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そういうことなんですよ

「つまり、依頼というより、我がギルドの信用を利用したい。そういうことなんですね?」


「はい、そういうことなんですよ」


 依頼人の意図を察したベルリナの確認に、依頼人たるサリアは可愛いが陰のある顔に意味ありげな笑みを浮かべてうなずく。


 ミューゼなどの村々の壊滅による不安から、スウェアの町は現在、食料品の不足・高騰が起きているが、それはあくまでスウェアの町での現象でしかない。


 当たり前の話だが、別の町では普通に食料品が売られいる。いや、収穫期を迎えている今、普段より安く買えるだろう。スウェアの町の食糧の価格を思えば、別の町に足を伸ばす費用が上乗せになっても、充分に安上がりだ。


 そこでサリアはコラードらなどの知り合いに声をかけ、別の町までの買い出しを提案し、出資を募るつもりなのだが、この際にネックとなるのは発起人たるサリアの信用だ。


 壊滅した開拓の村の出身で元は流民、スウェアの町に住み着いて日の浅いサリアの信用はないも同然。出資を募っても持ち逃げを疑われて、金など集まるわけがない。


 だが、それも冒険者ギルドに指名依頼を出せば、問題はクリアされる。


 冒険者ギルドに依頼を出せば、仲介料が発生する。しかし、代わりに冒険者ギルドに正式に依頼して承認された仕事、買い出しということになる。


 つまり、仲介料を払うことで、サリアは冒険者ギルドの信用を流用しようとしているのである。


 無論、冒険者ギルドに正式に依頼したところで、冒険者ギルドが保証人になるわけではない。しかし、出資を募る相手は素人である。冒険者ギルドが請け負っている買い出しという宣伝文句だけで安心してしまうだろう。


 何より、食べ物が買いたくても買えずに困っているのだから、ちょっと疑いを晴らしさえすれば食いつくのは目に見えている。


 ちなみに、冒険者ギルドの信用を流用するなら、指名依頼でなくても、普通に依頼すればいいだけだが、その場合、買い出しの際の護衛の仕事がウィルたちに必ず回ると限らなくなる。


 冒険者ギルドのカウンターでサリアというより、その詐欺的な手法に対応しているベルリナとしては、さすがに少し考え込まずにはいられない。


 ちゃんと仲介料と報酬を用意し、しかも依頼の内容は単なる護衛。裏面に思惑があろうとも、冒険者ギルドが損失を被るものではない。


 個人的には感心できないが、法やギルドの規約に反していない以上、受理するより他ない。それにウィルらにはミューゼの村の件から色々と借りがある。


「……わかりました。こちらの指名依頼を正式に引き受けさせてもらいますね。この度は当ギルドをご利用いただきありがとうございました」


 営業スマイルを浮かべて頭を下げるベルリナ。


 頭を上げたベルリナは新規の依頼を処理しようと、一端、奥に引っ込もうとしたが、


「ところで、ベルさん。この依頼のこと、ギルドの人間以外に伝わるものなのかな?」


 ウィルに呼び止められたベルリナは足を止め、その言葉の意図を察して難しい表情を浮かべる。


「……私のような立場の者なら、どのような依頼があったかは、だいたい把握していますね。ですが、指名依頼となると貼り出されませんので、当事者以外の冒険者の目に止まることはありませんね。まして、役人であっても、関わりのないことなので、知ることはないでしょうね。意図的に伝えようとしない限りは」


 少し考えをまとめてから、ベルリナは慎重に答える。


 ウィルたちを襲うなら、町中より町の外の方が手を出し易い。この指名依頼では、スウェアの町から離れて別の町に行くので、その道中は襲うのに好都合だ。


 冒険者ギルドの幹部であるグライスは、この指名依頼のことを知ることができる立場にあるが、安易に手を出して来る相手ではない。この指名依頼を撒き餌とするなら、狙うは思慮の浅いゴバイルの方だ。


 しかし、せっかくの撒き餌もゴバイルが知らねば、釣りようがない。


 グライスがゴバイルに報せるということはないだろう。逆に、ゴバイルが軽挙に走らぬよう、グライスは撒き餌が伝わらぬようにする公算が高い。


 だが、ウィルらの意図を実現する手立てがないわけではなく、ベルリナはそっと嘆息してから、


「……この指名依頼は、今の食料品の高騰を解決するのに有効な方法ですね。ですから、役場に報告しておく必要があると、私個人は思いますね」




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