正解であり、不正解でありますね
種類も豊富で量も充分な上、味もそれなりな夕食を終えた後、夕食の片付けをすませ、新たに十四人分の寝床を用意した頃には、就寝時刻を迎えて二十人の子供は皆、眠りに落ちて寝息を立てていた。
新たに用意された寝床で横になる十人の子供も、心身、共に疲れ切っていたところに満腹になり、訳のわからぬ状況にも関わらず深い眠りに落ちている。
心身が疲れているのはウィル、セラ、ユリィ、リタも同じであるが、まぶたを重く感じながらも不安な心中がそれを支え、子供たちが寝静まった後、眠気をこらえて四人は食堂でフォケナスと向かい合っていた。
ちなみに食堂の片隅には黒い子犬がおり、夕食の残りを頬張っている。
聞きたいこと、説明してもらいたいことが山ほどあり、この場でウィルたちはそれらをぶつけたが、フォケナスは逆に創世神話について問い返してきた。
平民の中には創世神話をあいまいにしか知らない者がけっこういるが、ウィルたち四人は伊達に教会で育っていない。
教会というより、太陽神とか地母神とか信仰する神によって、その神を主軸とした内容であるものの、基本的には光と闇、属性関係なく創世神話は似たり寄ったりである。
だから、ウィル、ユリィ、リタが知る創世神話と、セラの知る創世神話は細部が少し異なるぐらいの違いしかなく、それは魔獣神の教団に伝わる創世神話も同じはずなのたが、
「神々の大戦の折、我が神は太陽神と敵対しました」
フォケナスがあまりに当たり前なことを言い出したので、ウィルたちは何が言いたいのかわからず、不審げな顔となる。
だが、ウィルたちの表情と反応に構わず、フォケナスはセラの胸元を見据え、
「しかし、我が神は地母神とは敵対しませんでした」
「なぜ、そうなるのですかっ!」
自らの信仰に関わることゆえ、セラが声を荒らげるのも当然の反応と言える。
そんな予想どおりの反応に頓着せず、
「そもそも神々の大戦が起きた原因が何か、ご存じですか」
「世界創造における意見の対立」
「正解であり、不正解でありますね」
ウィルの答えにそんなあいまいな判定はしたフォケナスは、
「では、人間を作ったのは誰ですか?」
「神々に決まっています」
「正解であり、不正解でありますね、それも」
セラの答え、いや、この世界の常識に対してもあいまいな判定をする。
「つまり、魔獣神の教団は魔獣のみならず、世界も人間も魔獣神が創造したと主張したいのか?」
「いえいえ、我が神にそんな技術と知識はありません。世界を創ったのは、創造神。我が神はあくまでその手伝いをしたにすぎません」
ユリィの発した皮肉を受け流し、創世神話の内容の一部をあっさりと認める。
「つまり、何が言いたいの?」
「世界を創ったのが神々としても、神々は人間を創っていない。その認識を持ってもらいたいだけですよ」
焦れたリタの問いに対して、今度は創世神話の内容の一部を否定する。
「そんなバカな話がありますかっ! では、我々はどうやって生まれたというのですかっ!」
「世界によって生み出されたと言えるでしょう」
再び声を荒らげるセラのみならず、この答えの意味をウィルたちも理解できずにいるところに、フォケナスはあっさりと世界の、何よりも神々の秘密を口にした。
「わかり易く言いますと、神々が創った世界には、無数の生命が自然と誕生したのです。それは逆に言えば、意図的に生み出された生命は一つないということになります。つまり、この世界にあふれる生命の根源は、全て自然発生したということですよ。人間も例外ではなくね」




