どうして冒険者になられたんですか?
ぐうううっ
腹の虫が鳴いたのは何度目のことか。
最初は赤面していたセラも、今では三人の仲間のように平気な顔となっている。
セラが、ウィル、ユリィ、リタと共に冒険者ギルドを出たのは、昼を少し回った頃合だ。
ウィルたちの申し出に応じた後、モーグの村の依頼票を手にもう一度、受付に行き、ゴブリン退治の仕事を請け負った後、時間も時間なので、冒険者ギルド併設の酒場で昼食を取ってから出発、とはならなかった。
「今、モーグの村に向かえば、着くのは中途半端な時間だ。自然、村で一泊して、ゴブリン退治は明日の朝からになる。村が夕飯と朝飯を出してくれ、さらに今、昼を抜いた分、夕飯を多めに食えば、三食を浮かせられる」
ウィルのいじましい意図に、ユリィ、リタ、そしてセラも応じて、四人は水を口にしただけで、モーグの村へと伸びる道を進んでいた。
孤児院出身のセラは空腹に慣れている。が、それは腹が空いても平気なことを意味せず、
「……皆さんはどうやって知り合われたのですか?」
気になったのもあるが、雑談で気を紛らわそうとする。
「どう知り合ったと問われれば、親がいなくて泣いていたら、通りがかった神父様に拾われた。で、神父様の教会というか孤児院に、先に居たり後で来たりって感じか。順序の違いはあれど、互いにガキの頃から、神父様の元で育った知り合いだ」
「奇遇ですね。私も教会というか孤児院で育たんですよ」
ウィルの返答、そのあまりの偶然に、目を丸くするセラ。
「しかし、私が言うのも変な話だが、なぜ、冒険者になったのだ? 言うまでもなく、危険だぞ?」
「冒険者になろうと思った時、危険な仕事と思い、迷いはしました。神への信仰を深める道に進みたかった気持ちは今でもあります。ただ、生臭い話で恐縮ですが、私が育った教会は貧しく、育ててもらった恩もありますから、冒険者のお仕事でお金が稼げたら、仕送りしようと考えたわけです」
「なるほど。うちを卒院した兄や姉たちから仕送りがあるが、神父様は『ありがたい』とか『助かります』と言っていたな。私たちも兄や姉たちにお礼の手紙を書いたものだ。無論、ただの便りにも返事は出していたがな」
「感謝してもらいたいわけではありませんが、教会の人たちに喜んでもらえたら、私としても幸いです」
自分の仕送りが喜んでもらえる光景を思い浮かべ、セラははにかんだ笑みを浮かべる。
そして、自分のことを聞かれたからというわけではないが、会話の流れ的に、
「それで皆さんはどうして冒険者になられたんですか?」
「……就職先でうまくいかなかったから……」
異口同音。同じ孤児院の出身者たちは異なる孤児院の出身者に、さらに生臭い理由を告げた。