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あちらの町にいるということか

「あちらの町にいるということか」


 そのアンデッド・ナイトが戻って来たのとは異なる方向に長い首を向け、エンシェント・ドラゴンが標的の居場所を突き止めたのは、日も中天に差し掛かろうとする頃合だった。


 標的のいた町のすぐ近くに、滅びたばかりの町を見つけたエンシェント・ドラゴンは、死臭の漂う廃虚へと降り立った。


 矮小なる存在から退くという屈辱の極みを味わったエンシェント・ドラゴンは、その恥辱をすすぐことを強く誓ったが、スウェアの町にとって返して、滅ぼせばそれを果たせると考えるほど単細胞ではない。


 少し頭を働かせれば、標的が逃げている可能性くらいには気づく。それゆえ、十体のアンデッド・ナイトと数百のゾンビを生み出し、それを二手に分けて二つの町に攻めさせた。


 矮小なる存在とはいえ、自分を危ういところまで追い込んだ相手だ。アンデッドの群れくらい蹴散らしてのけるだろう。


 差し向けたアンデッドの群れが全滅した方が、標的のいる場所となると考え、その判断は間違っていない。仮に、スウェアとブランム、両方の町を滅ぼせた場合、どちらにもいないと判断し、滅亡した二つの町で発生したゾンビも加えた大群で、この辺りの町や村をことごとく攻め、標的を見つけるまで殺戮を繰り返す所存だったが、そこまでする必要はなさそうだ。


 寿命というもののないドラゴンだが、このエンシェント・ドラゴンは長々と棲み処を離れているわけにはいかない。


 業腹だが、自分を上回る力を持った矮小なる存在に堆肥の材料提供を求められている身だ。便意をもよおしたなら、即座に戻らねばならない。


 無論、戻って排便した後、この一帯に再び来ればいい、というのは甘い考えだ。

 その悠久に等しき経験から、矮小なる存在に時を与えるのは危険なのを知っている。信じ難いことに、矮小なる存在はいかなる強大な存在を相対しても、時をかければ対抗する術を用意してしまう。


 恥辱をすすぐのに時をかけすぎれば、矮小なる存在から痛烈な反撃を食らう恐れがある。経験上、それを知るエンシェント・ドラゴンは、次に便意をもよおした時が、恥辱をすすぐのを諦める時と考えている。


 アンデッド・ナイトには、攻めさせた町を滅ぼしたなら、一体は自分の元に戻るように命じてあり、その命令を果たしたのは一体のみ。


 命令を果たさぬまま、差し向けたアンデッドの群れの方が滅びたとおぼしき町、標的のいると思われる場所に自らと出向こうと、背中の翼を羽ばたかせようとした時には、わずかながらも遅きに逸した。


「はぁい、ドラゴンさん。ここらで暴れるのは止めてくんない」


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