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MICCHAN  作者: 透明人間りんね。
2/2

ゲーム開始

 勢いよく現れた女、さっちゃんは片手をあげたまま止まった。

 「…修羅場?」

 「違うわよ!」

 ポツリと落とされた言葉にいち早く反応したのは、二つ結びの女だった。さっちゃんは、ずんずんと二つ結びの女に近づく。

 大股で近寄るのが怖かったのか、女が後退りする。さっちゃんは女の目の前にたつと、可愛いと言った。

 「可愛いりぼんをしているから、貴方の名前はリボンだね!」

 そう宣言すると、ウサギのキグルミの方を向く。男は飄々とした態度で、毅然と立っていた。

 「君はウサギね。」

 次はメガネの男の方を向く。

 「君はメガネだ。」

 メガネはうん、と一つ頷いた。リボンが口を開けてその光景を見ていた。

 「あんたは絶対無視するかなんかしそうなのに。」

 「いや、リボンちゃんほどじゃないよ。ただネーミングセンスないなーとは思ったけど。」

 メガネは頬を掻きながら、さっちゃんと向き合った。

 「きっと君から言い始めたってことは、ばれたくないことがあるんだね?」

 目の奥が笑っていない。リボンの喉がひゅっと音をたてた。後ろの方でウサギがカタカタと揺れている。

 「さあ?」

 にんまりと、さっちゃんが笑った。そのはずである。ただし、目の中に感情がなく人形のような顔だった。

 「それは、私だけじゃないんじゃない?」

 言い切ると、そのまま体を反転させた。そして、突っ立っていた従業員の男を見据える。

 男は目を伏せたまま動かない。その後ろに待機するメイドも同様である。

 「よく飼い慣らされている…。」

 ぽそりとさっちゃんが言った。リボンはじっと男達を見つめている。じっと、じっと動かない男達を。

 「このままじゃ埒が明かないね。」

 メガネがそう言って男たちに一歩近づく。

 その時、ボーンボーンと時計がなった。針は六時を指し示している。

 音が部屋を横断していく。完全に部屋から出ていくと、男達が顔を上げた。一度に、決められたように。

 「ようこそいらっしゃいました。ここは森の館。ある人の全てが詰まっている夢の館でございます。」

 「招待状を送らせていただきました四名には、ある共通点がございます。それはここを出る鍵となります。」

 「しかし、わかっただけでは終わりません。そこからある答えを探して頂きたい。それが、ここの家主の依頼です。」

 「それまでは決してここから出ることは叶いません。もし出てしまったなのなら、制裁が下されます。その事を努々忘れませんよう。」

 「それでは家主からの挨拶です。」

 そう次々と掛け合いのように話した。まるで演劇の台詞のようだ。いきなり始まったそれを、四人はただただ見るしかなかった。

 男と女達は深々お辞儀をした。そこからきっかり二十秒後。部屋の一番大きな扉が、音をたてながら開いた。

 「ようこそ、お客人。」

 杖をついた初老の男が、微笑んだ。

 黒いステッキに茜色のスカーフを胸ポケットに収め、紺のスーツを身に纏う。すらりとした手足はまるで棒のようである。どこか疲れたような雰囲気を醸し出す、そんな男であった。

 「いやはや、呼び出してしまい申し訳ない。」

 喋る度に、綺麗に切り揃えられている口元の髭が動く。

 「私がお客人を呼んだ理由は、先程説明した通りだよ。」

 リボンが口を開き、すぐに閉じた。反論しようとしたのかもしれない。ウサギも手に持っていたスケッチブックに何か書こうとして、ペンを置いた。

 「うん、その方が懸命だ。」

 家主はにこりと笑った。

 「私の名前はタガミ。そこの男はヤシロ。そこの女はアカギとワタナベ。」

 名前を呼ばれた順にお辞儀をしていった。黒髪の方がアカギで、茶髪の方がワタナベらしい。

 「さて、それでは始めようか。」

 「一体何を?」

 メガネはわからないと言いたげに、眉を潜めた。

 「なに、ゲームだよ。君達が解けるまで帰れない。簡単なゲームさ。」

 そう言ってタガミは大きく手を広げた。ステッキが、重力に従ってだるんと先が下がる。

 「ゲーム開始!」

 また外で、雷が落ちた。

久しぶりの投稿です。がんばります。

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