表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/168

魔力よ! 眠りをもたらせ!

「ガアアアッ!!!!!」


「槍先に宿れ、炎よ」


「ハッ」


「……炎の精霊サラマンダーよ! 我が召喚に応じよ!」


「……ガッ!!!!!」


 マンティコアたちの歓喜の咆哮が途中で驚きのそれに変わったのも無理はないだろう。


 ウィルの手にする槍の穂先が炎に包まれても、マンティコアは動じなかった。粗末な槍が多少、強化されたところで大した脅威ではないからだ。


 ユリィの放った矢もマンティコアの一頭に当たりはしたが、その分厚い皮に阻まれて深く刺さることはなかった。


 ウィルの槍先を包む炎から、リタが召喚したサラマンダーが一体ならば、マンティコアたちも慌てることも驚くこともなかっただろう。


 しかし、リタが召喚したサラマンダー、宙に浮く一メートルほどのトカゲの形を取る炎の数は、自己ベストを更新する二十五体。マンティコアを焼き尽くすのに充分な数であった。


 無意味な咆哮で後手に回ったマンティコアらは、慌てて精神を集中させ、


「魔力よ! 眠りをもたらせ! スリープ!」


「魔力よ! 見えざる縄となって縛れ! バインド!」


 一頭が眠りをもたらす魔法を一同に使い、四頭が動きを封じる魔法をウィル、セラ、ユリィ、リタに用いる。


 魔法がもたらす眠気に、子供たちと荷馬二頭とセラは屈してしまい、眠りに落ちてしまうが、ウィル、ユリィ、リタは精神力を高めてマンティコアの術をはねのける。


 その直後、体を縛り上げようとする見えざる縄が、寝息を立てるセラを拘束するも、ウィル、ユリィ、リタはこの術にも抵抗して、見えざる縄を払いのける。


「ほう」


 フォケナスが感心したように唸るのも当然だろう。


 マンティコアの魔力は並の魔術師よりずっと高い。そのマンティコアの術を二度に渡って抵抗し、はねのけたのだ。並の精神力でできることではなく、三人の対魔力がそれなりの域にあるのがうかがえる。


 もっとも、それなりの域にあるのは三人だけで、子供と荷馬車が抵抗できないのは仕方ないとしても、セラがあっさりと眠らされ、しかも動きを封じられた点には、ウィル、ユリィ、リタとしては舌打ちしたい思いだ。


 スリープだけなら小突けば起こせるが、バインドにかかったならその術を解かなければならない。


 ウィルは手にする得物に宿した炎を消し、


「槍先に宿れ、打ち消す理よ」


 改めて槍の穂先に込めたのは、魔を打ち消す力。


 今の槍先で触れれば、セラの眠りと拘束、かけられた魔法を解くことができるが、あくまで触れればであり、今のウィルにそのような余裕はなかった。


 現在、五頭のマンティコアは二十五体のサラマンダーが吐く炎、圧倒的な火力に打たれ、阻まれて、せっかくの人肉に近づくことができないどころか、自身がこんがりと焼かれようとしている。


 だが、接近を阻んでいることは、マンティコアを無力化したことと同義ではない。


「魔力よ! 破壊の炎となれ! ファイア・ボール!」


「魔力よ! 稲妻となりて走れ! ライトニング!」


 マンティコアらはウィルたち、特にサラマンダーを召喚したリタを狙って魔法を放つ。


「クリソー」


 しかし、ユリィは生み出した偽りの魔剣を、あろうことか弓で射放ち、マンティコアの放ったファイア・ボール、火球に命中させて宙空で爆発・四散させる。


 さらにマンティコアの放ったライトニング、電撃もウィルの槍に突かれて消失する。


 五頭のマンティコアの魔法は、ことごとくウィルの槍、ユリィの魔剣と弓で迎撃され、届かぬ一方、リタの、サラマンダーの炎はマンティコアらに届いているのだ。


 マンティコアの、強靭な魔獣の生命力を焼き尽くすのに少し時間がかかったが、全身が焼けただれたマンティコアが一頭、倒れると、後はさしたる間を置かず、残る四頭も次々と動かなくなっていった。


 肉の焼け焦げた異臭を放ちながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ