す…ちょっと、計画書を返してちょうだい!持って帰ってお父様に相談するの!」
「失礼しました。どうやら書類に不備があったようです。一度差し戻しまして確認させていただきます」
「ねぇ」
「はい?」
「あなたが模擬戦に選んだ相手はどんな方なの?」
「尊敬に値する方です」
「そんな相手が居たとは知らなかったわ。名前を教えてちょうだい」
「ヴェッカー卿です」
つづけ
もちろん本当は口頭ですの講義ですよ?