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赤い霧

第一章 3 です。

自分の身体の異変との戦いです。

 わたしは小さくなって、自分の中にいた。

 わたしの身体は例の赤い霧のようなもので満ちている。

 薄っすらと身体を覆っていたものは、自分の中から中から洩れ出していたものらしい。

 この霧を集めて、どこかに封じればいい気がした。


(掃除機とかで吸えれば簡単なのに)


 そう考えたら、ぽんと掃除機が出てくる。

 サイクロンではなく紙パックのやつをイメージしたら、その通りのものが実体化した。


(なんか出てきたっ)


 わたしはびっくりする。

 だが、あるなら使えばいい。

 わたしは意外と柔軟だ。

 この際、出てきた理由なんてどうでもいい。


(吸いつくてやれっ)


 わたしは掃除機を構えて、赤い霧に向けた。

 スイッチを入れると、掃除機はぐんぐん赤い霧を吸いこんでいく。

 わたしは掃除機を見た。

 出てくる空気は赤くない。

 霧は順調に紙パックの中に溜まっているようだ。

 身体中の赤い霧を全部吸い尽し、わたしは掃除機のスイッチを切る。

 紙パックを慎重に取り外した。

 このままぽいっと外に捨てたいところだが、もちろんここにはダストシュートなんて便利なものはない。

 仕方ないので、壷をイメージしてみた。

 出てきた壷に紙パックをそのまま入れて、コルクで蓋をする。

 そこに開封厳禁と書いた紙をべたっと貼り付けた。

 想像すると何でも出てくるので便利だ。

 それはここが自分の意識世界だからかもしれない。

 イメージすれば実体化した。

 わたしは心配性なので、壷に入れただけでは心もとない。

 壷をビニールに入れて密閉し、さらに木箱をイメージした。

 木箱に壷を入れ、隙間に新聞紙のようなものを丸めて詰めて動かないように固定する。

 その上で、釘で木の板を打ちつけて木箱を閉じた。

 ここまですればさすがに赤い霧が漏れ出てくることはないだろう。

 体外に捨てる方法がわかるまで、厳重に保管することにした。


(はい。おしまい)


 わたしは心の中で呟く。

 目を開けた。

 息苦しさは消え、身体も熱くない。

 身体を覆っていた赤い霧は消えていた。

 封じ込めに成功したことをわたしは実感する。

 わたしはゆっくりと身を起した。

 そんなわたしを兄は眼を見開く。

 信じられないという顔をした。

 そっと手を伸ばし、わたしの額に触れる。


「熱が下がっている」


 唖然とした。


 にこっ。


 とりあえず、わたしは笑う。

 熱が下がった理由を聞かれると困るので、笑顔で誤魔化した。


「奇跡だ……」


 感激に震える兄に、何をおおげさなと心の中でツッコミを入れる。

 だが、それが大袈裟ではなかったことを続いた言葉でわたしは知った。


「呪いを受けたのに、助かるなんて……」


 わたしはびっくりする。


(はっ? 呪い?? 何、それ。怖い。どういうこと?)


 わたしは心の中でパニックを起した。


(呪われるようなひどいことを何かしたのだろうか?)


 不安になったが、何も落ち度が無くても呪われることもあるなと考え直す。

 世の中は不条理で不公平だ。

 前世でわりと長く生きたわたしはそのことを知っている。


「ユリウス兄さま、呪いって……?」


 わたしはきょとんとした顔を作った(つもり)で、兄を見た。

 高熱で忘れちゃった的な雰囲気を醸し出す。


「ああ、そうか。熱で記憶があいまいなんだね」


 兄はこちらの思惑通りに解釈してくれた。


(こんなにお人好しで大丈夫なのだろうか?)


 わたしは心配になる。

 簡単に他人に騙されてしまう気がした。

 わたしがしっかりしなきゃという妙な使命感が芽生える。

 だがそんなわたしの心配を他所に、兄はぺらぺら説明してくれた。


「ユリウスは誰かの呪いを受けて倒れたんだよ。今、父上や兄上たちが呪いを解ける魔術師を探しに出ている。そろそろ誰か一人くらいは戻ってくる頃だと思うよ」


 にこっと笑う兄はやはり美少年だ。

 笑顔がキラキラしている。


(可愛くて死ねる)


 そう思って、いやいや死ねないと訂正した。

 心の中で思ったことは本当になってしまう可能性がある。

 意思の力というものをわたしは感じていた。

 迂闊なことは考えないほうがいいに違いない。

 わたしは自分を戒めた。


「シャルル!! 大丈夫か? 魔術師を連れてきたぞっ」


 大声と共にドアが乱暴に開く。

 わたしだけでなく、兄もびっくりしていた。


「父上」


 振り返った兄がドアを開けた美丈夫に呼びかける。

 金髪に青い瞳の正統派王子様タイプのイケメンだ。

 30代くらいなのだろうが、若い青年に見える。

 兄の言葉を聞いて、それが自分の父親であることを思い出した。

 兄とはあまり似ていない。

 ちなみに兄の瞳はエメラルドのような緑色だ。

 だが、どちらも美形なのは間違いない。


(この国って顔面偏差値高い人しかいないのかな?)


 わたしはちょっと疑った。

 父も兄も美しすぎる。

 今のところ、目覚めてから会った人は全員美形だ。


(あっ、でも。ただ単に美男美女の家系なのかも)


 わたしが勝手に納得していると、父の後から老人がやってくる。

 父の言っていた魔術師だろう。

 駆け出した父に置いていかれたようだ。

 父が過保護で末っ子の自分を溺愛していることを思い出す。

 わたしは魔術師のおじいさんを見た。

 おじいさんはわりと普通におじいさんだ。

 美しいわけではない。

 美形が続いたので、ちょっとほっとした。

 無意識に、わたしは緊張していたらしい。


「父上。シャルルの熱が下がりました」


 兄は父に報告した。



自分の意識世界では想像力がものをいいます。

実体化も何もかも、思い通りです。

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