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もう一稼ぎする機会をフイにする必要がどこにある?

「……臭いから、ゴブリンとコボルトだな。数まではわからないが、少なくはないぞ」


 鼻と耳を小刻みに動かすガヴェが、ウィルたちにそう告げる。


 ウルフマンの視力、嗅覚、聴力は人間のそれより性能に優れる。


 オーガー、オーク、ゴブリン、コボルトの臭いをかぎ分けることもできるし、ウィルたちからすればハッキリとしない物音もガヴェの耳は拾うこともできる。


 ただし、それで多い少ないは判断できても、正確な数はさすがにわからない。


 鳴子によってゴブリンやコボルトの襲撃を知ったウィル、セラ、ユリィ、リタ、ガヴェは、相手から矢を射られたが、その時には五人とも近くの木に盾にしている。


 ゴブリンやコボルトからの第二射が放たれるが、第一射と同じく、五人が身を潜める木に当たるのみ。逆に、第二射の直後、矢が飛んで来た場所を狙い、ユリィとガヴェの放った矢が、夜闇の中にいるゴブリンなりコボルトなりに命中したらしく、二つの悲鳴が上がる。


 ゴブリンやコボルトの第三射も木で防ぎ、射ち返したユリィとガヴェの矢がまたも当たると、相手はまずはコボルトらが、次いでゴブリンらがウィルへと接近にせんと動く。


 コボルトは小柄なゴブリンより少し小さく、そして弱い犬頭の亜人種であるが、獣人族のドッグマンとはまったく違う種族である。


 基本的に強きに従わねば弱きが生きられぬ彼らの社会、ゴブリンにとってコボルトは奴隷も同然の存在であり、矢面に立たされる危険を拒む権利はコボルトにはない。拒めば、ゴブリンに痛めつけられ、時に殺される。


 ゆえに、この場にオークがいた場合、ゴブリンはその前に立たされることになっただろう。


 ただ、このヒエラルキーの中でオーガーは特殊な立ち位置にある。


 オーガーはコボルト、ゴブリン、そしてオークよりもずっと強い。ただ、オーク、ゴブリン、コボルトすらよりも知能は低い。単純で複雑な思考を持ち合わせていないオーガーは、食事を用意する限りはオークらにとって強力な用心棒となる。


 もっとも、充分な食事を用意できない場合、オーガーはオーク、ゴブリン、コボルトを食い殺す危険な用心棒となるが。


 六匹のゴブリンに命じられ、前を走らされる十数匹のコボルトの内、二匹がユリィとガヴェの矢で倒されるが、たった二人の射手で全て射倒せる数ではない。


「槍先に宿れ、毒よ」


 迫り来るコボルトらに対して、槍を手にウィルが前に進み出る一方、リタと弓をおさめたユリィは短槍を構えてセラを守りながら後ろに下がる。


 弓をおさめたガヴェは半月刀を抜き放ち、ウィルの後に続こうとした足がすぐに止まる。


 ガヴェが歩み出ようとした時には、五匹のコボルトが倒れ、さらに地に倒れて動かなくなるコボルトが次々と出るが、ガヴェの見る限り、倒れたコボルトはどれもかすり傷しか負っていない。


 それはウィルの穂先に宿っている毒の力によるものだが、ガヴェにはそんなことはわからず、立ち尽くして見ている間に、コボルトらを蹴散らしたウィルがゴブリンらへと向かい、その槍先で二匹を引っかけて倒す。


 さらに二匹のゴブリンが毒殺されると、残る二匹のゴブリンは逃げ出し、ウィルは銀貨二枚を見す見す逃げるに任せる。


「いったい、何を……いや、その話は後だ。すぐにここから去るぞ」


 ガヴェが疑問を棚上げして、即時撤収を促すのは当然の判断だろう。


 焚き火を不審に思い、様子見に行かせたゴブリンとコボルトの一隊が蹴散らされたことは、逃げた二匹のゴブリンによって伝えられるのは目に見えている。そうなれば、蹴散らしたゴブリンやコボルトを大きく上回る戦力を派遣して来るのも目に見えているので、


「去る? 何でだ? 今夜、もう一稼ぎする機会をフイにする必要がどこにある?」



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