表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/168

神の意に従い、汝の意を果たした

 魔獣神がフォケナスを伴い、神々の大戦に出かけた際、留守を任せたウィルたちが不測の事態に対処できるよう、一度きりではあるが、付近に棲むエンシェント・ドラゴンを使役できるよう、ワンワンマークを授けておいた。


 不測の事態といっても、もし、カヴィら子供が高熱を発したとしても、セラの御業では病気には対処できないが、エリクサーを煎じて飲ませれば、たいていの病は治すことができる。他にも賢者の石など、たいていのことはウィルらで対処できる環境は整ってはいる。


 しかし、それでもどうにもならぬ事態が起きたならば、ウィルらには外に助けを求めるしかない。その際、最大の問題は、フォケナスの教会の立地、四方を魔獣の棲息地に囲まれている点だ。


 それにウィルたちが助けを求める先は、生まれ育った孤児院しかないが、仮に魔獣の棲息地を突破した後も何日も歩かねばならないくらいの距離がある。


 魔獣神はその点も加味し、ワンワンマークを授けたのである。エンシェント・ドラゴンならば魔獣の棲息地を軽く飛び越え、さらに孤児院までひとっ飛びですむ。


 だが、万が一の事態を想定しての対処は杞憂で終わり、魔獣神もフォケナスも何事もなく帰還したので、仲間と共に無事、スウェアの町へと生還を果たしたウィルの手には温泉まんじゅうのみならず、魔獣神もフォケナスも失念していたのか、ワンワンマークも残っており、それを今、行使したのだ。


 魔獣神の強制命令はエンシェント・ドラゴンとて逆らえるものではなく、その巨体は家々を踏み潰すのも構わずにウィルたちの側に降り立ち、その長い首はサイコ・ゴブリンへと伸びていく。


 突如、飛来したエンシェント・ドラゴンの敵意は明らか。サイコ・ゴブリンは見えざる手足を振るうが、その巨体は小揺るぎもせず、その堅い漆黒の鱗も傷すらつかない。


 レッサー・ドラゴンならば、見えざる手足で殴り倒すこともできたかも知れないが、エンシェント・ドラゴンはレッサー・ドラゴンなどと強さの次元が違う。


 見えざる手足の殴打を平然と受けつつ、


「ガアッ!」


 エンシェント・ドラゴンの吐いた黒き炎を浴び、サイコ・ドラゴンをあっさりとケシズミと化す。


 この一帯に甚大な被害をもたらしたサイコ・ゴブリンはこうして消え去り、これで問題はより深刻化してしまう。


 サイコ・ゴブリンを炎の吐息の一吹きで倒したエンシェント・ドラゴンは、上へと伸ばしていた長い首の向きを変えて下へと伸ばし、


「矮小なる存在よ。神の意に従い、汝の意を果たした。それゆえに、我は自由。ゆえに、矮小なる存在が我を使役した増上慢、それを罰するも自由なり」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ