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ケガをさせる危険性があるなら、その場を見逃してもらっても良い

 一国の王宮の一室で二名の魔族に土下座されているウィルたちからすれば、即答できる内容ではないので、困惑するしかない状況であった。


 七人が集められた王宮の一室は、半魔族の魔王が最初に征服した国のものではなく、目下支配下に置かれつつある国のものである。


 ガンドの私怨から発した追跡は、その過程で離反した聖女との関わりが明らかとなると、こうして捕まった後もウィルたちは丁重な扱いを受けることができた。


 もっとも、離反した聖女との関係性に気づかねば、ミルフィーユはこれほど大がかりな捜索・手配を行わず、結果、ウィルたちは逃げ切ることができ、ガンドは地団駄を踏んで終わっただろうが。


 ウィルとベルリナ、ユリィとサリア、リタとセラという三組に分かれて逃げた六人の内、最初に捕まったのはリタとセラのペアであるが、彼女たちは捕縛というよりも投降したという方が正しい。


 仲間と離れ離れになった後、セラを連れたリタは南に逃げ、獣人族に、正確にはガヴェに匿ってもらった。


 ガヴェもウルフマンらも助けてもらったリタたちを突き放すことはなく、ほとぼりがさめるまで匿うつもりではあったのだ。

 しかし、グライスの報告書に目を通したミルフィーユが聖女と関係あるかもと考えると、彼女は獣人たちにも捜索の協力を求めたのだ。


 もし、ミルフィーユがただ捕まえろと命じたなら、ウルフマンらは恩人をただ匿っただろうが、


「客人として遇したいから、丁重な対応をして欲しい。力ずくで捕まえ、ケガをさせるのだけは絶対に避けてもらいたい。ケガをさせる危険性があるなら、その場を見逃してもらっても良い」


 離反した聖女を説得するために協力してもらわねばならないのだから当たり前の配慮なのだが、リタから聞いていた追われている理由を思えば、相反する要請と事情にウルフマンらが困惑したのも無理からぬことだろう。


 なぜ、追う側と追われる側で食い違うのか。その疑問が腹芸の苦手なウルフマンらに不自然な態度を取らせてしまい、ここからリタとセラの居所が発覚した。


 この時、ミルフィーユが高圧的に二人の身柄を求めたなら、ウルフマンらもリタらを密かに逃がすなりしただろう。が、ミルフィーユは単身、聖女の妹の元に行き、自らの口で事情を話したので、リタとセラはおとなしく身柄を預けることを選び、それに二人というよりもリタの身を心配したガヴェが同行した。


 リタとセラのペアに続き、捕まったのがウィルとベルリナのペアである。


 このペアは追っ手の耳目がユリィらの方に集まったおかげもあり、当面は追っ手に追われずにすんだどころか、そもそもウィルもベルリナも自分たちに追っ手が差し向けられていたことさえも気づいていなかった。


 さすがに荷馬車に乗せたままの荷物を取りに行くようなマネはせず、手持ちの現金で町や村を渡り歩きつつ、ウィルはユリィらの行方を探したが、合流できないまま日が過ぎていき、グライスらがユリィに返り討ちにあった少し後、ようやく自分たちに追っ手がかかっていることを、回ってきた手配書で知った。


 ベルリナを連れて逃げたウィルだが、こうも大々的に追われては逃げ切れるものではない。ユリィのように森や山などに逃げ込もうとしても、迷ってしまうのは目に見えているからだ。


 それでもウィル一人なら切り抜けられたかも知れないが、ベルリナを庇いながらなど無理な話。二人は最終的に逃走を断念し、セラ、リタ、ガヴェと再会して、その数日後、ユリィとサリアも同じ場所に連れて来られ、ようやく一同は合流を果たすことができたのである。


 ちなみにサリアなど負傷していた者は、当然、とっくにセラの御業で治してもらっている。


 半魔族の魔王の腹心の一人たる魔族に頭を下げられているウィルたちだが、


「そちらの要望はわかった。それに応じるか、仲間と話し合いたいんだが、いいか?」




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