真の理由はなんだ?
ウィル、ユリィ、リタに限らず、三人が育った孤児院の者にとっては、大ネズミなど小石の一、二個で仕留められる、素早く動くだけの的でしかない。
この日、カイムとメリルは一匹も仕留められなかったのに対して、ウィルたちはさらに四匹の大ネズミに、小石を打ち込み、槍先で貫いた。
「隅から隅まで歩き回ったから、これでもう、大ネズミはいないと思う」
計八匹。数からして多い方であり、ウィルの報告にコラードは大きくうなずく。
時刻は夕方前。コラードは労働者たちと共に、六人の冒険者、正確にはウィルたちの成果に耳を傾けていた。
作業の遅れは相変わらずだが、その原因が取り除かれたことに、コラードも機嫌を良くし、労働者たちも安堵の表情を浮かべている。
「しかし、当たり外れがあるにしても、こうまで非道とは思わなかったよ。ホント、あんたらが最初に受けてたなら、余計な追加募集をして余計な金を使わずにすんだし、作業がこんなに遅れずにすんだんだがな」
外れと言われたカイムとメリルは、反論できるだけの成果を挙げていないので、こみ上げる怒りをぐっとこらえる。
「いや、オレらも所詮は新米だからな。狙いどおりうまくいくかわからなかったから、今はほっとしているよ」
ウィルたちは地元の人間、コラードたちとの親交が目的ゆえ、愛想よく談笑するが、手柄を後から来たウィルたちにかっさらわれたカイムたちにとっては、この場は針のむしろ以外の何物でもなく、
「……依頼のとおり、大ネズミの駆除は終わった。ここにサインをもらえないか」
一刻も早く立ち去りたいカイムが依頼票を差し出すと、コラードは不機嫌そうに舌打ちしつつも、依頼票
に完了のサインをする。
依頼票にサインをもらったカイムとメリルが、あいさつもせずに足早に立ち去って行ったので、コラードはますます不機嫌になり、労働者たちも顔をしかめる。
「ところで、明日もここに来たいんだが、いいかな?」
「どうしてだ?」
ウィルの申し出にコラードがいぶかしげな顔となるのは当然だろう。
大ネズミの駆除は終わったのだ。カイムとメリルがとっとといなくなったように、ウィルたちも後は立ち去るだけのはずなのだが、
「なに、もう大丈夫と思うが、万が一、大ネズミが一、二匹でも残っていたら、オレらの評判は悪くなる。明日からはサービスでいいし、こちらも赤字は覚悟ってヤツだ。目先の利益よりきっちりと仕事をしたって評価の方が大事ってのは、表向きな理由だ」
「ほほう。なら、真の理由はなんだ?」
「サービスの分、あんたらにオレたちの仕事ぶりを方々でほめてもらいたいんだ。良い評判が立てば、指名の依頼が来るようになったり、冒険者として名が売れるきっかけになるかも知れん。無名の新人としては、上にいくためにきちんと下積みをしようと考えたわけだ」
「なるほど。ガキのくせにしっかりしているというか、目端が効くというか」
コラードは苦笑しながら大いに納得するが、冒険者として大成する気のないウィルたちの真の理由は別にある。
赤字覚悟のサービスでコラードたちに上手をしておけば、後々、頼み事がしやすくなる。だが、初めからその下心をオープンにしてサービスすると、コラードたちが後でどんな頼み事をされるんだと考え、警戒されてしまう。
警戒されずにサービスをして、うまく貸しを作るために、ウィルは新米冒険者らしい理由を口にして、コラードたちを納得させたのだ。
コラードのしっかりしていて目端が効くという評価は間違っていない。ただし、コラードの想像以上に、しっかりしていて目端が効くというだけのことだっただけである。




