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「昆虫戦士コンチュウジャー」

作者: モラル

地球の平和を守る正義のヒーロー...の中に、謎の中年男性が!?


2016年6月に上演し、大好評を博した舞台「昆虫戦士コンチュウジャー」。

2017年5月の再演を経て、8月には待望の続編を上演予定!

MMJプロデュース

「昆虫戦士コンチュウジャー」

脚本・モラル(犬と串)


○登場人物

<地球連合軍>

時羽奏ときわそう    

万里ばんりチョウジ   

エッフェル・トーマス    

多安島たあじまハルオ  

桜田〝ファミリア〟明日香

ガロン長官         


<爬虫類帝国>

スネーク将軍

カメレオン少佐

タートル軍曹

トカゲ参謀

ヤモリ男爵


<過去の人物>

過去の時羽奏 

安土あづちジョー     


<その他の人物>

大五郎            

かれん            

金山力かねやまちから   

コモ美           



客入れ状態。

開演キュー。

舞台上に、お姉さんがマイクを持って入場。


お姉さん  (客席に)皆さん、こんにちはーっ(ソワレは「こんばんはーっ」)!


  お姉さん、客席のリアクションを見る。


お姉さん  (その場で多少変えつつ)あれあれあれー。ちょっと、元気がないですねー。皆さん、こんにちはーっ!


  お姉さん、客席のリアクションを見る。


お姉さん  はい、ありがとうございまーす!本日はMMJプロデュース「昆虫戦士コンチュウジャー」にご来場いただきまして、まことにありがとうございます。開演に先立ちまして、いくつか、ご観劇にあたっての注意事項をお伝えしたいと思います。大事なことですので、よーく聞いてくださいね。


  恐怖の音楽が流れる。


お姉さん  えっ?えっ?


  見るからに悪そうな五人組が入場。


五人    ヘッヘッヘッヘッ…。

お姉さん  あ、あなた達、誰!

A     俺達は、「観劇戦士・マナーワルインジャー」!

お姉さん  観劇戦士…マナーワルインジャー?

B     そうだ。「観劇戦士・マナーワルインジャー」だ。

お姉さん  な、何て語呂の悪さ。

C     (客席に)今日のお客さんは、べっぴんさんが多いねえ。べっぴんさん、べっぴんさん。ひとつ飛ばして…リヴァイアサン!


  五人、海の怪物になって暴れ出す。


お姉さん  あなた達、何しに来たの。

D     ああん?お客さんに、間違った観劇のマナーを伝えに来たんだよ。

お姉さん  ちょっと、やめなさい。

E     うるせえ、どいてろ!

お姉さん  キャアッ!

A     一つ。上演中、携帯電話は使いたい放題だ。メールは勿論、電話したっていいんだぜ。

B     二つ。上演中のおしゃべりは自由だ。皆、思う存分しゃべってくれ。

C     三つ。写真撮影は大歓迎。フラッシュを焚いてくれたら、なお嬉しいぞ。

D     四つ。好きな時に、好きなものを食ってよし。匂いなんて気にするな。

E     五つ。この劇場の、上の階は図書館だ。帰りに一人十冊、本を勝手に持って帰ること。

お姉さん  い、いけない。このままでは、お客さんに間違った観劇マナーが伝わってしまう。助けて、コンチュウジャー!


  しかし、何の反応もない。


お姉さん  駄目だ。私一人の声じゃ届かない。(客席に)皆さん、助けてください。私が「せーの」と言ったら、大きな声で「コンチュウジャー」と叫んでください。皆さんの力が必要なんです。いきますよ、せーの!


  お客さんの声。


お姉さん  …なめてんのか!「初演の方が盛り上がった」って言われるぞ!もっと、大きな声で!いきますよ、せーの!


  お客さんの声。


お姉さん  惜しい、あとちょっと!最後にもう一回、出せる限りの声を出しましょう!いきますよ、せーの!


  お客さんの声。

  音楽。

かっこいい感じで、コンチュウジャー五人のシルエットが浮かび上がる。


A     やべえ、昆虫戦士コンチュウジャーだ。

B     くそ、ずらかるぞ!


  悪い五人組、退場。


お姉さん  コンチュウジャー、来てくれたのね。


  コンチュウジャーの声が、スピーカーから響き渡る。


チョウジ  ああ。ご観劇の際の注意事項は、俺達にまかせろ!

お姉さん  ありがとう、コンチュウジャー。後は、よろしくお願いしまーす!


  お姉さん、退場。


チョウジ  一つ。携帯電話は、電源からお切りください。

トーマス  二つ。上演中の私語はお控えください。

ハルオ   三つ。写真や動画の撮影は禁止です。

明日香   四つ。劇場内での飲食はご遠慮ください。

奏     五つ。図書館は、正しく利用しよう!

チョウジ  それでは、いよいよ開演いたします。どうぞ最後まで、ごゆっくりお楽しみください。そうだろ、みんな!?


  M0。暗転。

  M0とクロスして、サイレンの音。続いて、あちこちから爆発音。

明転。舞台上にスネーク将軍。


スネーク  地球の人間達よ、ご機嫌うるわしゅう。今日からこの星は、我々が支配させて頂く。全軍、かかれえ!


  ナレーションが流れる。


ナレ    2XXX年。地球に突如、宇宙からの侵略者・爬虫類帝国が襲来した。人類は地球連合軍を結成して立ち向かうも、スネーク将軍率いる爬虫類帝国の圧倒的な力の前に、徐々に追い詰められていく。絶体絶命のピンチを迎えた地球連合軍は、最終作戦として、秘密裏に五人の若者を集めたのだった。


  別空間に明かり。地球連合軍基地。

舞台上にガロン長官、万里チョウジ、エッフェル・トーマス、多安島ハルオ、桜田〝ファミリア〟明日香、過去の時羽奏。一同、緊張の面持ち。


ガロン   諸君。まずは、一年間に渡る厳しい訓練、ご苦労。優秀な軍人でも三日で逃げ出すと言われる過酷なプログラムに、今日までよく耐えてくれた。

チョウジ  ガロン長官。早く俺達を、爬虫類帝国の怪人と闘わせてください。愛するこの地球は、俺たちが必ず守ってみせます。そうだろ、みんな!?


  頷く四人。


ガロン   まあ、待て。いくら諸君が優れた人間であっても、そのままの姿で敵と戦うことは出来ないだろう。この一年間の訓練は、これから実行される計画の前段階に過ぎない。「昆虫戦士コンチュウジャー計画」のな。

トーマス  昆虫戦士…

ハルオ   コンチュウジャー計画?


白衣を着た研究者、三角フラスコが五つ乗ったワゴンを押してくる。

  全員に渡して退場。


明日香   これは…。

ガロン   それは、最新の科学技術で昆虫より抽出した、ハイパーコンチュウエキスだ。これを飲んだ人間は、昆虫戦士コンチュウジャーに変身することが出来る。その身体能力は、実に生身の人間の100倍。

チョウジ  なるほど。このエキスを飲んで、怪人と闘うってわけか。

ガロン   ただし。ひとつだけ、この技術には問題がある。

ハルオ   何だよ、そりゃあ。

ガロン   昆虫。それは、さなぎの中で力を蓄え、成虫になる生き物。諸君も同じく、一度蛹にならなければ、昆虫戦士としての真のパワーを発揮することは出来ないのだ。

チョウジ  ちょ、ちょっと待ってください。それじゃあ、その間地球はどうなってしまうんですか。

ガロン   安心したまえ。蛹とは言っても、ほんのわずかの期間の話だ。その間、何があっても我々地球連合軍が、爬虫類帝国を食い止める。

ジョー   そういうことだ。


  安土ジョー、入場。ライフルを背負っている。


チョウジ  ジョー…。

ガロン   そう。諸君と共に一年の訓練を受けた、安土ジョー。彼には昆虫戦士としてではなく、生身の兵士として最前線で戦ってもらう。

ジョー   下らない心配してねえで、安心してそいつを飲めよ、後のことは、俺たちに任せろ。

チョウジ  …わかりました。ガロン長官、地球を頼みます。ジョー、死ぬんじゃねえぞ。

ジョー   バーカ。誰に言ってんだよ。


  チョウジとジョー、固い握手を交わす。


ガロン   万里チョウジ。君の昆虫モデルはカブトムシだ。コンチュウジャーの中でも、最強のパワーを誇る。

チョウジ  はい。

ガロン   エッフェル・トーマス。昆虫モデルはアゲハチョウ。自由自在に風を操る、華麗な戦士だ。

トーマス  フ…了解。

ガロン   多安島ハルオ。昆虫モデルはハチ。強力な毒入りの弾丸を放つガンマンだ。

ハルオ   任せとけ!

ガロン   桜田〝ファミリア〟明日香。昆虫モデルはテントウムシ。どんな場所も、まばゆい光で照らすことが出来る。

明日香   分かりました。

ガロン   時羽奏。昆虫モデルはトンボ。そのスピードは、コンチュウジャーでも一番だ。

過去奏   え、あ、はい。

ガロン   さよならは言わない。また会うと信じているからな。さあ、ハイパーコンチュウラボで、そのエキスを飲むのだ。

五人    はい!


  五人、退場していく。


ジョー   いいんですか、ガロン長官。あんな、口からでまかせを。

ガロン   何?

ジョー   知ってるんですよ、俺は。コンチュウジャー計画の、極秘資料を見てしまいましたからね。

ガロン   …そうか。

ジョー   ハイパーコンチュウエキスは、過去に例のない最新技術。一体どのくらいの期間蛹になるのかは、誰も予測できない。違いますか。

ガロン   ありのままを話せば、あいつらは今すぐ戦うと言って聞かないだろう。なんとしてでも、あの五人にはコンチュウジャーになってもらわねば困るのだ。

ジョー   …はい。

ガロン   安土ジョー。お前としても、コンチュウジャーに選ばれず、納得出来ない部分もあるだろう。しかし…

ジョー   やめてください。俺だって認めてますよ。あの、四人のことは。

ガロン   四人、か。…やはり、時羽奏のことは認められないか。

ジョー   どうでもいいじゃないですか、そんな話は。コンチュウジャーに選ばれなかった以上、俺のやることは一つ。この体一つで、爬虫類帝国の奴らを叩き潰すのみです。

ガロン   ああ。地球のために、命を懸けて戦おう。昆虫戦士、コンチュウジャーが目覚める、その日まで。


  不思議な効果音(時の流れ?)。

  暗転。

  ナレーションが流れる。


ナレ    こうして、万里チョウジたち五人の若者は、ハイパーコンチュウエキスを飲み、蛹となった。完全なる昆虫戦士となるその日まで、彼らは眠り続けた。そして、いくつもの昼と夜を超え、無限とも思える時間が過ぎた時。ついに彼らに、目覚めの時がやって来たのだ。


  音楽。

  明転。

  かっこいい感じで入場してくるコンチュウジャーたち。

  しかし時羽奏だけ、おじさんに変わっている。が、特に誰もそのことに触れない。

  音楽アウト。


チョウジ  これが、完全なる昆虫戦士コンチュウジャーの姿。

トーマス  体中から、力が漲ってくる。

ハルオ   すげえ。これなら、爬虫類帝国のヤツにも負けねえ。

明日香   全員で、力を合わせて闘いましょう。

チョウジ  …カブトブロー!


  チョウジ、大きくパンチを出す。ドン、というすごい空気が震える音。


一同    おおお…。

トーマス  アゲハウインド!


  トーマス、舞台上に風を起こす。


一同    おおお…。

ハルオ   ビーリボルバー!


  ハルオ、腰から拳銃を抜き、ドンドン、と撃つ。


一同    おおお…。

明日香   テントウフラッシュ!


  明日香、舞台上をビカビカと光らせる。


一同    おおお…。

奏     ヤゴチョップ!


  奏、ごく普通のチョップ。

  一同、戸惑う。


チョウジ  …えっと、あの。

奏     ヤゴチョップ!

トーマス  ヤゴチョップじゃなくて。

明日香   誰…ですか?

奏     皆、久しぶり。やっと、全員揃ったな。

ハルオ   だから、誰なんだよ。

奏     いや、俺だよ、俺。トンボの昆虫戦士、時羽奏。

チョウジ  は…

四人    はあ!?


  四人、顔を見合わせる。


チョウジ  (手を挙げて)万里チョウジ。

トーマス  (手を挙げて)エッフェル・トーマス。

ハルオ   (手を挙げて)多安島ハルオ。

明日香   (手を挙げて)桜田〝ファミリア〟明日香。

奏     (手を挙げて)時羽奏。

四人    いやいやいやいや。

ハルオ   おかしいだろ。

トーマス  時羽奏って。

明日香   ただのおじさんじゃん。

奏     あー。俺、蛹になれなかったんだよね。

チョウジ  はい?

奏     だからさ。俺、トンボのエキス飲んだじゃん。で、ヤゴってのが、トンボの幼虫なんだけどさ。ちょっと、図で説明しようか。


  ヤゴがトンボになるまでを説明したパネルが出て来る。


奏     これが、ヤゴがトンボになるまでの図ね。で、で、俺も全然知らなかったんだけど、トンボって、不完全変態で蛹にならないんだな。分かる?これ(ヤゴ)が、このままこう(トンボ)。だから、皆が蛹になっている間、普通に起きて、歳とって。

明日香   じゃあ、もしかして…

奏     そうです。アタスが、ヤゴのおじさんです。

四人    ズコーッ!


  四人、ずっこける。パネル、退場。


トーマス  そんな、馬鹿な。

奏     いや、本当にそんな馬鹿なだよ。世界連合軍とか言って世界中のエリート集めて、なんで誰も、ヤゴが蛹にならないことに気付かないんだよ。

ハルオ   おい、チョウジ。本当に、奏なのか?

チョウジ  いや…正直、分からんとしか。

奏     まあ、そうなあ、分からんよなあ。何たって、三十年だもんなあ。

四人    三十年!?

奏     そうだよ。さすがに、もうちょっと早く成虫になると思ってたらさ。

明日香   私達、三十年も眠ってたの?

奏     だから、そう言ってるじゃん。いやー、長かった。

チョウジ  なんてことだ。

トーマス  じゃあ、その。闘いは、一体。

ハルオ   え?

トーマス  三十年が経った今、人類と爬虫類帝国の闘いはどうなっているんでしょうか。

ハルオ   ああ、そうだよ。まさか、俺たち以外の人類は…

奏     いや、生きてるよ、みんな。普通に。

明日香   本当?

奏     まあ、うん。

チョウジ  じゃあ、俺達人類は勝ったのか。

奏     あー、いや、そうとも言えないっていうか。

トーマス  どういうことですか。

奏     つまりはまだ、なーんか、闘いは続いている。

ハルオ   なーんかって、何だよ。

奏     いや、だからそれは…


  突如、ゴロゴロゴロ、という雷の音。

  スネーク将軍の声が響き渡る。


スネーク  フフフ…ついに蘇ったようだな。昆虫戦士コンチュウジャーの諸君。

ハルオ   こ、この声は。

チョウジ  爬虫類帝国総司令官…スネーク将軍!!


  不穏な音楽。

  スネーク将軍、入場。


チョウジ  出たな。

スネーク  三十年ぶりだなあ。

明日香   こっちの見た目は、全然変わってないけど。

スネーク  フッフッフッ、爬虫類帝国は、宇宙でも有数のアンチエイジング国なのだ。目覚めてそうそう悪いが、この場で全員死んでもらうとするか。

チョウジ  おもしれえ。俺達コンチュウジャーの力を見せてやる。そうだろ、みんな!?


  頷く三人。


奏     いや、待ってくれ。ここは、俺が闘う。

チョウジ  え?

奏     見ててくれよ。俺だって伊達に三十年間、戦い続けて来た訳じゃないってことを。

チョウジ  奏…。

スネーク  フン。…行くぞ!


  バトルのかっこいい音楽。

  奏とスネーク、雄たけびを上げて対峙する。

  しかし、パンチを打とうとした奏、悶絶する。


奏     あたた…。腰がイッた…。

四人    ズコーッ!

明日香   オッサンじゃん。

スネーク  フ、死ねえ!


  スネーク、キックを打とうする。しかし、やはり悶絶。


スネーク  あ…足つったあ!

四人    ズコーッ!

ハルオ   こっちもオッサンかよ。


  奏とスネーク、何とか立ち上がって、とんでもなくヌルい殺陣を繰り広げる。


明日香   遅っそ!

ハルオ   何なんだよコレ!

トーマス  なんと、美しくない…。

チョウジ  もういい。俺が一撃で決着をつけてやる。行くぞ、カブトブロー!


  チョウジ、技を繰り出そうとする。かっこいいエフェクト。

  しかし突如、美大生入場。


美大生   あーもう、いい加減にしてくれよ!


  音楽アウト。


四人    …え?

美大生   そこのアパートに住んでる美大生だけどさ、うるさくてデッサンが出来ないんだよ。

スネーク  フン、黙れ地球人。デッサンごときで、我々の闘いに口を出すな。

美大生   何がデッサンごときだよ。まったく…これだから、芸術を理解出来ない爬虫類の連中は…


  子連れ主婦、入場。


主婦    専業主婦の私としては、地球人がもうちょっと、歩み寄るべきだと思いますけど。

美大生   何だって。

主婦    地球人も、悪い人ばかりじゃないから。ゴボウ、あげる。


  主婦、買い物袋から長いゴボウを取り出して、スネークに渡す。


スネーク  あ、ど、どうも。

明日香   え、何。

トーマス  どういうことだ?


マンチカン、入場。


マン    マンチカンの立場から言うと、お互いさまって感じだニャー。

ハルオ   何か、また増えたぞ。


  美大生と主婦とマンチカン、議論し出す。


スネーク  ああ、もう、うるさい!…フン、コンチュウジャーども。どうやら命拾いしたようだな。いいか、次はないと思え。


  スネーク将軍、退場。

  美大生と主婦とマンチカンも、ガヤガヤ言いながら追いかけて退場。


明日香   何、これ。

奏     だから、言っただろ。なーんか、闘いは続いてる。

トーマス  いくら何でも、グダグダじゃないですか。

奏     こんなもんじゃないの?三十年もやってりゃさあ。それより、俺達のポーズを考えてみたんだけど。(ポーズをとって)「昆虫戦士、コーン、チュウジャー」!

四人    ださいー!


  主題歌。「YES! WE CAN コンチュウジャー」。

  音楽にのせてオープニング。

  転換。舞台、薄暗い明かり。

不穏な音楽。

円卓に、スネーク将軍、カメレオン少佐、タートル軍曹、ヤモリ男爵、トカゲ参謀。


スネーク  只今より、爬虫類帝国、最高幹部会を行う。…カメレオン少佐。

カメレオン カメレオーン!

スネーク  タートル軍曹。

タートル  タートル!

スネーク  ヤモリ男爵。

ヤモリ   ヤモーリー!

スネーク  トカゲ参謀。

トカゲ   トカーゲ!

スネーク  よし、全員揃っているな。既に知っての通り、昆虫戦士コンチュウジャーが目覚めた。…しかし、その前に話さなければならないことは、一体我々はいつまで最高幹部会を、こんな中華料理屋で行わなければならないかということだ!


  スネーク将軍、テーブルをドンと叩く。

  音楽アウト。

  舞台上に地明かり。中華料理屋である。ガヤガヤとうるさい。


スネーク  おい!人間ども。今、会議中なんだ。


  一瞬、シンと静まるが、再び客たち、ガヤガヤし出す。


スネーク  うるっさーーーい!!人間ども、今すぐ出ていくのだ。さもなくばこの牙で、一人残らず噛み殺してくれようぞ。


  シャ―ッ、という蛇が威嚇するSE。


客たち   ひーっ!


  客たち、退場。


スネーク  全く…天下の爬虫類帝国が何てザマだ。大体、最高幹部会も何も、お前ら四人しかもう残っていないだけじゃないか。

タートル  まあ、それを言ってしまえば元も子もないですが。

スネーク  憎きは、時羽奏。しかもそこに加えて、四人のコンチュウジャーまで蘇ったときたもんだ。

カメレオン スネーク将軍。あなたの右腕である、私に策があります。

スネーク  カメレオン少佐。是非聞かせてくれ給え。

カメレオン 今我々が学ぶべきは、ブルーボトルコーヒーの戦略ではないでしょうか。

スネーク  …ん?まあ、続けて。

カメレオン ブルーボトルコーヒーは、現地と全く変わらない味を日本に持ってきました。つまり、タスクをアウトソーシングすることへのサジェスチョン、あるいはアサインをペンディングしてシナジーを…

スネーク  うん、意識は高いよね意識は。しかしそれっぽい言葉使ってるだけで、中身がスカスカじゃないか。

タートル  では、私の作戦をお聞きください。

スネーク  頼むぞ、タートル軍曹。

タートル  題して…悪夢のミント作戦。

スネーク  ミ、ミント?

タートル  ミントの葉は、驚異的な繁殖力を持っています。地球人の家の庭に、一軒ずつミントを植えて回れば、やがてこの星はミントが支配する恐怖の惑星になり…

スネーク  何年かかるんだ、その計画は。カメだから、何でも長期的なんだよ。

トカゲ   スネーク将軍。なぜ私の意見は聞いてくれないのですか。

スネーク  いや、トカゲ参謀。こう、順番に…

トカゲ   私が女だからですか。女の意見は聞くに値しないと仰りたいわけですか。

スネーク  そんなことは言ってないだろう。

トカゲ   私は一位がいいんです。二位じゃ駄目なんです。

スネーク  君は、あれだな。もうちょっと、可愛げがあった方がモテるんじゃないかな。

トカゲ   スネーク将軍!今の発言の撤回を要求します。そういった意識が男性の根底にあるから…

スネーク  ああ、悪かった悪かった。ヤモリ男爵、何か、意見はあるかね。

ヤモリ   ないです。

スネーク  ズコーッ!おいお前、少しは頭を使えよ。

ヤモリ   そうですよね…俺が悪いんですよね…。

スネーク  あ、いや。

ヤモリ   昔からそうで…それで、ずっといじめられて…でも何も出来なくて…。


  ヤモリ男爵、泣き出す。


タートル  いや、まあ、元気出して。

カメレオン (スマホを出して)hey,siri.


  ポン、というsiriの起動音。


カメレオン ヤモリ男爵を、励ましたい。

スネーク  siriに聞くなあ!あーもう、何なんだどいつもこいつも!マトモなヤツから抜けていって、ポンコツしか残ってないじゃないか!


  店長の大五郎、入場。


大五郎   おいおい、スネークの兄ちゃんよお。

カメレオン 大五郎さん。

大五郎   困るよ、勝手に他のお客さん帰しちゃよう。

スネーク  人間どもの前で作戦会議など出来ん。

大五郎   もう人類だ爬虫類だって時代じゃねえだろ。俺の友達、爬虫類の嫁さん貰ったけど、幸せそうに暮らしてるよ?

スネーク  そんな軟弱者の話は知らん。我々の野望は、世界征服だ。

大五郎   何でもいいけど、ここで話すなら何か注文してくれよな。

スネーク  フン。こんな汚ったねえ中華料理屋で飯なんぞ食えるか。

大五郎   何だとお?


  大五郎の妹の、かれん入場。


かれん   ちょっと、お兄ちゃん。

スネーク  か…かれんさん。

かれん   駄目じゃない、邪魔しちゃ。

大五郎   いや、こいつらが、何も注文しねえからよお。

かれん   大きな夢を持ってる人には、苦労がつきものなんだから。そうですよね?

スネーク  え?…ええ、まあ。

かれん   ちゃんと、自分の夢を持ってる人って…素敵。頑張って下さいね。

大五郎   ったく。お前がいっつも、こいつらを甘やかすからよお…

スネーク  あ、あの!…えっと、その…北京ダッグと、フカヒレ下さい。

爬虫類達  はあ!?

大五郎   北京ダック、フカヒレ頂きました。

かれん   シェイシェイー!


  大五郎、かれん退場。


カメレオン いや、何見栄張ってるんですか。

スネーク  はあ?べ、別に。

トカゲ   意味もなくカッコつけないでください。

スネーク  カッコつけてねえし!全然、カッコつけてねえし!

タートル  中学生じゃないんだから。

スネーク  まあまあまあ。テレビでも見て、落ち着こうじゃないか。

一同    あー!


  スネーク将軍、テーブルの上のリモコンを操作。

  別空間に明かり。舞台上に、司会者。

スピリチュアルな音楽。


司会    今週もはじまりました「バカンブリア宮殿」。この番組では毎週、偉大な社長が一から創り上げた大企業を、みるみる駄目にしていくバカな二代目社長をスタジオにお招きします。本日のゲストは、日本一と言われる家電量販店、金山電機を現在みるみる駄目にしている、金山力社長です。


  拍手のSE。金山力、入場。


スネーク  何なんだ、この番組は。

司会    早速ですが、金山電機の業績の変化について教えてください。

金山    はい。もう、全然駄目ですね。私が社長を継いでから、何かよくなったことは一つもありません。

司会    一つも、ですか。

金山    私の目は、未来を見通さない目なんです。

司会    業績が悪化していく中で、不安などはないのでしょうか。

金山    それ、よく聞かれるんですけどね。親父が作った会社があまりにも大きいもんで、どれだけ私が間違ったことをやっても、会社は大丈夫なんですよ。

司会    なるほど。では、心置きなく、バカな経営が出来るということですね。

金山    そういうことです。あ、とりあえず今、一万円あげますよ。

司会    わあ、ありがとうございます。

タートル  タ…タ…タートール!!

スネーク  うわっ!


  タートル軍曹、リモコンでテレビを切る。

  別空間の二人、退場。


タートル  許せん、許せん。

スネーク  何なんだ、いきなり。

タートル  俺はこういう、楽して毎日を過ごす奴が許せないんです。命を授かった以上、毎日コツコツ努力して生きるのが務めってもんじゃないんですか。

カメレオン 何か、まともなこと言ってるな。

トカゲ   カメですからね。

タートル  くそう、あいつ。今すぐ説教してやりたい。

スネーク  しかし、そう憤ってもなあ…いや、待て。待てよ。

カメレオン スネーク将軍?

スネーク  思いついた、思いついたぞ、素晴らしい作戦を!

カメレオン それは、一体…

スネーク  フフフ…あの男を…金山力を、我々の手で誘拐するのだ!


  恐怖の音楽。


カメレオン な、なんと。

スネーク  奴を人質にコンチュウジャーをおびき出し、全滅させる。その後でたんまり、身代金も頂けるという寸法だ。

カメレオン 素晴らしい…リスケジュールと叫ばせてください。リスケジュール!

スネーク  タートル軍曹。この作戦を指揮してくれるかね。

タートル  勿論です。一に努力二に努力、三四がなくて五に努力。

スネーク  フフフ…目に浮かぶぞ。絶望の表情を見せる、コンチュウジャーどもの姿がなあ。フフフ…ハハハ…ハーッハッハッハッ!

一同    ハーッハッハッハッ!


  一同、高笑い。しかし、やがて収まる。微妙な間。

  やがて、カメレオン少佐が再び笑い始める。


カメレオン フフフ…ハハハ…

一同    ハーッハッハッハッ!ハーッハッハッハッ!


  一同、再び高笑い。しかし、やがてまた収まる。微妙な間。

  大五郎とかれん、それぞれ北京ダッグとフカヒレを持って入場。


大五郎   クックックッ…

かれん   フフフフフ…

一同    ハーッハッハッハッ!ハーッハッハッハッ!


音楽アップ。転換。一同退場。

  地球連合軍基地。

バランスボールやエクササイズローラー、ボディブレードなどが置かれている。

  奏、入場。


奏     さあ。入って入って。


  チョウジ、ハルオ、トーマス、明日香の四人、続いて入場。


奏     ここが、現在の地球連合軍基地だ。

チョウジ  いや、基地って言うか…。

トーマス  健康グッズばかりですね。

奏     俺はここで毎日、身体を鍛えている。見てろ。


  奏、バランスボールに乗る。


ハルオ   大丈夫かよ。

奏     そろそろ、ガロン長官も帰って来るはずだ。

チョウジ  え…ガロン長官?

トーマス  まだ、お元気なんですか。

奏     ああ。ガロン長官はな、爬虫類帝国と闘うため、自らをサイボーグに改造したんだ。

明日香   ガロン長官が、サイボーグに?

奏     それも、ただのサイボーグじゃない。生物学と機械工学の粋を集めた、究極のサイボーグだ。

チョウジ  生物学と、機械工学…。


  と、ガロン長官の声が響き渡る。


ガロン   諸君。久しぶりだな。

チョウジ  こ、この声は。ガロン長官!


  音楽。ガロン長官入場。

  右手が大根、左手が大根おろしになっている。

  音楽アウト。


ガロン   私の右腕は大根。そして左手は大根おろしだ。

四人    ズコーッ!

ガロン   諸君。私は、この時をずっと待っていた。完全なる昆虫戦士となった君たちが目覚める、この時をな。三十年ぶりのこの世界で、戸惑うことも多いだろう。分からないことがあれば、何でも聞いてくれ。

トーマス  じゃあ、私から。一体どうやってこの三十年間、爬虫類帝国と闘って来たんですか?

奏     ん?

トーマス  だって、その幼虫の身体じゃあ、昆虫戦士のパワーは出せないわけでしょう?

明日香   ああ、確かに。

奏     あー、うん。まあ、体力じゃ勝てないからねえ。ひたすら、爬虫類を就職させたよね。

チョウジ  就職?

奏     結局、地球でやることがないから、支配したいとか考えちゃうわけだろ。だから、怪人一人一人とまずは話して、何がやりたいか聞いて、で、就職させる。

ハルオ   ハローワークみたいだな。

奏     時間かかっちゃうけどさ、しょうがないよな。こっちは、マトモに闘えないんだから。

ガロン   私も、右手が大根ではな。

明日香   自分でやったんでしょ。

奏     それじゃあ、皆のことも教えてよ。そうだ、改めて自己紹介しようか。

ハルオ   はあ?

トーマス  何で、今更。

奏     いや、俺にしてみりゃ三十年ぶりだしさ。それに、皆も一緒に訓練してただけだし、実はお互いのこと何も知らないんじゃないの?

明日香   それはないと思うけど。

奏     じゃあ、まあ俺から。えー、時羽奏です。今の目標は、なんとなく生まれてる皆との溝を埋めること。将来の夢は、パイロットです。

ハルオ   間に合わねえだろ。

奏     じゃあ、皆も。

トーマス  ええと…エッフェル・トーマスです。元モデルらしく、華麗に闘いたいと思います。

チョウジ  え。トーマス、モデルだったのか?

トーマス  ええ、はい。

明日香   え、初耳。

奏     ホラホラ。知らないじゃん、お互いのこと。さあ、ドンドン行こう。

ハルオ   えー、多安島ハルオ。とにかく、俺がいれば全部大丈夫なんで、任せてくれ。

トーマス  へえ、言いますね。

ハルオ   い、いいだろ。ホラ、明日香。

明日香   え、私?…えっと…(かわいい声を出して)桜田〝ファミリア〟明日香です。えっと…その。紅一点、頑張りたいと思います。

ハルオ   何だよ、かわいこぶりやがって。

明日香   べ、別に。

奏     じゃあ、チョウジ。

チョウジ  …万里チョウジだ。俺たち、ずっと眠っていたみたいだけど…今日からコンチュウジャーの100倍パワーで、爬虫類帝国のヤツらを全員ブッ倒してやる。そうだろ、みんな!?


  三人、頷く。


奏     あー…うーん…。

チョウジ  何だよ。

奏     そういうノリは、いいかな。ちょっと、面倒くさいって言うか。

チョウジ  なっ。面倒くさいってどういうことだよ。

奏     ねえ、チョウジさあ。その熱血な感じ、いい加減やめようよ。何か、頭悪いよ。

チョウジ  あ、頭悪いって何だ。

奏     ってかさあ、前々から思ってたけど、すぐ「そうだろ、みんな!?」って聞くの、ちょっとアホっぽくない?

チョウジ  リーダーとして、全員の意思を確認してるんだよ。それのどこが悪いんだよ。そうだろ、みんな!?

奏     ホラ、また。

チョウジ  あー、もう。ガロン長官からも何か言ってやって下さいよ。

ガロン   いや、アホだな。

チョウジ  えー!?

ガロン   いいんじゃないか、もう全部適当で。

チョウジ  よくないですよ。俺は、この美しい地球を愛してるんです。

奏     かーらーの?

ガロン   ハハハ。

チョウジ  だから絶対、爬虫類帝国から守ってみせる。

奏     かーらーの?

ガロン   ハハハ。

チョウジ  人類が笑顔を取り戻すその日まで…

奏     かーらーの?

ガロン   ハハハ。

チョウジ  あーーー、何なんだよ、マジで!

トーマス  チョウジ、落ち着いて。

チョウジ  大体、就職って何だよ。そんなバカな話、あるわけないだろ。爬虫類帝国の怪人が、地球で普通に働くなんて…


  マムシ運送のマムシ、入場。段ボールを持っている。


マムシ   どーも、マムシ運送でーす。

奏     ああ、はいはい。

チョウジ  ……。

マムシ   お届け物の…サングラスですかね。

奏     サングラス?

ガロン   (奏に)今年の夏、バリ島に持って行こうと思ってな。

奏     長官、チャラいなー。

マムシ   こちらに、サインを。

奏     はい、いつもありがとうね。

マムシ   いやー、昔は世界征服のことしか考えてなかったんですけど、今はもう、運送業の楽しさで毎日キラキラしてます。奏さんのおかげですよ。

奏     爬虫類帝国にいたころから、武器とか運んでる時が一番楽しそうだったもんね。

マムシ   そーなんすよ。運ぶの大好きッス。じゃあ、また!


  マムシ、退場。


チョウジ  …いや、いるかもしれない。いるかもしれないよ、ああいうやつも。でも、だからって…


  突如、エマージェンシーのSE。


ハルオ   何だよ、今度は。


  ナレーションが流れる。


ナレ    緊急事態発生。金山電機社長、金山力社長が爬虫類帝国に誘拐された。繰り返す。金山電機社長、金山力社長が爬虫類帝国に誘拐された。


  恐怖の音楽。


明日香   な、何ですって。

奏     あー。事件起きちゃったかー。

チョウジ  くそ、みんな、行くぞ!

奏     まあまあ、そんなに急がなくても。

チョウジ  何言ってるんだよ。事態は一刻を争うんだ。

ガロン   (変なサングラスを着けて)チョウジ。はやる気持ちも分かるが…

チョウジ  何だそのサングラス!


  チョウジ、急いで退場。ハルオ、トーマス、明日香も続いて退場。

  音楽アップ。

  転換。奏とガロン退場。

  廃工場のような場所。

  音楽アウト。

  タートル軍曹、縄で両手を縛られた金山力を連れて来て、突き飛ばす。


タートル  ホラ、こっちだ。

金山    ぐっ。…貴様、私が誰だか知っているのか。

タートル  知っているともさ。偉大な父親が作った会社を駄目にしている、無能なバカ息子だろう。

金山    ああ、そうだ。

タートル  ズコーッ!まっすぐに肯定するな。

金山    私を捕まえて、どうするつもりだ。

タートル  貴様を餌にして、コンチュウジャーを呼び出す。奴らを始末した後は、たんまり身代金を頂くさ。

金山    フン、何だかよく分からんが、私は会社を駄目にするので忙しいんだ。金ならやるから、さっさと開放しろ。

タートル  何?

金山    金は、自分でも引くぐらい持ってるんだ。いくらでもやるから、さっさとほどけ。

タートル  タ、タ、タートール!


  タートル軍曹、金山を殴り飛ばす。


金山    ぐあっ!

タートル  馬鹿野郎!何が引くぐらい持ってるだ、このボンボンが!


  金山、うずくまっている。


タートル  俺は、十三人兄弟の末っ子だった。貧しい家だったから、努力して努力して、爬虫類帝国の最高幹部にまでのし上がった。それを、貴様は何だ。生まれ持っての幸運に甘えてばかりで、何も努力しようとしないじゃないか。

金山    (泣き出す)う…うう…。

タートル  おい、泣くな。そんなに強く殴ってないだろう。

金山    いや…そうじゃなくって…今まで、誰かに殴られたことなんてないから…嬉しくて…。

タートル  はあ?

金山    感動しました。あの、握手して下さい。

タートル  いや、ちょっと、ええ?


  チョウジ、ハルオ、トーマス、明日香の四人、入場。


チョウジ  そこまでだ!

タートル  ぬう。来たな、昆虫戦士コンチュウジャーども。

チョウジ  貴様、爬虫類帝国の怪人か。

タートル  ああ。最高幹部の一人、タートル軍曹とは俺のことだ。

チョウジ  今すぐ、金山社長を開放しろ。

タートル  フン、そう言われて開放するバカがいるか。

金山    その通りだ。

チョウジ  …え?

金山    おい、コンチュウジャー。俺は、人質なんだからな。迂闊なことをするんじゃないぞ。

ハルオ   な、何だ?

金山    タートル軍曹。これで奴らは手出し出来ません。遠慮なく、ボコボコにしてやってください。

タートル  タ、タ、タートール!


  タートル軍曹、金山を殴り飛ばす。


金山    ぐあっ!

タートル  馬鹿野郎!ふざけたことを言うんじゃない!

明日香   え、どういう状況なの。

タートル  自分の幸運に甘えて生きて来たから、そんな卑怯な考え方が生まれるんだ。それはそれ、これはこれ。勝負は、正々堂々あるべきだろう。

金山    タ、タートル軍曹…。

タートル  ボンボン、貴様に努力の力を見せてやる。コンチュウジャー。一人ずつ、俺と勝負だ。

チョウジ  いいだろう。受けて立つ。

タートル  よし。じゃあまずは…一番弱そうな、黄色のお前。

ハルオ   …は?俺?

タートル  ああ、さっさとかかって来い。

ハルオ   いや、ちょっと待てよ。何で俺が一番弱いんだよ。

タートル  俺には分かる。貴様は努力を嫌い、何かと楽してここまで生きて来たクチだろう。その根性、俺が叩き直してやる。

ハルオ   ふざけんな。めちゃめちゃ努力してるっつーの。なあ?


  しかし他のコンチュウジャーの三人、曖昧なリアクション。


ハルオ   待て待て。何だよそのリアクションは。

トーマス  言われてみれば、確かに…。

明日香   ハルオって、昔からそういうとこあったよね。

ハルオ   いやいや、ないだろ。

チョウジ  訓練中、水飲みに行って帰ってこなかったりとか。

明日香   あった、何回もあった。

トーマス  あと、異常な回数、法事で休んだり。

チョウジ  そうだ。親戚何人いるんだよって思ったよな。

ハルオ   おい。やめろ。

タートル  どうやら、図星のようだな。おおかた、その偉そうな口の利き方も、本当は臆病な自分を隠すためのものだろう。

ハルオ   誰が臆病だよ。

タートル  (いきなり大声で)タートール!!

ハルオ   うおっ!

タートル  ハハハ、やはりな。

ハルオ   畜生…。

タートル  さあ、かかって来い。それとも、俺が怖いか。

ハルオ   あーもう、分かったよ。やってやるよ!


  音楽。ハルオとタートル軍曹のバトル。

  しかしハルオ、タートル軍曹の攻撃から逃げ回るばかり。


チョウジ  おい、ハルオ。

明日香   何逃げ回ってるの。

トーマス  それじゃあ勝てませんよ。

ハルオ   うるせえな、分かってるよ。


  再びハルオとタートル軍曹のバトル。

  しかしやはりハルオ、タートル軍曹の攻撃から逃げ回るばかり。

  やがてハルオ、追い詰められる。


チョウジ  ハルオ!

タートル  どうやら、勝負あったかな。

ハルオ   くそ…。

タートル  くらえ、必殺、タートルパーンチ!

ハルオ   わーっ!


  ハルオ、苦し紛れにパンチ。

  しかしそれを受けたタートル軍曹、吹っ飛ぶ。

  音楽アウト。


タートル  ぐあっ!

ハルオ   …え?

金山    タ、タートル軍曹。

ハルオ   うそ、マジかよ。

タートル  ぐ、ぐおおお!


  ハルオに向かって行くタートル軍曹。

  しかしハルオ、かわしてキック。タートル軍曹吹っ飛ぶ。


タートル  ぐはあっ!

ハルオ   え、何これ。うわっ、めっちゃ強いじゃん。すげー!俺すげー!

タートル  ま、負けるかあ!!


  ハルオに向かって行くタートル軍曹。

  しかしハルオ、余裕でかわして攻撃を何発も叩き込む。タートル軍曹、吹っ飛ぶ。


ハルオ   ハーッハッハッハッ。見たか、俺の力を。

明日香   これが、コンチュウジャーのパワー…。

トーマス  確かに、すさまじい。

チョウジ  どうやら、勝負あったな。

タートル  くそおお!こんなに努力して来たというのに、たまたまコンチュウジャーになっただけの幸運な奴に負けるとは。

金山    タートル軍曹…。

タートル  ボンボン…すまん。努力が勝つところを、見せられなかった。

ハルオ   くらえ!必殺、ビーリボルバー!


  ハルオ、拳銃を出して撃とうとする。かっこいいエフェクト。

と、奏、入場。


奏     はい、ストップストップー!

チョウジ  奏。

奏     もー、何でそう、すぐ闘っちゃうかね。

ハルオ   おい、邪魔すんなよ。

タートル  フン、時羽奏か。言っておくが、俺には貴様の情けなど必要ないぞ。

奏     ええ?

タートル  大方、俺を就職させに来たんだろうが、腐っても爬虫類帝国最高幹部。これ以上、生き恥を晒すつもりはない。さあ、殺せ。

奏     いや、別に就職しなくてもいいけどさ。何も、死ぬことはないんじゃないの。

タートル  何を言う。努力の力がただの幸運に負けてしまった以上、俺なんて…

奏     だったらさ、これ、使ってみろよ。


  奏、ビデオカメラを、タートル軍曹に手渡す。


タートル  …え?

明日香   何、あれ。

トーマス  ビデオカメラ、ですね。

チョウジ  どういうことだ。

奏     タートル軍曹。You Tuberって知ってるか?

タートル  な、何だ、それは。

奏     You Tubeにこまめに自分の動画をアップして、広告収入などで生計を立てる人のことだ。

タートル  それがどうした。まさか俺に、そんな生活を送れとでも言うのか。

奏     ああ、そうだ。

タートル  ふ、ふざけるな。なぜ俺が、そんなことをしなければならんのだ。

奏     お前のポリシーは、努力は幸運に勝つ、だろう。だったらそのカメラで証明してみせろよ、努力の力を。

タートル  …!!


  感動的な音楽。


奏     確かに、うまくいくかどうかは、運次第なところもあるだろう。でも、毎日コツコツ動画を投稿し続ければ、少しずつ成功への道は開いていく。お前なら、きっと努力で、幸運を引き寄せられる。

金山    わ、私も応援します。タートル軍曹。二人で一緒に、動画、投稿しましょう。

タートル  興味なんて…ある。

コン四人  ズコーッ!

ハルオ   何、興味持ってるんだよ。

トーマス  そんな、馬鹿な。

チョウジ  何なんだ、この展開。

明日香   あと、この音楽、何。

奏     さあ、タートル軍曹。地球征服なんてやめて、そのカメラに情熱をぶつけようじゃないか。

タートル  しかし…俺は…俺は…。


  と、スネーク将軍の声。


スネーク  何をしている、タートル軍曹。


  音楽アウト。

  スネーク将軍、トカゲ参謀、ヤモリ男爵入場。


タートル  ス、スネーク将軍。

トカゲ   全く、これだから男性は。

ヤモリ   すいません、俺が悪いんですよね…。

チョウジ  お前らも、爬虫類帝国の幹部か。

スネーク  トカゲ参謀と、ヤモリ男爵だ。そして、もう一人。


カメレオン少佐、人質のタカシくんを羽交い絞めにしながら入場。


カメレオン 俺が、カメレオン少佐だ。

タカシ   助けてー!助けてー!

奏     タ、タカシくん!

トーマス  誰ですか。

奏     なぜか毎回、爬虫類帝国に捕まる少年だ。

明日香   何それ。

スネーク  どうやら、形勢は逆転したようだなあ。

タカシ   助けてー!多安島ハルオー!

ハルオ   え?

タカシ   多安島ハルオ!助けて、多安島ハルオ―!

ハルオ   何で俺限定なんだよ。

タカシ   多安島ハルオ!ハルオ多安島!

ハルオ   言いたいだけだろ。

明日香   ご指名みたいだけど。

ハルオ   いや、そんなこと言われても…

トーマス  アゲハウインド!


  トーマス、風を巻き起こす。


カメレオン うわっ!


  タカシくん、風に乗ってトーマスのところまで運ばれる。


スネーク  し、しまった!

トーマス  さあボク、もう大丈夫だ。

タカシ   ありがとう、エッフェル・トーマス。僕、エッフェル・トーマスが一番好き!


  タカシ、退場。


ハルオ   何なんだよ、あいつ。

トーマス  フ。ハルオ、こんな連中にてこずり過ぎですよ。

ハルオ   べ、別に俺は…

トカゲ   ちょっと。聞き捨てなりませんね。今の発言を撤回しなさい。

ヤモリ   ト、トカゲ参謀。

トーマス  別に、事実を述べただけですけど。

トカゲ   何ですって。

明日香   そうだそうだ。大人しく、負けを認めなさい。

トカゲ   あなたは黙ってなさい。金魚のフンみたいに後ろから。

明日香   はあ?誰が金魚のフンですって。

ヤモリ   トカゲ参謀、言い過ぎだよ。

スネーク  もういい。くそ、一時撤退だ。…行くぞ。


  スネーク将軍、退場。


チョウジ  お、おい待て。

奏     まあまあまあ。


  爬虫類帝国の怪人達、退場。


奏     これにて一件落着、と。

ハルオ   何が一件落着だよ。取り逃がしてるじゃねえか。

奏     まあ、今すぐにどうこうってのは難しくても、きっと時間が解決してくれるさ。

ハルオ   今すぐに終わらせられたんだよ、俺の力で。

奏     そうイライラするなよ。大体俺の力って言うけど、コンチュウジャーの力の間違いじゃないの?しかも、何。自分だけ必殺技、銃って。武器じゃん。

ハルオ   う…。

奏     ハルオはビッグマウスもいいけど、少しはアイツの努力を見習ってみてもいいんじゃないかな。

ハルオ   う、うるせえな。…分かってるよ。あー、クッソ。


  ハルオ、退場。


明日香   ちょっと、ハルオー。


トーマスと明日香も、追いかけて退場。


奏     ハルオも、変わらないな。

チョウジ  …おい。何なんだよ、これ。

奏     え?

チョウジ  こんなぬるい感じで、本当にいいのかよ。

奏     あー、まあ、いいのかって聞かれても。

チョウジ  三十年前は、こんな闘いじゃなかったはずだ。人間も大勢死んだし、爬虫類帝国のヤツらも大勢死んだ。

奏     そんなこともあったかなあ。

チョウジ  あっただろう、ごまかすなよ。

奏     ……。

チョウジ  なあ、俺達が眠っていた三十年間に、一体何があったんだ。何がどうなって、こんなことになってるんだ。

奏     …別に、何も。ずっと、こんな感じだよ。

チョウジ  そんなわけ…それじゃあ、ジョー。そう、安土ジョー。俺たちと共に訓練を受けて、俺たちがいない間、地球を守ると約束してくれたあいつは、今、どこに。

奏     安土ジョー、か。そんな奴もいたなあ。

チョウジ  そんな奴って…お前!

奏     いや、まあ元気でやってんじゃないの。ケバブ売って。

チョウジ  ケバブ?

奏     全くいい迷惑だよ、闘いの最中に、ワゴン車で旅してケバブ売るんだとか言って、いなくなって。

チョウジ  ちょっと待て。全然想像できないぞ、あいつがケバブ売ってるなんて。

奏     知らないよ、実際そうなんだから。

チョウジ  ……。

奏     なあチョウジ。三十年って、長い時間だぜ。そりゃ、色んなことがあるって。俺達もまだまだ、お互いに距離あるけどさ。そういうのは、ちょっとずつ縮めていこうよ。


  奏、退場。


チョウジ  …何なんだよ、一体。


  サイレンの音。続いて、あちこちから爆発音。

  暗転。

  明転。三十年前。

  安土ジョーと爬虫類帝国の怪人1、戦いながら入場。お互い一歩も引かない、緊迫した戦い。

  続いて、過去の時羽奏と爬虫類帝国の怪人2、戦いながら入場。奏はすでにヤゴの姿。

  こちらは、ただただ時羽奏が逃げ回るという、何とも間抜けな光景。

  やがて安土ジョー、ライフルで怪人1を撃つ。爆発する怪人1。

  時羽奏、頑張って怪人2のお尻を叩いたりするが、やがてピンチを迎える。


過去奏   あああー…。


  ジョー、怪人2を奏から引きはがし、ライフルで撃つ。爆発する怪人2。


過去奏   うわ、怖かった。

ジョー   おい、奏。少しはまともに戦えよ。

過去奏   ご、ごめんジョー。

ジョー   つーか、何でお前だけ普通に起きてるんだよ。成虫になるんじゃねえのか。

過去奏   いやー、トンボは不完全変態っていうね、盲点。ハハハ。

ジョー   チョウジ達四人は分かるけどさ。何でお前みたいな臆病者がコンチュウジャーに選ばれたんだよ。俺なら幼虫のままでも、もっとちゃんと闘ってみせるのに。


  ガロン長官、入場。


ガロン   安土ジョー。時羽奏。無事のようだな。

ジョー   (敬礼して)ガロン長官。この地域の爬虫類帝国は、殲滅いたしました。

ガロン   ご苦労。今後、戦いはさらに厳しくなっていくだろう。しかし、我々は負けるわけにはいかない。人類の未来のため、爬虫類帝国を徹底的に叩き潰すのだ。

ジョー   はい。

過去奏   は、はい。


  スネーク将軍、入場。


スネーク  貴様ら…派手にやってくれたじゃないか。

過去奏   ス、スネーク将軍。

ジョー   ほう。組織のボスが直々にお出ましか。

スネーク  最高幹部だったイグアナ博士の仇だけは、どうしても自分で取らねばならんのでな。

ジョー   イグアナ博士…そうか、死んだか。

スネーク  ああ。安土ジョー…お前から受けた銃弾で、三日三晩苦しんだ後にな。

ジョー   それがどうした。あいつの作った毒ガスで、多くの人間が死んだんだ。


  ジョー、ライフルを撃つ。しかし、弾切れである。


ジョー   くそっ。

スネーク  ハハハ、どうやら天は、我らに味方しているようだ。さあ、死んでもらおうか。

ジョー   お前がな。


  ジョー、ナイフを抜く。じりじりと近づく二人。


過去奏   や…やめろ!

ガロン   …奏?

スネーク  何だ、貴様は。

ジョー   奏、邪魔するな。

過去奏   いや…だから。えっと。…何で、侵略したいんだろう?

スネーク  …は?

過去奏   だから、うん。そもそも、何で地球を侵略したいのかな、っていう。

ジョー   おい、そんなことはどうでもいいだろ。

スネーク  何だ、こいつも貴様らの仲間か。

ジョー   知らねえよ、こんなヤツ。

過去奏   いいじゃんか。別に、そのくらい教えてくれたって。

スネーク  フン。我々の星は、進み過ぎた文明のせいで崩壊した。よって、新しい住処が必要なのだ。…どうだ、これで満足か。

過去奏   新しい、住処。あ、そう。うーん…。

ジョー   何なんだよ、さっきから。

過去奏   じゃあ…えっと。地球連合軍の基地を半分くらい開放して…。

スネーク  何?

過去奏   あ、いや。そんなスペースじゃ足りないから、えっと…ガロン長官の家と…

ガロン   何?

過去奏   あと、ジョーの家と…

ジョー   勝手にカウントすんなよ。

スネーク  バカバカしい。爬虫類帝国に、どれだけの怪人がいると思っているのだ。誰の家にとか、そういう問題では…

過去奏   あーもう、うるっさいなあ!そんなこと分かってるよ!

スネーク  な、何だと?

過去奏   あー、だから…色んな家庭にホームステイみたいな感じにして…いや、それも違うし…


  過去奏、一人で勝手に悩み始める。

  音楽。


スネーク  安土ジョー。随分と、頭のおかしい仲間がいるじゃないか。

ジョー   だから、こんなヤツ知らねえって言ってるだろ。

スネーク  全く…そいつのせいで、闘う気も失せた。私の気が変わらないうちに、さっさと立ち去れ。

ジョー   はあ?ふざけるなよ。今ここで、お前を…

過去奏   え、本当?やった、ラッキー!!

ジョー   おい!

過去奏   ねえジョー。帰っていいってさ。

ジョー   何言ってんだ。敵を目の前にして引き下がるなんて…

過去奏   まあまあ。助かったんだから、そんなことはどうだっていいじゃんか。

ジョー   ガロン長官!

ガロン   いや。…武器が使えない今、我々が不利だ。ここは一度、引こうじゃないか。

ジョー   …あー…くそおおおお!!


  ジョー、地団太を踏む。


ジョー   お前…本物のバカだな。


ジョー、怒りながら退場していく。


過去奏   あ、ちょっと待ってよ。ジョー。ジョー。


  過去奏も追いかけて退場。ガロン長官も、追って退場。

  音楽アップ。

スネーク将軍を残したまま、転換。

  三十年後。中華料理屋。

円卓に、スネーク将軍、カメレオン少佐、タートル軍曹、ヤモリ男爵、トカゲ参謀。

音楽アウト。


トカゲ   スネーク将軍。スネーク将軍。

スネーク  ん?あ、ああ。

カメレオン 何か、考え事ですか。

スネーク  いや、何でもない。


  大五郎、入場。


大五郎   おいおい、もう閉店時間過ぎてるぞ。

スネーク  うるさい。まだ、会議中だ。

大五郎   いい加減世界征服なんて諦めて、さっさと就職しちまえよ。とにかくホラ、もう店閉めるから、帰った帰った。


  かれん、入場。


かれん   もー。いいじゃないお兄ちゃん、まだ居てもらって。

スネーク  か、かれんさん。

かれん   大事な話し合いなんだから、ちゃんと納得いくまで意見を交わさないと。そうですよね?

スネーク  え、ええ。…そうです、そうですとも。フッフッフッ、必ずや我ら爬虫類帝国が、この地球を支配してみせましょう。

かれん   わあ、カッコいい。私達も、応援してますね。

スネーク  ありがとうございます。よし諸君、会議を続けるぞ。

かれん   さ、行きましょう。

大五郎   ったくよお。


  大五郎とかれん、退場。


スネーク  では、改めて。金山電機社長、金山力誘拐作戦は失敗に終わった。我々にはもはや、一刻の猶予も許されていない。直ちに、昆虫戦士コンチュウジャーを殲滅する次なる作戦を…

タートル  (カメラを回しながら小声で)ハイ。えー、今、爬虫類帝国の秘密会議中でーす。

スネーク  …タートル軍曹。何をしている。

タートル  あ…いや、その。

スネーク  まさか、この会議をYou Tubeにアップするつもりじゃあるまいな。

タートル  い、いえ。そんな、まさか…

スネーク  タートル軍曹。何も、無理に会議に参加する必要はない。少し、外で頭を冷やして来たらどうかね。

タートル  スネーク将軍!私はただ、広告収入が入れば爬虫類帝国の予算もアップすると思い…

スネーク  うるさい。私が行けと言ったら行けえ!


  シャ―ッ、という蛇が威嚇するSE。


タートル  ひ…ひいいい!


  タートル軍曹、逃げるように退場。


タートル  全く、何なんだ。今がどれだけ我々にとって危機的状況か、あいつは分かっているのか。

カメレオン まあまあ。テレビでも見て、ブレイク入れましょう。


  カメレオン少佐、テーブルの上のリモコンを操作。

  別空間に明かり。舞台上に司会。

音楽。


司会    今週もはじまりました「クソロモン流」。この番組では毎週、プロ意識のかけらもない、クソみたいなヤツをスタジオにお招きします。

スネーク  大丈夫なのか、テレビ業界は。

司会    本日のゲストは、お客さんの個人情報を何でも漏らしちゃう、「コモドドラゴン温泉旅館」のお喋り女将、コモ美さんです。


  拍手のSE。コモ美、入場。


司会    どうぞ、よろしくお願いします。

コモ美   よろしくお願いしますー。

司会    個人情報、漏らしちゃうんですか?

コモ美   そんなつもりはないんですけど、気付いたら全部喋っちゃってるんですよ。こないだも、芸能人がお忍びで…ホラ、あのスクープされた…えっと…

司会    それ、それ!

コモ美   あー、言っちゃったあ。


  司会とコモ美の二人、爆笑する。


スネーク  テレビなどどうでもいい。今こうしている間にも、コンチュウジャー達は我々を倒す特訓を積んでいるに違いない。我々は、そのさらに上を行く作戦を…

コモ美   あ、そうそう。今日、コンチュウジャー達が泊まりに来るんですよ。

スネーク  ズコーッ!…な、何だと?

司会    え、昆虫戦士コンチュウジャーですか?

コモ美   あー、言っちゃったあ。

司会    それはまた、どうして。

コモ美   何でも、メンバー同士の距離感をレジャーで縮めたいんですって。

司会    へえ。爬虫類帝国との闘いは大丈夫なのでしょうか。

コモ美   まあ、爬虫類の私が言うのも何ですけど、爬虫類帝国なんてもう、あってないようなもんですからねえ。

スネーク  ふ…ふざけるなああああ!


  スネーク将軍、リモコンでテレビを切る。

  別空間の二人、退場。


スネーク  何なんだ。こっちが必死に作戦会議をしているのに、レジャーで距離感を縮めるだあ?冗談じゃねえぞ。なめてんのか、オイ。

カメレオン 一回、クールダウンしましょう。

スネーク  いーや、もう完全にプッツン来たね。よし、決めた。次の作戦は、「楽しかったはずのコンチュウジャー共の温泉旅行を、血も凍るような惨劇に変えてやる大作戦」だ。

カメレオン スネーク将軍…。

スネーク  誰か、この作戦を決行する者はいないか。

トカゲ   その作戦、私に任せて下さい。

スネーク  おお、トカゲ参謀。

トカゲ   あのようなふざけた連中の存在を、許すわけにはいきません。

スネーク  フフフ、確かに、この無慈悲な作戦には、鉄の心を持った君が適任だな。

トカゲ   では、行ってまいります。

スネーク  いや、待て。一人で行くのは危険だろう。…ヤモリ男爵。君も作戦に加わり給え。

カメレオン え。

ヤモリ   お、俺ですか?

スネーク  ああ、君なら出来る。

トカゲ   ちょ、ちょっと待ってください。作戦の撤回を要求します。

スネーク  ほう、なぜかね。

トカゲ   なぜって、それは。…どう考えても、彼では力不足でしょう。身体も弱ければ、心も弱い。いいところなんて、一つもないじゃないですか。

カメレオン トカゲ参謀。もう少しボキャブラリーを選んだ方が…

ヤモリ   そ…そうですよね。自分でも、全部分かってるんです。でも、俺、頭悪いから…何をどうしたらいいのか、もう、全然分からなくて…。


  ヤモリ男爵、泣き出す。


スネーク  泣くなッ!…おいヤモリ男爵、君は爬虫類帝国最高幹部になって何年になる。知っての通り、爬虫類帝国は深刻な人材不足だ。君に一皮むけてもらわなければ、我々としても困るのだよ。

ヤモリ   (泣きながら)はい…。

スネーク  そういうことだ。トカゲ参謀。

トカゲ   いや、しかし…

スネーク  今後の爬虫類帝国のため、ヤモリ男爵を成長させてやってくれ。

トカゲ   ですから、なぜ私がそんなことを…

スネーク  異論は受け付けない。これは、総司令官としての命令だ。

トカゲ   …分かりました。行くわよ。

ヤモリ   (泣きながら)う、うん。


  トカゲ参謀、退場。ヤモリ男爵も、その後を追って退場。


スネーク  よーし、頼むぞ二人とも。コンチュウジャー共の休日を、台無しにしてやってくれ。

カメレオン あの、スネーク将軍。

スネーク  …何だ。

カメレオン iPad Proの革命性は…

スネーク  カメレオン少佐、意識の高い言葉はやめてくれ。もう少し、低い意識で。

カメレオン 分かりました。…(大声で)おっぱい!

スネーク  低すぎるよ。もっと、高く。

カメレオン ブルーボトルコーヒー…

スネーク  高すぎるよ。もっと、低く。

カメレオン おっぱい!

スネーク  低すぎるよ。もっと、高く。

カメレオン ブルーボトルコーヒー…


  しばらく、このくだり。


スネーク  もういいよ!

カメレオン …ブルーボトル、おっぱい。

スネーク  ブルーボトルおっぱいって何だ!…つまるところ、何が言いたいんだ。

カメレオン …では、単刀直入に。スネーク将軍は、今でも人類が憎いですか?

スネーク  はあ?何を言う。

カメレオン ですから、その。人類と爬虫類帝国の闘いが始まって、三十年。本当に今でも、人類を憎んでいるのかなと。

スネーク  いや、憎いよ。憎いに決まっているだろう。だから今だって、こうしてトカゲ参謀とヤモリ男爵を向かわせているではないか。

カメレオン まあ、それはそうなんですが。

スネーク  全く…。

カメレオン ……。

スネーク  何でだ。

カメレオン え?

スネーク  何で今さら、そんな話を。

カメレオン …スネーク将軍も、分かっているでしょう。


  大五郎、入場。


大五郎   おいおい、いつまでいるつもりなんだよ。

カメレオン 大五郎さん。ちょっと、あの卵を持って来てくれませんか。

大五郎   はあ?ったく、何なんだよ。


  大五郎、文句を言いながら退場。


スネーク  あの卵、か。

カメレオン ええ。ここ数日で、明らかな変化を見せています。

スネーク  何だと?

カメレオン 覚えていますか。あの卵を残した、イグアナ博士の最後の言葉を。

スネーク  やがて時が満ち、私の意思を継ぐ最強の怪人が誕生するだろう…。


  不穏な音楽。

大五郎、巨大な禍々しい卵を抱えて入場。

  スネーク将軍達のテーブルにどんと置く。


大五郎  何でこんなもん、ウチに置いとかなきゃいけねえんだよ。


  大五郎、退場。


スネーク  こ、これは…。

カメレオン ご覧の通りです。

スネーク  何という妖気だ。いつの間に、こんな…。

カメレオン コンチュウジャー達の復活に反応しているのではないかと思います。

スネーク  いつ孵化しても、おかしくないということか。

カメレオン ええ。この怪人が誕生すれば、大きな闘いは避けられません。間違いなく、多くの血が流れる。

スネーク  ……。

カメレオン スネーク将軍。我々は今、決断の時にあるのではないでしょうか。このまま卵を孵化させて、人類との最終決戦を望むのか。それとも…。

スネーク  ……。


  音楽アップ。

  転換。一同退場。

  音楽アウト。

  一転して、明るい音楽。

  コモドドラゴン温泉旅館。

  コモ美と爬虫類の従業員達、入場。


コモ美   ようこそ、コモドドラゴン温泉旅館へ。


  奏、ガロン、チョウジ、ハルオ、トーマス、明日香の六人、スーツケースを引きながら入場。


奏     さ、着いた着いた。

コモ美   遠路はるばる、ありがとうございます。

奏     どーも、よろしくお願いします。

コモ美   (従業員に)ささ。コンチュウジャーの皆様のお荷物をお運びして。


  従業員達、スーツケースを受け取って退場。


ガロン   いやあ、いいところだな。

奏     早速、温泉入っちゃいます?

ガロン   お、そうするか。

コモ美   大浴場は、あちらでございます。


  奏とガロン、はしゃぎながら退場。

  コモ美も、一礼して退場。

  音楽アウト。


チョウジ  くそ、何でこんな時に旅行なんか。俺達の使命は、爬虫類帝国と闘うことなのに。そうだろ、みんな!?

ハルオ   いや、まあ、でもさ。

チョウジ  え?

ハルオ   奏は奏で、俺達との距離を縮めようとしてこの企画立てたわけだしさ。一泊くらいは、息抜きしたっていいんじゃねえの?

チョウジ  何だよ。じゃあ、その間に地球がどうなってもいいって言うのか。

ハルオ   いや、そういうことじゃないけど。

チョウジ  ハルオ。お前、最近ちょっと変だぞ。奏の影響で、平和ボケしちまったんじゃないのか。

ハルオ   別に、そんなことねえよ。

チョウジ  いーや、あるだろ。

明日香   ちょっと、チョウジ。

チョウジ  よし、分かった。この機会に、徹底的に話し合おうじゃないか。


  チョウジ、ハルオの腕をがっしり掴む。


ハルオ   は?

チョウジ  とりあえず、部屋に行こう。

ハルオ   いやいや、ええ?

明日香   まあまあ、そんな深刻にならなくても…

チョウジ  明日香は黙っててくれ。これは、俺とハルオの問題だ。行こうか。

ハルオ   おい、何だよ。話さなくていいよー。


  チョウジとハルオ、退場。


明日香   …行っちゃった。私達も行った方がいいかな。

トーマス  別に、いいんじゃないですか?

明日香   え?

トーマス  二人の問題なんだから、二人で解決すればいいでしょう。

明日香   何か、それって冷たくない?

トーマス  そうは思いませんけど。

明日香   ああ…ああ。

トーマス  何ですか。

明日香   思い出した。トーマスって、そういうとこあるよね。

トーマス  そういうところって?

明日香   何かそういう、人間の情緒に疎いって言うかさ。昔からさあ、訓練の後、みんなでこっそりお酒飲んだりとか、全然参加しなかったじゃん。

トーマス  訓練以外の時間の使い方は自由でしょう。

明日香   ほらほら、そういうとこ。雰囲気ってのがあるじゃない、物事には。そーいうの、全然考えないじゃん。

トーマス  ……。

明日香   まあ、根本的にトーマスは、自分大好きなんだよね。自分が世界で一番カッコいいとかって思ってるんでしょ?だからそういう、個人的なことが出来るっていうかさ。私には無理だなー、そういう自己チューな感じ。

トーマス  カッチーン。

明日香   え…何、カッチーンって。

トーマス  なるほど。貴重なご意見、ありがとうございます。だったら、私も言わせて頂きましょうか。

明日香   な、何よ。

トーマス  確かに、明日香が雰囲気について考えていることは認めましょう。でも…逆に言えば、それだけですよね。

明日香   はあ?

トーマス  私も、色々と思い出して来ましたよ。野外演習で、我々が必死に火を起こしている間、あなた何をしていましたか。頑張れって言ってるだけでしたよね。

明日香   いいじゃん、別に。大事でしょ、そういうポジションも。

トーマス  最初は、違いましたよね。

明日香   え?

トーマス  出会った頃のあなたは、もっと必死に、自分の力で物事を解決しようとしていた。でも、いつの間にかそんな気合が抜けて、どんどんズボラになって。何があったか知りませんが、あなたもコンチュウジャーならもう少し自覚を持って…

明日香   あーもう、うるさいなあ。人の気も知らないで偉そうなこと言わないでちょうだい、このナルシスト!

トーマス  な、何ですって。


  トーマスと明日香、にらみ合う。

  音楽。


トーマス  この旅行中、もう私に話しかけないでください。

明日香   それは、こっちのセリフ。

二人    …フン!


  お互い、反対方向に退場していく。

  音楽アップ。

  転換。旅館の部屋。

  舞台上に、チョウジとハルオ。

  音楽アウト。


チョウジ  この美しい地球は、俺達が守るんだ。そうだろ、ハルオ!?

ハルオ   チーッス。


  チョウジ、ハルオの頭をはたく。


ハルオ   何すんだよ!

チョウジ  いいか。俺たちはな、選ばれし昆虫戦士の…


  コモ美、布団を抱えて入場。


コモ美   失礼しますー。お布団、入れさせて頂きますね。

チョウジ  え?あ、はい。

コモ美   よいしょっと。


  しかしコモ美、布団を置いた後も何となく居座る。


チョウジ  …えっと。

コモ美   ああ、気にせず、続けてください。

チョウジ  あ、そ、そうですか。…だからさ、俺達心を一つにして、闘っていかなきゃいけないんだよ。

コモ美   それ、分かりますー。いや、ここだけの話、ウチの従業員もこないだ一人、借金地獄でいきなり夜逃げしちゃって。そういうのって、困りますよねえ。

チョウジ  そ…そうですよね。だからな、ハルオ。俺達は…

コモ美   あ、そうそう。借金と言えば。実は、今この上の階に泊まってるお客さんね、株で相当やっちゃったらしいんですよね。

チョウジ  は、はあ。

コモ美   あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  あの、すいません。今ちょっと、大事な話を…

ハルオ   あー、いや、チョウジ。うん、分かった。大体、分かった。

チョウジ  はあ?分かってないから、こうやって…

ハルオ   つーことで、俺も、ちょっと散歩して来るわ。


  ハルオ、退場。


チョウジ  おい、待てハルオ。話はまだ終わって…

コモ美   あの、あの。ここに来る途中、大きい家があったでしょう?

チョウジ  え、ええ?ああ、はい。

コモ美   あそこのボクちゃん、もう七回も司法試験落ちてるんですよ。もう、引きこもりみたいになっちゃって。

チョウジ  そ、そうですか。

コモ美   あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  すいません。その話、後にしてもらっても…

コモ美   まあ、ご両親もご両親なんですけどねえ。奥様は、パン教室の先生と不倫してらして。あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  あーもう…何なんだよこの状況―!


  音楽。

  転換。チョウジ、コモ美退場。

  ラウンジのような場所。明日香、入場。

  音楽アウト。


明日香   はあ。ちょっと、言い過ぎちゃったかなあ…。


  と、トカゲ参謀の声が響き渡る。


トカゲ   見つけたわ。桜田〝ファミリア〟明日香。

明日香   こ、この声は!


  音楽。

  トカゲ参謀、入場。


明日香   トカゲ参謀。

トカゲ   お久しぶり。

明日香   偶然同じ旅館に泊まって、ってわけじゃなさそうね。

トカゲ   一人でいたとは好都合。あなたから、あの世に送ってあげましょう。


  音楽アップ。

  明日香とトカゲ参謀のバトル。

  一進一退の攻防。


明日香   必殺…テントウフラッシュ!


  舞台上、ビカビカと光る。


トカゲ   うっ!


  トカゲ参謀、眩しがる。

  音楽アウト。


トカゲ   …え?

明日香   …え?

トカゲ   何、それ。

明日香   …テントウフラッシュ!


  舞台上、ビカビカと光る。


トカゲ   うっ!


  トカゲ参謀、眩しがる。


トカゲ   …え?

明日香   …え?

トカゲ   だから何、それ。

明日香   いや、え。眩しくないの。

トカゲ   いや、眩しいけど。…だから、何。

明日香   えー!ちょっと、必殺技なんだけど。

トカゲ   どこが必殺技なの。ただ、ピカピカ光らせるだけで。

明日香   そ、そんなあ。

トカゲ   あー、なるほど。なるほどね、そういうパターン。

明日香   え?

トカゲ   前からそうかと思ってたけど、やっぱりね。

明日香   何よ。

トカゲ   あなたの闘いには、心がない。あなた、あれでしょう。なんとなーく集団の中にいて、一人だと何も決められないんでしょう。

明日香   な!そ、そんなこと…

トカゲ   いーえ、あなたはそういう、志の低いタイプ。その証拠に…あなたコンチュウジャーのくせに、自分の体型さえ自己管理出来てないじゃない!


  ガーン、というSE。


明日香   ひ、ひどい。あんまりだわ。

トカゲ   あんまりなものですか。あなたの体型がコロコロ、コロコロ変わるせいで、今回も衣装さんがどれだけ苦労したと思っているの!


  ガーン、というSE。


明日香   フェ――――!それは言わない約束じゃん…。

トカゲ   フン。情けないことこの上ない。どうやらあなたは、他のコンチュウジャーに比べて、一歩も二歩も劣るようね。

明日香   そんなの…自分でも分かってるし。

トカゲ   何ですって?

明日香   他の皆と比べて、自分に特別な能力がないことくらい最初から分かってる。だから頑張って追いつこうとしたし、一緒に闘おうとした。でも周りが言うのは、「紅一点だからそれでいい」とか、「紅一点らしく振る舞って」とか、そんなことばっかり。そんなのもう、空気読んで立ち回るしかないじゃない。

トカゲ   ……。

明日香   誰も、私が活躍することなんて期待してない。だったら戦隊なんて、最初から男五人でいいじゃん。何よ、ピクルスみたいに女一人添えて。

トカゲ   なるほど。それで、いつの間にか思考停止しちゃったってわけね。

明日香   し、思考停止なんて…

トカゲ   してるじゃない。私は違う。私はそんな逆境を跳ね返すために、恋もオシャレもグルメも全部捨てて、爬虫類帝国のために闘って来た。あなたのように、そこで諦めたりしなかった。

明日香   もー、何よ、みんなして私に説教ばっかり。…テントウフラッシュ!


  舞台上、ビカビカと光る。


トカゲ   うっ!…やめなさい、それ意味ないから。

明日香   テントウフラッシュ!


  舞台上、ビカビカと光る。


トカゲ   うっ!だから、意味ないから!

明日香   何この必殺技―。もっと強いのがよかったー。


  トーマス、ヤモリ男爵を捕まえて入場。


トーマス  そこまでです。

トカゲ   エッフェル・トーマス。

ヤモリ   (泣きながら)ごめん、捕まっちゃったあ。

トカゲ   ズコーッ!あんた、もうちょっと頑張りなさいよ。

トーマス  明日香。あなたの方は、負けてしまったようで。

明日香   か、関係ないでしょ。

トーマス  仕方ない。私が、こちらも片づけてあげましょう。

トカゲ   やれるものなら、やってみなさい。


  トーマスとトカゲ参謀、ファイティングポーズ。

  奏、入場。風呂上りらしく、首にタオルをかけている。


奏     あー、いいお湯だった…って、ちょいちょいちょい。

トカゲ   時羽奏。

奏     何やってんの、こんなところまで来て。

トーマス  我々コンチュウジャーに、休息の時はないということでしょう。

奏     ブラック企業みたいなこと言っちゃって。休む時は休まないと。

トーマス  心配には及びません。あっという間に終わらせてみせますよ。

トカゲ   言ってくれるじゃない。

奏     まあ、まあ、まあ。あー、よし、分かった。ちょうど二人ずつだし、ここはひとつ、卓球で決着をつけようじゃないか。

一同    …はあ?

奏     卓球台、カモン。


  卓球台と得点板が運び込まれてくる。

  トーマス、明日香、トカゲ参謀、ヤモリ男爵にラケットが手渡される。


トーマス  何ですか、これは。

奏     温泉と言えば、卓球でしょ。題して、「テーブルテニスの王子様対決」!

明日香   いや、それはまずいって。

トカゲ   ちょっと、ふざけないで。私は、遊びに来たわけじゃない。

奏     まあ、まあ。もしそっちが勝ったら、こっちの二人は好きにしていいから。

二人    はあ!?

トカゲ   その言葉、本当でしょうね。

奏     ああ、約束する。

トーマス  奏。勝手な約束をしないでください。

奏     何。勝つ自信、ないわけ。

トーマス  いや…、そういうことでは。

奏     勝てばいいんだよ、勝てば。勝つ自信があるなら、別にいいじゃないの。

トーマス  …分かりました。いいですよ、やってやりますよ。

トカゲ   (ヤモリ男爵に)ホラ、立って、ラケット握って。とにかく球を見て、ラケットを振ること。

ヤモリ   (泣きながら)う、うん。

トーマス  明日香。私一人で充分です、あなたは何もしないでください。

明日香   言われなくても、そうさせてもらいますよーだ。


  明日香、少し離れた場所に座る。


奏     先に、三点取った方が勝ち。デュースとか、そういう面倒くさいルールはなしね。それじゃあレディー…ゴー!


  音楽。


トーマス  はああ…アゲハウインド!


  トーマス、風の力を使ってすごい勢いのサーブを打つ。

  ヤモリ男爵側に、綺麗に決まる。


ヤモリ   ひ、ひいっ!

トーマス  (両手を天に突き上げて)YES!

奏     トーマス・明日香チーム、ポイントワン。

トカゲ   ぐっ…。


  奏、得点板をめくる。「1‐0」。


トカゲ   ちょっと、ヤモリ男爵。

ヤモリ   む、無理だよ。あんな、強いヤツ。

トーマス  その言い方は正確ではありませんね。強く…そして、美しくです。はああ…アゲハウインド、バージョンスター!


  トーマスのサーブ。風の力で、星型の軌道を描く。


ヤモリ   こ…これは…!

トカゲ   球が、星の軌道を描いている!


  球がスピードアップして、ヤモリ男爵側に綺麗に決まる。


ヤモリ   あああー!

トーマス  (両手を天に突き上げて)YES!

奏     トーマス・明日香チーム、ポイントツー。


  奏、得点板をめくる。「2‐0」。


トーマス  まあ、コンチュウジャーならこのくらい当然でしょう。ねえ、明日香。

明日香   アンタって、ホントに嫌なやつ。


  浴衣姿のカップル、入場。


女     ホラ、あの人あの人。

男     え、超かっけーじゃん。

女     せーの、

二人    頑張ってくださーい!

明日香   うわ。いつの間にかファン出来てるし。


  キャップを深くかぶった謎の二人組、入場。


謎A    あれが、エッフェル・トーマスか。

謎B    ああ。俺達の、二回戦の相手…ですね。

明日香   誰!?こいつらに至っては、誰!

トーマス  やれやれ、どこに居てもギャラリーですか。(両手を天に突き上げて)YES!

四人    (両手を天に突き上げて)YES!

トーマス  (両手を天に突き上げて)YES!

四人    (両手を天に突き上げて)YES!

ヤモリ   (泣きながら)やっぱり…駄目だ。俺なんかが、かなう相手じゃない。

トカゲ   ……。

ヤモリ   (泣きながら)俺…ただでさえ頭悪いのに、運動も出来なくて…。俺なんて、俺なんて…

トカゲ   アンタ…いい加減にしなさいよ!


  音楽アウト。


トカゲ   いつまで卑屈になってるつもり?アンタにだって…いいところ、いっぱいあるじゃない。雨の日に、捨てられてる子犬を拾ってきたこと。ひとつしかないから揚げを、私に譲ってくれたこと。何で私が覚えてて、アンタが覚えてないのよ。

ヤモリ   トカゲ参謀…。

トカゲ   そうやってイジけていたいなら、勝手にそうしてなさい。でも、私は最後まで諦めない。

ヤモリ   ……。

トカゲ   さあ、エッフェル・トーマス。かかってらっしゃい。

トーマス  武士の情けです。最後は、一瞬で決めて差し上げましょう。はああ…アゲハウインド!


  トーマス、風の力を使ってすごい勢いのサーブを打つ。

  しかしヤモリ男爵、そのサーブを打ち返す。


ヤモリ   どりゃああああ!

トーマス  …な!

奏     ヤモリ男爵・トカゲ参謀チーム、ポイントワン。


  奏、得点板をめくる。「2‐1」。


明日香   え…嘘。

トカゲ   ヤ、ヤモリ男爵。あなた…

ヤモリ   あの、トカゲ参謀。…ずっと前から、好きでした!

一同    ズコーッ!

明日香   このタイミングで、何。

ヤモリ   こんな、愚図で卑屈な俺だけど…君の為なら、頑張れる。

トカゲ   じょ、冗談はやめなさい。発言の撤回を要求します。

ヤモリ   撤回しない。本気なんだ。

トカゲ   …どうして。私、恋なんてしたことないし、オシャレとかだって…

ヤモリ   そんなこと、どうだっていい。(ギャラリーに)そうだろ、みんな!?君が俺のいいところを見てくれていたように…俺も、君のいいところをずっと見ていた。他人に流されず、まっすぐ頑張るところ。それでいて、本当は誰よりも優しいところ。

トカゲ   ヤモリ男爵…。

ヤモリ   オラア!どんどん行くぞ、エッフェル・トーマス!

トーマス  く、くそお。来いっ!

ヤモリ   ヤモリハンド、バージョンラブ!


  ヤモリ男爵のサーブ。愛の力で、ハートの軌道を描く。


トーマス  私が…上だあ!


  トーマス、何とか打ち返す。


ヤモリ   し、しまった。

トカゲ   やーーーーっ!


  トカゲ参謀が打ち返し、決まる。


奏     ヤモリ男爵・トカゲ参謀チーム、ポイントツー。

トーマス  な、何いいいい!


  奏、得点板をめくる。「2‐2」。


ヤモリ   トカゲ参謀…。

トカゲ   私…二位は嫌。あなたの、一位じゃなきゃ嫌。…それでも、いいの。

ヤモリ   …はい、喜んで!

トーマス  嘘だ…嘘だ…。

女     ねえ、なんか、あっちの人の方がカッコよくない?

男     うん。ってかこっちの人、よく見たら別にカッコよくねえな。

トーマス  ちょ、ちょっと。

謎A    どうやら、我々の二回戦の相手は。

謎B    ああ、あのチームのようだな…ですね。

トーマス  待って…待ってください…。

ヤモリトカゲ(両手を天に突き上げて)YES!

四人    (両手を天に突き上げて)YES!

ヤモリトカゲ(両手を天に突き上げて)YES!

四人    (両手を天に突き上げて)YES!

トーマス  この私が…この私が、このまま負ける…?


  トーマスの様子がおかしい。


明日香   トーマス、しっかりして。

トーマス  (変な声で)おかき。

明日香   ト、トーマス!?

トーマス  (変な声で)おかき。おかき。

明日香   トーマスが!トーマスが「おかき」しか言わなくなった!

奏     あーあー、もう全然駄目だね。ほらほら。あと一点取られたら、負けちゃうよ。

明日香   ちょっと、奏。あなた、どっちの味方なのよ。

奏     俺は勿論、人類の味方だよ。だから、こういうこと言ってるんじゃない。

明日香   え?

奏     本当はさ、二人とももう分かってるんでしょ?あと一点取るためには、どうするべきなのか。

二人    ……。


  トーマスと明日香、顔を見合わせる。


トーマス  …何ですか。

明日香   …別に。

トーマス  ……。

明日香   ……。

トーマス  あの、明日香。

明日香   何。

トーマス  基本的に、私は何だって一人で出来るんです。誰かの助けなんて、必要ない。

明日香   あ、そう。

トーマス  でも、その、何でしょう。今、ちょっとだけ、困ったことになっていまして。だから…一緒に、闘ってくれませんか。

明日香   ……。

トーマス  お願いします。

明日香   …どうしよっかなー。私、雰囲気担当だからなあ。

トーマス  ……。

明日香   だけど、まあ。あの女に言われたことも、結構シャクだしね。


  明日香、大きく息を吸う。


明日香   (大声で)しゃあああああっ!…いいよ。一緒に闘おう。

トーマス  明日香…。

明日香   最後の一点、絶対に取るよ。

トーマス  ええ。勿論。


  トーマスと明日香、拳を合わせる。

  音楽。


トーマス  そちら側の球は、お任せします。

明日香   オッケー。

ヤモリ   トカゲ参謀。黙って、俺についてこい。

トカゲ   は、はい!

ヤモリ   行くぞ!ぬあああああっ!


  ヤモリ男爵、激しいサーブ。

  そこからラリー。一進一退の攻防。


女     す、すごい。どっちもすごい。

男     頑張れー。どっちも頑張れー!

謎A    次の一点を取った方と、二回戦で闘うことになる。

謎B    フン。どちらが相手でも、俺達の「韋駄天殺法」には勝てない…ですね。


  やがてトカゲ参謀の返した球が、高く上がる。


トカゲ   あっ…。

トーマス  明日香、今です!


  音楽アウト。

  球がスローモーションになる。


明日香   テントウフラッシュ!


  舞台、ビカビカ光る。

  トカゲ参謀とヤモリ男爵の目が眩む。


二人    うっ!

トーマス  はああ…アゲハウインド!


  トーマス、風の力でボールを引き寄せる。

トーマスと明日香、二人でスマッシュ。綺麗に決まる。


奏     トーマス・明日香チーム、ポイントスリー。ゲームセット。


  奏、得点板をめくる。「3‐2」。

  トーマスと明日香、一気に体の力が抜ける。


トーマス  ふーっ…。

明日香   勝ったー…。

トーマス  まあ、余裕でしたね。

明日香   よく言うよ。

ヤモリ   く、くそお!やっぱり、俺じゃ駄目だったか。情けない…トカゲ参謀にいいところを見せたかったのに…


  トカゲ参謀、ヤモリ男爵を抱きしめる。


トカゲ   確かに、試合には負けた。だけどあなたのサーブは、私のコートにスマッシュヒットよ。

ヤモリ   トカゲ参謀…。

女     はい、本当、二人ともカッコ良かったです。

男     俺達、ファンになっちゃいました。

謎A    一年後…驚異的なペアになっているかもな。

謎B    来年の、全国大会で待ってるぜ…ですね。

明日香   だから、誰なの。


  カップルと謎の男AB、コートと得点板を持って退場。


奏     四人とも、お疲れさま。素敵な試合だったよ。

トーマス  明日香。…ありがとう。

明日香   …こちらこそ。

ヤモリ   トカゲ参謀。もう、君を離さない。

トカゲ   うん。離したら、飛んでっちゃうぞ。


  スネーク将軍、拍手しながら入場。


スネーク  ブラボー。実にブラボーな話じゃないか。

トーマス  ス、スネーク将軍。

スネーク  全く気付かなかったよ。まさか、爬虫類帝国がオフィスラブの巣窟になっているとはなあ。

ヤモリ   スネーク将軍。俺たち、本気なんです。

トカゲ   闘いと愛は、両立出来ないでしょうか。

スネーク  うるさい!調子に乗るなよ、コンチュウジャー共。何といってもこちらには…人質がいるのだからなあ!


カメレオン少佐とタートル軍曹、タカシくんを連れて入場。

タカシくん、上半身裸で、両乳首にゴムの付いた洗濯ばさみを付けられている。


タカシ   助けてー!助けてー!

トーマス  タカシくん!

スネーク  今、タカシくんの乳首には洗濯ばさみを取り付けている。このゴムを引けば、大ダメージは免れないだろう。

明日香   な、何てひどいことを。

トーマス  タカシくん、今助けてあげますからね。

奏     いや、待て。スネーク将軍…やれよ。

一同    はあ?

明日香   ちょっと、奏。

トーマス  何を言っているんですか。

スネーク  貴様、どういうつもりだ。

奏     タカシくん、覚えているか。このネタ、初演ですごくウケたよな。本当は君も、再演が決まった時から、やる気満々だったんじゃないのか?

タカシ   そ、それは…。

奏     やりたくないと言うなら、それでもいい。ここで自分を守るか、それとも今回も伝説を残すか。さあ、どうする。

タカシ   …やります、やらせてください。

奏     よく言った!

タカシ   (爬虫類帝国の怪人達に)さあ、このゴムを引いてください。


  怪人達、ビビる。


タカシ   お願いします、引いてください。


  怪人達、ビビる。タカシくん、トーマスと明日香に引いてもらおうとする。


タカシ   さあ、引いてください。


  トーマスと明日香、ビビる。


タカシ   誰か、誰かこのゴムを引いてくださーい!


  ハルオ、入場。


ハルオ   おいおい、何だよこれ。

トーマス  ハルオ。

ハルオ   え、どういう状況なの。

奏     いいところに来た。ハルオ、あのゴムを引いてやってくれ。

タカシ   お願いします。


  タカシ、ゴムをハルオに手渡す。


ハルオ   はあ?いや、何で。

奏     いいから。

タカシ   お願いします!

ハルオ   引きゃあいいの?行くぜ、おりゃあああ!


  ハルオ、ゴムを引く。タカシくんの乳首から、洗濯ばさみが取れる。


タカシ   あいたああああ!

ハルオ   だ、大丈夫かよ。

タカシ   ありがとうございます!

ハルオ   いや、何で俺がお礼言われんの。

タカシ   やったーッ!あうるすぽっとに、爪痕残したぞーッ!


  タカシくん、退場。


カメレオン 行ってしまった。

スネーク  く…くそおおおお!あれも失敗、これも失敗。全部失敗じゃないか!

タートル  スネーク将軍…。

スネーク  時羽奏。お前は一体、何なんだ。いつもいつも、我々の邪魔ばかりして…くそ、おしまいなのか、爬虫類帝国は…。

奏     なあ、スネーク将軍。もう、終わりにしないか。

スネーク  …何?


  音楽。


奏     俺達、三十年間も闘ってきて…色々なことがあった。でも、もういいだろ。スネーク将軍だって、本当はそう思っているんじゃないのか。

スネーク  ふ、ふざけるな。痩せても枯れても爬虫類帝国。残ったメンバーの力を合わせて…

奏     少なくとも、他の最高幹部たちは、もう闘いたくないって顔、してるぜ。

スネーク  何だと…。


  スネーク将軍、最高幹部達の顔を見渡す。


奏     な。もう、終わりにしよう。

スネーク  ……。

カメレオン スネーク将軍。アマゾンプライムは…

スネーク  うるさい。…フン、行くぞ。

タートル  スネーク将軍。


  スネーク将軍、退場していく。慌てて、その後を着いていく爬虫類帝国幹部達。

  スネーク将軍、立ち止まる。


スネーク  時羽奏。その話は…少し、考えさせてもらおう。


  爬虫類帝国の一同、退場。


明日香   え…今の言葉って。

トーマス  闘いが、終わる?

奏     まあ、どうだろうね。あとは、スネーク将軍が決めることだから。

ハルオ   おい!さっきから、俺を置いてきぼりで話を進めんなよ。

トーマス  ハルオ。

明日香   ってか、チョウジと話してたんじゃないの。

ハルオ   ああ。あの女将がめっちゃうるさくてさあ。逃げて来たんだよ。

明日香   何、それ。

ハルオ   いや、マジで超うるさいんだって。


  ガロン長官、入場。


ガロン   おい皆、夕食が出来たみたいだぞー。

奏     ま、何でもあんまり、深く考えるのはやめようじゃない。とりあえず、夕飯食べに行こう。

明日香   …うん。

トーマス  そうしましょうか。

ハルオ   おい、だから何なんだよ。おいってばー。


  音楽アップ。

一同、退場していく。

転換。宿泊部屋。舞台上、チョウジとコモ美。コモ美、まだ喋り続けている。


コモ美   だからね。あそこの八百屋さん。内緒にしてるみたいだけど、前科二犯なんですよ。怖いですよねえ。

チョウジ  (半ばやけくそで)そうなんですかあー。

コモ美   あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  ……。

コモ美   いやー…でもこうして、人間と爬虫類が普通に喋れる時代が来るなんてねえ。

チョウジ  …え。

コモ美   昔じゃ、考えられなかったですよねえ。本当に、お互い憎しみ合って…

チョウジ  あ、あの。俺達ずっと眠っていて、この三十年のことを何も知らないんです。だから…教えてください、一体何があったんですか。

コモ美   あー…まあ、でも、どうでしょう。昔のことだし、そんな、ね。人間も爬虫類も、半分以上が死んだなんて話は…

チョウジ  な、何だって。

コモ美   あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  そんなに、激しい闘いだったんですか。

コモ美   も、もうこの話はいいじゃないですか。あんまり、いい思い出じゃありませんから。

チョウジ  …安土ジョー。

コモ美   え?

チョウジ  安土ジョーという男を知っていますか。地球連合軍を率いていた。

コモ美   ええ…まあ。有名な方ですので。

チョウジ  彼について、何か知りませんか。俺達の、仲間だったんです。

コモ美   あー…どう、でしょう。

チョウジ  お願いします、教えてください。

コモ美   あまり、追及なさらない方がいいかと思います。あの方が、戦死なさったなんてことを知っても…

チョウジ  戦死した?


  音楽。


コモ美   あ、言っちゃった。言っちゃ駄目なのに言っちゃったー。

チョウジ  安土ジョーは…爬虫類帝国に殺されたのか。

コモ美   え…チョウジさん?チョウジさーん?

チョウジ  奏…何で、俺に嘘をついた。何で、ケバブを売っているなんて嘘を…。奏…お前は一体、何を考えているんだ。


  別空間に、爬虫類帝国の巨大な卵。

  カタカタと動いている。ピシピシッという、ヒビが入るSE。

  音楽アップ。暗転。

音楽アウト。ひゅー、という風が寂しく吹き荒れるSE。

明転。三十年前。

舞台上、過去の時羽奏と安土ジョー、ガロン長官。

廃墟と化した街に三人、立ち尽くしているようである。

しばし、沈黙。


ジョー   ここに、俺の育った街があった。俺の行った学校。俺の遊んだ公園。夜中に歯が痛くて、駆け込んだ病院。…見ろよ、爬虫類帝国に吹っ飛ばされて、跡形もありゃしねえ。

ガロン   ジョー…。

ジョー   …なあ、奏。お前のやることは、いつも俺の正反対だ。気に食わないけど、実はすげえんじゃねえかって、本当は心の中で思ってたよ。

過去奏   ……。

ジョー   だけど、やっぱりそれは間違いだった。自分の街を壊されてまで、ヘラヘラ笑っちゃいられない。

過去奏   …それで、また別の誰かを殺すの?

ジョー   何?

過去奏   俺たちがイグアナ博士を殺して、今度はジョーの街が壊されて。それで、また別の誰かを殺すの?そしたらきっとまた、別の誰かが犠牲になって…

ジョー   うるせえ!


  ジョー、過去奏を殴り飛ばす。


ジョー   お前に何が分かるんだよ。いっつも逃げ回ってるだけの、臆病者じゃねえか。

過去奏   ……。

ジョー   ガロン長官。俺に、爬虫類帝国殲滅作戦の全権を与えてください。あいつらを、完全に葬ってみせます。

ガロン   いや、しかし…

ジョー   ガロン長官。もう、後には引けないんですよ。俺たちも、あいつらも。俺は、絶対にあいつらを許さない。


  ひゅー、という風が寂しく吹き荒れるSE。

  転換。三十年後。

  中華料理屋の、薄暗い地下の貯蔵庫。

  大五郎とかれん、懐中電灯を持って入場。


大五郎   ホラ、こっちだ。

かれん   足元、気を付けてくださいね。


  スネーク将軍、カメレオン少佐、タートル軍曹、トカゲ参謀、ヤモリ男爵が続いて入場。


タートル  この中華料理屋に、こんな地下室があったなんて。

トカゲ   暗くて、怖い…。

カメレオン それより、スネーク将軍。…いいんですね。イグアナ博士が残した、あの卵を処分して。

スネーク  …ああ。

カメレオン 本当にいいんですね。パラダイムシフトをイノベーティブにフルコミットして…

スネーク  しつこいぞ。いいと言っているだろう。

タートル  じゃ、じゃあ、人類との闘いは。

ヤモリ   ついに、終わりですか。

スネーク  べ、別にそうは言っていない。ただ…あの卵は、我々にとって必要ない。それだけのことだ。

かれん   あ、着きました。ここが、卵を置いてる倉庫です。

大五郎   電気、つけるぞー。


  大五郎、電気をつける。

  卵の殻が転がっている。


一同    …え。

カメレオン 殻しか…ない…。

トカゲ   ちょ、ちょっと。

タートル  一体、どういうことだ。

スネーク  おい、どういうことだ。

大五郎   知らねえよ。何で、こんな…。


  グルルルルル、という猛獣のうなり声のような音。


ヤモリ   え?

タートル  な、何だ。


うなり声、大きくなる。

  不気味な音楽。

  謎のシルエットが浮かび上がる。


トカゲ   キャー――ッ!

カメレオン ま、まさか…。


不気味な声が流れる。


声     我の名は、クロコダイル。

スネーク  ク、クロコダイル?

声     そう。イグアナ博士によって生み出された、爬虫類帝国最強の戦士だああ!

トカゲ   キャー――――――!

ヤモリ   俺がいるから、大丈夫だよ。

タートル  くそ…一足遅かったか。

スネーク  おい、クロコダイル。イグアナ博士は死んだ。これからは、爬虫類帝国最高司令官である、私の命令に従ってもらおうか。

声     ククク…ハハハ…ハーッハッハッハッハッ!

トカゲ   キャー――――――!

ヤモリ   安心して、絶対、俺が守るから。

カメレオン な、何がおかしい。

声     そんなことは関係ない。イグアナ博士が残した意思は、人類の滅亡ただ一つ。我はその意思に従い、全人類を抹殺するのみだ。

タートル  そ、そんな。

声     まずは、この街の人間どもから始末するとするか。

スネーク  待て。いいか、よく聞け。貴様が眠っている三十年の間…

トカゲ   キャー――――――!

ヤモリ   俺を信じて。一生そばにいる。

トカゲ   キャー――――――!

ヤモリ   心から、愛してるよ。

スネーク  あーもう、うるっせえなテメエらはよお!!


  大きなうなり声を残して、シルエットが消える。


スネーク  くそ…追いかけるぞ!


  音楽アップ。

  一同退場。

  転換。地球防衛軍基地。

  チョウジ、入場。一人、一同の帰りを待っている。

  音楽アウト。

  奏、ハルオ、トーマス、明日香、ガロン長官の五人、談笑しながら入場。

  手には、大量のぬいぐるみを抱えている。


奏     ただいまー。

チョウジ  ……。

ハルオ   おいチョウジ。今のゲームセンターって、すげえことになってるぞ。

トーマス  チョウジも来ればよかったのに。

明日香   ガロン長官、UFOキャッチャーうまいんですね。

ガロン   腕が使えないからな。こう、肘で…

チョウジ  奏。…お前に聞きたいことがある。

奏     え?

ハルオ   何だよ、真面目な顔して。

チョウジ  何で、嘘をついた。

トーマス  嘘?

チョウジ  お前、俺に言ったよな。人類と爬虫類帝国の闘いは、俺達が眠っている間、ずっと今みたいなゆるい感じだったって。全部、嘘じゃないか。人類も爬虫類も、半分以上死んだんだろう。

明日香   な、何それ。

チョウジ  なあ、奏。どうして、俺たちが眠っている間のことを何も教えてくれないんだ。一体、この三十年間に何があったんだ。全部、教えてくれよ。

奏     だから、別に何も…

チョウジ  何もないわけないだろ!いい加減にしろよ。

奏     …知らなくていいんだよ。

チョウジ  はあ?

奏     知らなくったっていい、意味のない話だ。

チョウジ  何だよ、それ。俺達、仲間じゃないのかよ!


  音楽。

  オリジナルバラード「例えば雨のバス停のように」(作曲:平牧仁 作詞:モラル)。

  明日香、マイクを持って来て歌い出す。


明日香   ♪例えば雨の バス停のように…

チョウジ  変な歌を歌うな!


  音楽アウト。


チョウジ  じゃあ、安土ジョーのこともか。

トーマス  …え?

チョウジ  俺たちの仲間だった、安土ジョー。あいつは、戦死したんだろ。

ハルオ   な、何だって。

チョウジ  あいつが地球のために闘って死んだことも、知らなくていいことだって言うのか。

ガロン   チョウジ。奏はな…

チョウジ  ガロン長官は黙っていてください。奏、どうなんだ。

奏     …ジョーは、間違ってたんだよ。

チョウジ  は?

奏     ジョーは、間違っていた。爬虫類帝国を、滅ぼすことしか考えてなかった。だから、死んだ。

チョウジ  …お前!


  チョウジ、奏につかみかかる。一同、それを止める。


明日香   ちょっと、チョウジ。

ハルオ   やめろ。

トーマス  落ち着いてください。

チョウジ  何だよ、それ。それでも仲間かよ。そんな言葉で簡単に切り捨てて、自分はヘラヘラして。

奏     ……。

チョウジ  俺には、ジョーの気持ちが痛いほど分かる。あいつは地球のために、心を鬼にして戦ったんだ。どうせお前はその間、ただ逃げ回ってただけだろ。もっと他に、言うことないのかよ。

奏     ……。

チョウジ  もういい。昆虫戦士コンチュウジャーなんて…やめてやる。

ハルオ   お、おい。

明日香   ちょっと。

トーマス  何言ってるんですか。

チョウジ  だって、そうだろ。こんな嘘つきと一緒に戦えるかよ。もう、コンチュウジャーでも爬虫類帝国でもない。今日から俺の所属は…漆黒の闇から生まれし邪眼、「万里チョウジとエターナル・ドラゴンズ」だ!


微妙な空気が流れる。


チョウジ  何だ、この微妙な空気は!

ガロン   センスがないな。

チョウジ  うるせえ大根野郎!…いや、俺だけじゃない。他のみんなだって、お前と一緒になんか戦えないさ。俺達、四人で「万里チョウジとエターナル・ドラゴンズZ」だ。そうだろ、エターナル・ドラゴンズ!?

三人    ……。

チョウジ  …ああ、そうかよ。結局、俺一人かよ。畜生!


  チョウジ、退場。


トーマス  チョウジ。

明日香   待ってよ。

ハルオ   どこ行くんだよ。


  ハルオ、トーマス、明日香、追いかけて退場。


ガロン   …いいのか。あいつらに、本当のことを話してやらなくて。

奏     未来のために…残さない方がいい歴史でしょう。

ガロン   私は、あの四人なら、それくらい簡単に乗り越えてくれると思うがな。それにお前も…いい加減、辛いんじゃないか?一人で全部、背負い込むのは。

奏     別に、俺は…


  突如、エマージェンシーのSE。

  続いて、ナレーションが流れる。


ナレ    緊急事態発生。爬虫類帝国最強の怪人、クロコダイルが活動を開始。繰り返す。爬虫類帝国最強の怪人、クロコダイルが活動を開始。

奏     ああもう、こんな時に。しかも、最強の怪人だって。…ああ、やだなあ。


  奏、しぶしぶ退場しようとする。


ガロン   行くのか、一人でも。

奏     まあ…決めたことですからね。ずっと、昔に。


  奏、退場。


ガロン   …全く。アイツも、相当な頑固者だな。


  恐怖の音楽。

  転換。ガロン長官、退場。

  逃げ惑う一般人。

  やがてゆっくりと、最強怪人クロコダイル入場。

  めちゃくちゃマッチョである。

  クロコダイル、しばし筋肉をアピール。からの、筋肉的な一芸。


一般人   わ、わーっ!


  一般人達、蜘蛛の子を散らすように逃げて退場。

  奏、入場。


奏     そこまでだ。クロコダイルってのはお前か。

クロコ   いかにも。我の名は、最強怪人クロコダイル。


  クロコダイル、威嚇するように大きく手を広げる。

  グルルルルル、という大きなうなり声。

  奏、その雰囲気にビビる。


奏     な、なるほどなるほど。いや、しかし大きいね。どうやったらそんな身体になるのか、教えてよ。

クロコ   フンッ!


  クロコダイル、大振りのパンチ。


奏     うおっ。


  奏、パンチをかわす。ものすごい風圧で、あうるすぽっとのキャラのフクロウが書かれた看板が、舞台上を飛んでいく。


奏     な、何て風圧だ。


クロコダイル、威嚇するように大きく手を広げる。

  グルルルルル、という大きなうなり声。


奏     駄目だ。こいつ、話が通じないー!


  音楽あおる。

奏、逃げるように退場。

  クロコダイル、追いかけて退場。

  転換。舞台、ホテルの一室。

  舞台上に、おじさんと女子高生。

  エロティックな音楽。


おじさん  リナちゃん さやちゃん…だっけ。いくつ?

女子高生  んー?十六歳。

おじさん  じゅ、十六歳かあ。いいなあ、十六歳…キ、キ、キッスしようか。


  おじさん、キスしようとする。

  チョウジ、入場。悪そうなサングラスをかけている。

  音楽アウト。


チョウジ  おじさーん。何やってんの。

おじさん  え…えっ!

チョウジ  駄目じゃない、オイタしちゃ。相手は、十六歳だよ。

おじさん  さ、さては君たち、グルだな!何と、卑劣な真似を。


  チョウジ、おじさんの財布を奪う。


おじさん  あ、おい。

チョウジ  (中を見て)へー。なかなか、いいとこ勤めてるじゃない。

おじさん  た、頼む。会社や家族に知られるわけにはいかないんだ。

チョウジ  分かってるって。


  チョウジ、財布から一万円札を数枚抜いて、おじさんに返す。


チョウジ  ま、これで痛み分けってことで。

女子高生  おじさん、短い夢は素敵だった?

おじさん  く…くそおおおお!


  おじさん、退場。

  チョウジ、一万円札を一枚、女子高生に渡す。


チョウジ  ホラ、お前の取り分だ。

女子高生  ありがと。フフフ、まさかコンチュウジャーのあなたが、こんな悪いことするなんてね。


  悲劇的な音楽。


チョウジ  …え…。

女子高生  一度修羅の道に堕ちた者は、二度と帰っては来れぬのじゃ。

チョウジ  貴様…女子高生じゃないな!

女子高生  フヘヘへ…ワシは、地獄の老婆じゃ。お主のことを、地獄で待っておるぞ。フヘヘへ!


  女子高生、老婆になって、高笑いしながら「輪廻転生、輪廻転生・・・」と退場。


チョウジ  …俺は、もう昆虫戦士コンチュウジャーじゃないんだ。漆黒の闇から生まれし邪眼、「万里チョウジとエターナル・ドラゴンズ」なんだ。


トーマス、ハルオ、明日香入場。

音楽アウト。


ハルオ   だから、それダサいって。

チョウジ  み、みんな。

トーマス  何をやっているんですか。

チョウジ  うるさいな、放っておいてくれよ。

明日香   ねえ、戻らなくていいの。

チョウジ  何で戻らなきゃいけないんだよ。大体、爬虫類帝国とまともに闘わないんだったら、俺たちの力なんて必要ないだろ。奏が全部、一人で勝手にやればいいさ。そうだろ、みんな!?


  ガロン長官、入場。


ガロン   こんなところにいたか。

トーマス  ガロン長官。

ガロン   万里チョウジ。多安島ハルオ。エッフェル・トーマス。桜田〝ファミリア〟明日香。爬虫類帝国最強の怪人、クロコダイルが復活した。

ハルオ   な、何だって。

明日香   最強の怪人…クロコダイル。

チョウジ  だから、何ですか。

ガロン   …何?

チョウジ  俺はもう、あなたの部下じゃないんだ。放っておいてください。

ハルオ   おい、チョウジ。

トーマス  ガロン長官に向かって。

ガロン   …そんなに、コンチュウジャーが嫌になったか。

チョウジ  だって。奏もガロン長官も、何一つ、本当のことを俺たちに教えてくれないじゃないですか。そんな人たちのことなんて、信じられませんよ。

ガロン   …我々はかつて、話し合って決めた。これは、我々だけの秘密にしよう。いつか諸君が目覚めても、何も知らせず、全てを一からやり直そうと。

チョウジ  は?

ガロン   しかし、それは間違いだったのかもしれないな。仲間であればこそ、この三十年のことを知り、共に背負ってもらうべきなのかもしれない。

ハルオ   何の話だよ。

ガロン   いいだろう。話そうじゃないか。なぜ…私の両腕がこうなったか。

四人    ズコーッ!

明日香   ちょっと、ガロン長官。

チョウジ  俺達が知りたいのは、そんなことじゃ…

ガロン   いいから、話は最後まで聞け。…三十年前。人類と爬虫類帝国の、激しい戦いが始まった。人類、爬虫類共に多くの死者を出し、諸君が蛹になった後も、その戦いは激しさを増していった。


サイレンの音。続いて、あちこちから爆発音。

  過去の奏、ジョー、爬虫類帝国の怪人たち入場。

  奏は相変わらず、逃げ回っている。

  ジョー、鬼のような表情で、ライフルで爬虫類たちを殲滅していく。

  殲滅した後も、爬虫類の死体を撃ち続ける。


過去奏   ジョー。もう、死んでる。死んでるって。


  過去の奏、ジョーを羽交い絞めにする。


ガロン   安土ジョーは、自分が生まれ育った街を全て破壊された。元から血気盛んな男ではあったが、そこからは、何かに憑りつかれたようになってな。爬虫類帝国の怪人たちを、皆殺しにするようになった。

過去奏   いい加減にしろよ。お前の気持ちも分かるけど…

ジョー   分かる?お前に、俺の気持ちが?

過去奏   あ…いや…。

ジョー   明日は、隣の地区に攻め込む。一日も早く…あいつらを全滅させてやる。


  ジョー、退場。


ガロン   あの頃のジョーは、私にさえ口を出させないほど殺気立っていた。私の中にも…あいつが爬虫類帝国を全滅させてくれるのならば、それでもいいのではないかという気持ちがあったのかもしれない。しかし、時羽奏は違った。

過去奏   ガロン長官。俺は、今のあいつは、間違っていると思います。でも、俺には、あいつの苦しみを理解することが出来ない。だけど、やっぱり、間違ってると思うんです。俺は…俺は、どうしたら。

ガロン   奏は、一人苦しんでいた。ジョーの気持ちを理解出来ず、しかし放っておく事も出来ず、ただもがいていた。

過去奏   ジョー。ジョー。


  過去奏、ジョーを追いかけて退場。


ガロン   それからもジョーは爬虫類帝国の怪人を倒し続け、奏はどうすることも出来ず、ただその後を追った。そして、もはや戦いは引き返しようのないところまで来て…ついに安土ジョーとスネーク将軍が、直接戦う時が来たのだ。


  音楽。

  ジョーとスネーク将軍、入場。

  激しいバトル。

  いずれも引かぬ、一進一退の攻防。

  しかしジョー、ついにスネーク将軍を追い詰める。


ジョー   終わりだ、スネーク将軍。

スネーク  くっ…。


  引き金を引こうとするジョー。

  過去の奏、入場。

  音楽アウト。


過去奏   待てっ!

ジョー   …奏。

過去奏   やめろ、二人とも。

ジョー   黙ってろ。これで、全部終わる。

過去奏   だから、やめろって。

スネーク  フン。安土ジョーよ、よくぞ生身の身体で私を追い詰めた。さあ、さっさと止めを刺すがいい。

ジョー   ああ、言われなくてもそうするさ。


  ジョー、再び引き金に手をかける。


過去奏   ジョー!


  過去奏、ジョーに飛びついて、ライフルを奪おうとする。


ジョー   おい、放せ!

過去奏   嫌だ!

ジョー   放せって言ってんだろ!


  ライフルを奪い合う二人。

  過去の奏の身体に銃口が向いた状態で、引き金が引かれる。

  ドン、という鈍い音。

  過去の奏、ゆっくりと倒れ込む。


ジョー   なっ…!

過去奏   うっ…。

ジョー   おい…おい!

過去奏   あいたたた…。

ジョー   お前…何やってるんだよ。いっつもいっつも、敵のことなんて助けて。

過去奏   いやー…そうじゃなくってさあ…。

ジョー   はあ?

過去奏   本当はさ…ジョーのこと、助けたかったんだよね。

ジョー   …え…。

過去奏   俺…お前の立場には立てないけどさ…苦しそうじゃん、いっつも。

ジョー   ……。

過去奏   やられて、やり返して、やられて。…もうさ、そういうの、いいじゃん。お前、体も健康だし、性格も男らしいし。普通に多分、モテるじゃん。生きて、そういうの、楽しまないと。

ジョー   何、言ってんだよ。

過去奏   あー…これから心配だなあ、ジョーのこと。ジョーは、まだまだ弱いから。

ジョー   俺が、弱い?

過去奏   バカだって笑われてもいい、臆病だって軽蔑されてもいい。それで闘わなくて済むなら、全然オッケーじゃん。それが…強いってことじゃん。

ジョー   奏…。

過去奏   まあ、偉そうなこと言って、俺、出来なかったんだけど。だから、ジョーに頼む。強くなって。誰よりも、強くなって。他人を幸せにして、自分も幸せにして、それで全部オッケーみたいな…そんな人になって。

ジョー   おい…奏、奏!

過去奏   じゃあ…頼んだ。


  過去の奏の身体から、力が抜ける。

ひゅー、という風が寂しく吹き荒れるSE。

  しばし固まっているジョー。

  やがて、過去の奏を担いで、歩き出す。


スネーク  おい…安土ジョー。


  しかしジョー、振り返ることなく、そのまま退場。

  風のSE、あおる。スネーク将軍退場。

  風のSEアウト。


ガロン   こうして、時羽奏は、この世を去った。

チョウジ  え…。

ハルオ   お、おい。何言ってるんだよ。

明日香   そうですよ。だって。

トーマス  時羽奏は、我々と一緒に。

ガロン   それから安土ジョーは、姿をくらませた。やむを得ず我々は、ジョー抜きで爬虫類帝国と闘い続けた。そして一カ月後…ジョーは姿を変えて、再び現れたのだ。

チョウジ  ま、まさか…。


  音楽。

  安土ジョー、入場。過去の奏が着ていたヤゴのコスチュームに、身を包んでいる。


ジョー   待たせたな、爬虫類帝国の諸君。


  スネーク将軍、入場。


スネーク  安土、ジョー…?何だ、その格好は。

ジョー   安土ジョーは死んだ。今日から俺が、二代目時羽奏だ。

スネーク  はあ?

ジョー   二代目でも、時羽奏でも。まあ、呼びやすい方で呼んでくれ。

スネーク  よく分からんが…貴様も、コンチュウジャーだったのか。

ジョー   ああ、これ?この格好?これは、ただのコスプレ。

スネーク  ズコーッ!貴様、頭でも打ったのか?そんな奴じゃなかっただろう。

ジョー   まあまあ、まあまあ。いつまでも下らないことやってないで、諸君もこの地球で仕事を見つけようじゃないか。言ってみろ、何になりたい。消防士か、ガラス職人か。


音楽アップ。過去の人々、退場。

  音楽、少し下がって。


ガロン   今、お前たちが時羽奏と呼んでいる男。それは、かつてお前たちが安土ジョーと呼んでいた男。


  現在の時羽奏、クロコダイル入場。逃げる時羽奏と、追いかけるクロコダイル。


奏     あーもう、しつこいな!


  奏とクロコダイル、そのまま追いかけ合いながら退場。


ガロン   安土ジョーは、血で血を洗う戦いの象徴であった自分を、歴史から葬った。そして、平和の象徴である時羽奏として、長い年月をかけ、少しずつ、少しずつ、この世界を変えていったのだ。

トーマス  そ、そんな。

ハルオ   あいつが、安土ジョー…。

ガロン   そして私も、右手を大根に、左手を大根おろしに改造した。

明日香   それは、どうでもいいですけど。

ガロン   諸君。これが、どういうことかわかるか。あの男はこの三十年間、生身の人間の身体で一人、爬虫類帝国に立ち向かってきたのだ。一切の武器も、拳さえも使わず。

チョウジ  だ、だけど。俺たちコンチュウジャーは…

ガロン   万里チョウジ。多安島ハルオ。エッフェル・トーマス。桜田〝ファミリア〟明日香。もう一度言う。爬虫類帝国最強の怪人、クロコダイルが復活した。行け。安土ジョーの…いや、二代目・時羽奏の元に。

  

音楽アップ。転換。一同退場。

  逃げる奏と追いかけるクロコダイル、入場。

  音楽アウト。

  奏、走りつかれて倒れ込む。


奏    ちょっと、もう駄目。ストップ、ストップ。


  クロコダイル、威嚇するように大きく手を広げる。

  グルルルルル、という大きなうなり声。


奏    あー、くっそー。


  と、スネーク将軍入場。


スネーク  待て。

奏     …スネーク将軍?

スネーク  クロコダイルよ。闘うなら、私が相手だ。

奏     はあ?え、何で。

スネーク  イグアナ博士が残した意思。爬虫類帝国最高司令官として、私が始末する。

奏     いや、でも。コイツ、マジで強いぞ。

スネーク  知っているさ。だが、たとえ刺し違えても、止めてみせよう。

奏     お、おい。


  カメレオン少佐、タートル軍曹、トカゲ参謀、ヤモリ男爵入場。


カメレオン ま、待ってください。

スネーク  最高幹部の諸君。この闘いが終わったら、それぞれ自分の好きな様に生き給え。

タートル  そんな。

トカゲ   発言の撤回を要求します。

ヤモリ   スネーク将軍。

スネーク  時羽奏。喜べ、貴様らの勝ちだ。爬虫類帝国は、ここに終わる。

奏     ふ、ふざけんなよ。こんな終わり方があるか。

スネーク  今だから、正直に言おう。初代の時羽奏が貫き、二代目の貴様が受け継いだ意思…嫌いではなかったぞ。

奏     おい。待てよ。


  スネーク、臨戦態勢。

  クロコダイル、威嚇するように大きく手を広げる。

  グルルルルル、という大きなうなり声。


スネーク  覚悟しろ、クロコダイル。

奏     待て、待ってくれ!


  と、チョウジの声。


チョウジ  そこまでだ!

奏     …え?


  チョウジ、トーマス、ハルオ、明日香入場。


奏     チョウジ、みんな…。

チョウジ  話は全部、ガロン長官から聞いた。

奏     …そっか。

チョウジ  何で、最初から全部話してくれなかったんだよ。俺達、仲間だろ。

奏     …ごめん。


  チョウジ、奏の頬を殴る。ゴツッという鈍い音。


奏     ……。


チョウジ、奏の頬を殴る。ゴツッという鈍い音。


奏     ……。


チョウジ、奏の頬を殴る。ゴツッという鈍い音。


奏     もういいだろ!普通、一発だろ。

チョウジ  これで、恨みっこなしだ。安土ジョー…いや、時羽奏。

奏     …チョウジ。

チョウジ  と、いうわけで。万里チョウジ!


  ポーズ。シャキーン、というSE。


トーマス  エッフェル・トーマス!


  ポーズ。シャキーン、というSE。


ハルオ   多安島ハルオ!


  ポーズ。シャキーン、というSE。


明日香   桜田〝ファミリア〟明日香!


  ポーズ。シャキーン、というSE。


奏     時羽奏!


  ポーズ。シャキーン、というSE。


チョウジ  五人揃って、昆虫戦士!

五人    コーン、チュウジャー!


  全員で、ださいポーズ。

  音楽。


スネーク  貴様ら…。

チョウジ  さあ、アイツを就職させるぞ。


  音楽あおる。

  クロコダイルに向かって行く一同。


クロコ   フンッ!


  クロコダイル、コンチュウジャーに大振りのパンチ。よける一同。


一同    うわっ!

トーマス  私にお任せを。必殺、システムエンジニア!


トーマス、大きく「システムエンジニア」と書かれたボードを持ってくる。


トーマス  プログラミングの技術を身に着けてみませんか?これからの時代…

クロコ   フンッ!


  クロコダイル、コンチュウジャーに大振りのパンチ。よける一同。


一同    うわっ!

明日香   私に任せて。必殺、タクシー運転手!


明日香、大きく「タクシー運転手」と書かれたボードを持ってくる。


明日香   終電を逃した人が狙い目よ。家が遠い人だと…

クロコ   フンッ!


  クロコダイル、コンチュウジャーに大振りのパンチ。よける一同。


一同    うわっ!

ハルオ   俺に任せろ。必殺、レンタル彼氏!


  ハルオ、大きく「レンタル彼氏」と書かれたボードを持ってくる。


ハルオ   マッチョな男性が好きな女性は数多い。彼女たちのレンタル彼氏になって…

クロコ   フンッ!


  クロコダイル、コンチュウジャーに大振りのパンチ。よける一同。


一同    うわっ!


  クロコダイル、大きなうなり声。


クロコ   俺が信じるのは、筋肉の力のみだああああー!


  音楽アウト。


ハルオ   こいつ…話、通じねー!

奏     だろ!?もう、やばいんだって。

トーマス  くそ、打つ手なしか。

チョウジ  いや…打つ手はある。

明日香   え、何。

チョウジ  こういうタイプはな、ちゃんと力でねじ伏せないと駄目なんだ。

ハルオ   おい、チョウジ。コンチュウジャーの100倍パワーは使わないって約束じゃ…

チョウジ  そうじゃない。…おい、クロコダイル。俺達と、綱引きで勝負だ!

一同    …はあ?

チョウジ  俺達は、コンチュウジャーの力は使わない。お前なら、余裕で勝てるはずだよな。

クロコ   ハッハッハッ。当たり前だ。何人相手でも構わないぞ。

チョウジ  よし、言ったな。


  綱が運ばれてくる。


チョウジ  さあみんな、この綱を持ってくれ。

トーマス  ちょっと、チョウジ。

明日香   それこそ、勝てるわけないじゃん。

奏     いや。俺達は、五人で一つ。…チョウジを、信じよう。

ハルオ   奏…。

チョウジ  ありがとう。…クロコダイル。お前が勝ったら、この地球を好きにして構わない。その代わり、俺達が勝ったら、大人しくこの地球で働くんだ。

クロコ   いいだろう。

チョウジ  じゃあ、行くぞ。よーい、スタート!


  綱引きが始まる。しかし、余裕のクロコダイル。


ハルオ   (必死に引きながら)おいおいおい。

トーマス  (必死に引きながら)全然、駄目じゃないですか。

明日香   (必死に引きながら)何で、綱引きなんて。

チョウジ  (必死に引きながら)一人一人の力は弱くても…多くの力が集まることで…何だって出来るんだ。あんな、筋肉だけの怪人なんかに、俺達は絶対に負けない。そうだろ、みんな!?さあ、声出して!オーエス、オーエス…

四人    オーエス、オーエス…

ヤモリ   う、う、うおおおおお!

タートル  ヤモリ男爵?

ヤモリ   お、俺も闘うぞっ!ヤモーリー!


  ヤモリ男爵、綱引きに参戦する。


トカゲ   わ、私も。トカーゲー!

カメレオン 俺もだ。カメレオーン!

タートル  お、俺だって!タートルッ!


  トカゲ参謀、カメレオン少佐、タートル軍曹も参戦。


一同    オーエス、オーエス、オーエス、オーエス…

カメレオン ちょっと、スネーク将軍。何ぼーっと見てるんですか。

スネーク  わ、私はいいよ。コンチュウジャーは、敵だし。

カメレオン いつまで下らない意地張ってるんですか!ホラ、早く。

スネーク  あーもう、分かったよ!


  スネーク将軍、参戦。


一同    オーエス、オーエス、オーエス、オーエス…


  ガロン長官、入場。


ガロン   私も参戦するぞ!どりゃあああ!


  ガロン長官、普通に両手にはめていた大根と大根おろしを投げ捨てる。


一同   えええー!


  ガロン長官、参戦。


オーエス、オーエス、オーエス、オーエス…

クロコ  ハハハハハ。その人数が集まって、その程度か。フンッ!


  クロコダイル、強めに引く。一気に、綱がクロコダイルの方に行く。


ハルオ   くそ…これでも駄目なのかよ。

トーマス  ちょっと、強すぎますね。

明日香   これ、駄目なんじゃない?

チョウジ  諦めるな!…思い出せ。俺達には、仲間がいるだろう。この闘いの中で出会った、沢山の仲間が!


  金山力、入場。


金山    俺にも、手伝わせてください。

ハルオ   金山電機社長、金山力!

金山    うおおおおおっ!


  金山力、参戦。

  コモ美、入場。


コモ美   私も、手伝います!

チョウジ  コモ美さん!

コモ美   はああああっ!


  コモ美、参戦。

  大五郎、入場。


大五郎   俺も引くぞおおー!

カメレオン 大五郎さん!

大五郎   てえええええいっ!


  大五郎、参戦。

  かれん、入場。


かれん   私も、参加させてください!

スネーク  か、かれんさああん!

かれん   とおおおおう!


  かれん、参戦。


チョウジ  よし…全員で引くぞっ!

一同    オーエス、オーエス、オーエス、オーエス…


  いい勝負になってくる。しかし、それでもまだ、クロコダイルの方が若干強い。


クロコ   フン、これで全員か。悪いが、それでもまだ、俺の方が強いようだなあ。

チョウジ  く…くそお。もうちょっとだけ…もうちょっとだけ、力があれば…!


  と、謎の声が響き渡る。


謎A    おいおいおい。

謎B    俺達を、忘れてるんじゃないか…ですね。

トカゲ   こ、この声は。

ヤモリ   まさか…


  かっこいい音楽。

  卓球対決の時にいた謎の二人組、かっこよく入場。


明日香   た…卓球対決の時にいた…

トーマス  謎の二人組!

ハルオ   はああ?

謎A    会っちまったな、全国大会の前に。

謎B    相変わらず、しけたツラしやがって…ですね。

カメレオン 誰なんだよ。

謎A    俺達が来たからには、もう大丈夫だ。

謎B    いっちょ、やってやりますか…ですね。


  謎の男AB、参戦。


チョウジ  よしみんな、もう一息だ。最後の力を振り絞れ。行くぞ!

一同    オーエス、オーエス、オーエス、オーエス…

クロコ   うっ…ぐっ…。


  音楽アップ。


クロコ   ぐ…ぐあああああーっ!


  爆発音。ついにコンチュウジャー達、勝利する。


チョウジ  や…やった。やったー!


  舞台上の一同、ランダムに手を取り合って喜び合う。

  やがて、金山力、コモ美、大五郎、かれん、謎の男AB、綱引きの綱で列車を作り、クロコダイルとともに退場していく。

  ナレーションが流れる。


ナレ    こうしてクロコダイルは、機関車になりました。毎日、数多くの人を運ぶ彼をモデルにした映画、「機関車クロコダイル」が大ヒットするのは、もう少し先のお話…。


  銀河鉄道に手を振る、残った一同。


チョウジ  誰だって、一人じゃ何も出来ない。みんな、誰かの力が必要なんだ。そうだろ、みんな!?


  一同、拍手。

  スネーク将軍、我に返る。


スネーク  …フン。下らん。


  スネーク将軍、退場しようとする。

  爬虫類帝国の幹部たちも、後に続こうとする。


奏     おい、スネーク将軍。

スネーク  …何だ。

奏     いや。こないだの答え…まだ、聞いてなかったと思ってさ。


  音楽。


奏     俺は…もう正直、疲れたな。充分だろ。もう。だから…終わりにしないか。

チョウジ  奏…。

スネーク  ……。


  スネーク将軍、右手を出す。


カメレオン おおお…。

タートル  ついに、この時が…。

トカゲ   地球人と、爬虫類の…。

ヤモリ   闘いが、終わる。


  奏、スネークの右手に、何か書類を握らせる。

  音楽アウト。


スネーク  何だ、これは。

奏     契約書。マムシ運送の。

スネーク  …は?

奏     ここにサインしたら、契約成立だから。明日から、働いて。

スネーク  ちょ、ちょっと待て。マムシ運送って、元爬虫類帝国のマムシがやってる、あのマムシ運送か。

奏     うん、そうだけど。

スネーク  ふざけるな。私に、かつて部下だった男の下で働けと言うのか。

奏     いや、まあ、うん。

スネーク  嫌だ。絶対に嫌だ。

カメレオン いや、スネーク将軍。社会って、そういうものですよ。

タートル  もう、年功序列の時代じゃありませんから。

トカゲ   この、不景気ですし。

ヤモリ   仕事があるだけ、ありがたいと思わないと。


  爬虫類帝国の幹部たち、スネーク将軍に説教。


スネーク  うるさい、うるさーい!…ああもう…分かった。分かったよ。これからは、心を入れ替えて…


  かれん、入場。


かれん   スネーク将軍ー。

スネーク  か、かれんさん?

かれん   これ、渡すの忘れてました。


  かれん、「必勝」と書かれたハチマキを、スネーク将軍に渡す。


スネーク  …これは?

かれん   スネーク将軍の夢が叶うようにって、作ったんです。大変だと思いますけど、諦めずに、頑張ってくださいね。夢がある人って…私、とても素敵だと思います。

スネーク  …かれんさん。


  大五郎、入場。


大五郎   おい、かれん。もう、店開ける時間だぞ。

かれん   あ、はーい。


  大五郎とかれん、退場。

  スネーク将軍、ハチマキを巻いて。


スネーク  フッフッフッ。…時羽奏。前言撤回だ。我々爬虫類帝国は、これからも地球人と闘い続ける。

一同    はあ?

明日香   ちょっと、何でそうなるのよ。

スネーク  私の命が続く限り、貴様らとの闘いは終わらない。

タートル  スネーク将軍…。

トーマス  あんな上司を持つと、大変ですね。

カメレオン 分かって貰えて、嬉しいよ。

スネーク  フフフ、覚悟しておくがいい。今に地球を、我が物にしてくれよう。…行くぞ!フフフ…ハハハ…

爬虫類   (仕方なく)ハーッハッハッハッハッ!ハーッハッハッハッハッ!


  スネーク将軍、カメレオン少佐、タートル軍曹、トカゲ参謀、ヤモリ男爵、退場。


奏     まあ…そう簡単には終わらない、か。

チョウジ  でも…いつかきっと、終わらせてみせるさ。俺たちの力で。

ハルオ   じゃあ、締めるか。ヒーローらしく、カッコ良く。

トーマス  …ですね。

明日香   うん。

チョウジ  ああ。

トーマス  (正面を向いて)この過酷な戦いは、まだまだ続いていく。

ハルオ   (正面を向いて)だけど、俺達コンチュウジャーは諦めねえ。

明日香   (正面を向いて)次回、昆虫戦士コンチュウジャー2。

奏     (正面を向いて)「夏だ、祭りだ、コンチュウジャーだ!(仮)」。


  謎の敵が、シルエットで浮かび上がる。


声      フフフ…コンチュウジャー、貴様らを全滅させてやる!

チョウジ  (正面を向いて)俺たちの激闘を…。


  ガロン長官、全員にかぶるセンターに立つ。


ガロン   絶対、観に来てくれよなッ!

五人    ズコーッ!


  五人、ズッコケる。

音楽。

  暗転。

  明転。

  カーテンコールから、ライブ。


                        

              おわり


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