今からでも他の仕事を探してはどうだ
「ふん。こんな仕事を引き受けるとは、物好きもいたもんだ」
悪徳官吏として名高い、ゴバイルの吐き捨てるようなセリフは、せっかくのグライスの名演技を台無しするものであった。
冒険者ギルドで処理を終えた件の依頼票を手にしたウィル、セラ、ユリィ、リタがその足でスウェアの町の役場の窓口に行くと、
「準備があるんで明日の朝、また来てください」
この事務的な対応と指示に従い、四人は装備と荷物を整え、翌日の朝に役場を再訪した。
すると、二頭引きの荷馬車の上に乗せられた十人の子供と、口ひげをたくわえる、肥え太った尊大そうな四十歳くらいの役人、ゴバイルの姿が、共に役場の裏手にあった。
繰り返せば、孤児に肩入れする腕の立つ冒険者の存在は、孤児の救済や保護ではなく、販売と出荷を目論む人間にとって邪魔な存在でしかない。
ただでさえ村の生活は貧しく苦しい。彼らに、耳目や手足を失った子供を養う余裕はない。ましてや、ゴブリンによって壊滅的な被害を受けた村なのだ。
耳目や手足のみならず、親を失った子供は全員、荷台の上にいる。いや、耳目や手足、親も失わずとも、捨てられた子供さえ、荷台にいる始末だ。
荷台の子供の中にはウィルたちの見覚えのある、ミューゼの村の生き残りもいる。彼らはセラの御業で傷を治してもらっているが、それ以外の子供は、おざなりな治療を受けているだけの状態である。もちろん、それはセラが後で治すとしても、その処置と、何より荷台に詰めて置かれている対応が、ゴバイルの孤児への扱いと態度を雄弁に物語っていた。
ともあれ、孤児たちを物のように、ウィルたちを邪魔者といった風にゴバイルが見ているだけでも、ベルリナが心配が杞憂でなかったことがわかるというのに、
「しかし、聞けばキサマたち、何百というゴブリンを倒したそうではないか。そのような猛者に相応しい仕事とは思えんな。どうだ? この依頼の違約金を求めるようなマネもせんから、今からでも他の仕事を探してはどうだ」
グライスと違い、次々とボロを出す。
尊大に振る舞っているのは、あるいは小心さを隠すためと勘繰ってしまうほど、ゴバイルの言葉や態度の端々からは不安の色が見て取れた。
ともあれ、グライスと違い、ゴバイルが腕の立つ冒険者がいては邪魔になると暗に述べてくれ、ウィル、ユリィ、リタはようやく確信を得ることができた。
孤児の救済の裏に後ろ暗いことがあることを。
そして、その目論見は、自分たちの実力次第で粉砕できることを。




