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はい、トドメ

 槍と曲刀では、間合いは前者に軍配が上がる。


 しかし、先制攻撃を振るって来たのは、ゴブリン・イグナイテッドの方であった。


 ゴブリン・イグナイテッドは他のゴブリンと違い、左手から一本の長い触手が伸びているからだ。

「おっと」


 伸びて迫る触手に、強力なマヒ毒があるのを知るウィルは、手にする槍で打ち払うが、そのために足が止まってしまう。


 槍の間合いの外からゴブリン・イグナイテッドは間断なく触手を繰り出し、ウィルはそれを槍で打ち払うだけの、防戦一方の展開となる。


 上位個体とはいえ、ゴブリンの本質は変わらない。不利になれば仲間を見捨てて逃げ出し、有利と見ればかさにかかって相手をいたぶるように戦う。 


 相手の攻撃が届かず、全て打ち払わられているものの、自分の攻撃のみが届いているのだ。ゴブリン・イグナイテッドが自己の優位を錯覚するのも無理はないだろう。


 ウィルは機敏に動くスピード型の戦士である。それが足を止め、不利な間合いで防戦に徹しているのだ。当然、そこには理由と狙いがあり、ほどなくゴブリン・イグナイテッドの触手が力なく垂れて動かなくなる。


 ウィルの槍の穂先には、今、雷の力が宿っている。触れれば痺れるその槍先に何度も打ち払われたのだ。皮肉にも、マヒ毒があるゴブリン・イグナイテッドの触手の方がマヒしてしまったのである。


 否、痺れたのは触手だけではなく、左半身にも及び、左足を引きずるように動かすゴブリン・イグナイテッドは、踏み込んで来たウィルから間合いを詰めることも離れることもできず、曲刀の届かぬ間合いから繰り出される槍を、曲刀で打ち払うだけの防戦状態、いや、ジリ貧状態となる。


 槍の穂先には雷の力が宿っているのだ。それと打ち合えば、曲刀を通して雷の力と接することになり、ほどなくゴブリン・イグナイテッドは右手も痺れて曲刀を取り落とす。


「はい、トドメ」


 マトモに動けないゴブリン・イグナイテッドは喉を突かれ、さらに穂先からほとばしる電撃に焼かれながら絶命した。


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