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うちの村はもう、おしまいですね

 ゴブリン・イグナイテッドたちの待ち伏せを噛み破った後は、村人を襲うゴブリンたちを順次、討ち、追い払って、あっさりと片がついた。


 新たに五人の死者は出たが、負傷者はセラが治していった。


 ゴブリン・イグナイテッドを含めて倒したゴブリンの数が数である。もうゴブリンに襲撃を行うだけの数は残っていないと思われたが、ミューゼの村の生き残りは三日後、スウェアの町から十人ほどの兵士を率いた騎士の姿を見るまで、不安な時に耐え続けねばならなかった。


 救援の騎士や兵士たちが来れば、ウィルたちの残る仕事は彼らに現状を伝えて、後の事は任せるだけである。報酬の一部である荷馬車に

ゴブリンから得た戦利品を乗せ、ウィルたちはミューゼの村から立ち去り、すぐに戻って来た。


 何しろ、数百匹分の戦利品である。とても一度に全てを乗せきれるものではない。加えて、ミューゼの村からの追加報酬には、村長宅の家具一式もある。


 そうして何度か往復している内に、ウィルたちは現地の酷い状況を自然と耳にした。


 今回の騒動で現地にいた冒険者の死者は、思いの他に少なく、十人に満たない。ただ、それは危険に気づくと逃げ出す冒険者が多かっただけで、村に留まって生き残ったのは、ウィルたち四人だけである。


 ウィル、セラ、ユリィ、リタ以外で村に留まって戦った冒険者は全滅。冒険者すらゴブリンの大群の前に殺されたのだから、この一帯の村は一時的にゴブリンの支配下に置かれ、多くの村人が殺されたが、ミューゼ以外の村にも生き残りはいないわけではない。


 もっとも、ミューゼ以外の村で五体満足で保護された者は一人としておらず、ゴブリンにいたぶられながら生き永らえらえたり、足を折られて生きた保存食として残されていたというものであった。


 ミューゼの村を除いて、どの村も生存者は一割から二割程度。ミューゼの村にしても、生存者は半数に満たず、その内の三分の一が耳なり足なりの肉体一部を失っている。


 健常者が一人もいない村はもちろん、ミューゼの村とて復興は絶望的な状況であった。


「端的に言って、うちの村はもう、おしまいですね」


 ウィル、セラ、ユリィ、リタと共に、お金を出し合って借り受けた小さな借家の狭い台所で、サリアは暗い笑みを浮かべながら故郷に見切りをつけていた。


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