まずは武器を捨て、有り金を出せ
レンジャーであるユリィの直感は外れておらず、ウィルたちの後をつけていたのは、五人組の冒険者であった。
五人組の冒険者は二十歳すぎくらいの戦士と盗賊、ウィルたちと同じくらいの年頃の戦士二人と野伏といった構成だ。
彼らの依頼人はゴバイルだが、冒険者ギルドを通した依頼ではない。ゴバイル個人からウィルたちを殺すように頼まれたのだ。
冒険者の中にはならず者に近い者もいる。殺人を請け負うところから、この五人組も冒険者を名乗っているだけのならず者らなのだろう。
五人にゴバイルが提示した報酬はさしたる金額ではないが、始末する相手はカサードの町で食料品を買い込むだけの資金を有している。加えて、始末する相手の内の四人は女。殺す前に楽しめるという特典がつく。
ウィルが口にした「足が鈍くなる帰路を狙う知恵もない」以前に、
「アニキ。あの小柄で胸のデカイ女。オレに回してくんねえか」
「バカ言うな。オマエらの番は、オレらが楽しんだ後だ」
特典を早く楽しむことにのみにとらわれ、とにかく襲いかかるタイミングしか考えられなくなっているのだ。
当然、休憩を取るように見せかけ、森の中に入っていったウィルたちをチャンスとしか考えていないが、さすがにすぐに襲いかかるようなマネはしない。
木陰に隠れて機会をうかがう五人の前で、泉の側で荷馬車を止めたウィルたちは泉の水で喉を潤し、
「あの、覆面女がいないな」
盗賊風の男がつぶやくとおり、五人いた獲物の中でユリィの姿がいつの間にか見えなくなっていた。
「あの女はレンジャーだ。森の中を調べでもしているんだろ。それより、早くあのガキを弓で仕留めろ。そしたら、一気に襲いかかるぞ」
リーダーである戦士風の男の指示にうなずき、野伏の少年は弓に矢をつがえ、ウィルに狙いを定めようとした矢先、
「取るに足らぬ偽りよ! 数多の刃を成せ!」
頭上より響いたユリィの声に反応し、振り仰いだ五人の眼前に出現した数十本の魔剣が、三人の少年に何本も突き刺さり、二人の男の両足に深手を与える。
立木に登っていたユリィは、全身、穴だらけの三つの死体と、両足がズタズタに斬り裂かれてもがく二人の男の側に降り立ち、
「うまくいったぞ。来てくれ」
囮となっていたウィルたちを呼ぶ。
森の中に入るや、その地形を見て取ったユリィは、ウィルたちに泉の側で休むフリをするように指示すると、自身はその泉の辺りをうかがうのに適した立木に登り、追跡者たちを待ち受けていたのだ。
狙いどおり、眼下に来た獲物の内、三人を仕留め、二人を生捕りにした凄惨な成果に、セラは「ひっ」と息を飲むが、
「さて。まずは武器を捨て、有り金を出せ」
ユリィはもがき苦しむ二人の男の足に軽く蹴りを入れ、武器と財布を差し出させる。
無論、その間にウィル、リタ、サリアが三つの死体から武器と財布と荷物を回収したのは言うまでもない。




