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さて、逃げるぞ

 ゴブリンは頭の悪い亜人である。


 ゴブリン・イグナイテッドやゴブリン・ファントム、先天的に優れた個体は強いだけではなく、知能も並のゴブリンよりも高いが、後天的に強い力を得るサイコ・ゴブリンの知能は並のゴブリンと変わるところはない。


 出現率の低さゆえ、勝手にサイコ・ゴブリンも並のゴブリンより知能は高いと思い、その実態を想像もしていなかった人々は、スウェアの町に来襲したのを不意を突くためと、ウィルすら深読みしたのも無理はないだろう。


 実際は方角を勘違いして、スケルツの町とスウェアの町を間違っただけなのだが、この来襲がスウェアの町の人々の不意を突いたのには変わりはない。


「さて、逃げるぞ」


 サイコ・ゴブリンの予想外の来襲で、騒然となるスウェアの町の中、ウィルは淡々とセラとサリアに逃走を促す。


 自分はマトモに戦えず、ユリィとリタもいない。立ち向かう論外、逃げねばサイコ・ゴブリンに殺されだけだ。


 助っ人を頼んだ孤児院の者には迷惑をかけるが、状況が状況である。ウィルはブランムの町に行き、ユリィやリタと合流することにしたが、身ひとつ逃げ出すつもりはない。


 荷馬車にまとめてあった荷物を、ウィルとサリアは素早く積み込む。


 セラはサリアより暗い表情でうつむき、口数も少なくなったが、体調が悪いわけではない。促せば自分で動く。


 この騒ぎを聞きつけて、冒険者ギルドの制服のまま飛び出し、この場に駆けつけたベルリナとも合流し、四人が逃げようとした矢先、彼らの頭上にサイコ・ゴブリンが姿を見せる。


「……バカな。早すぎる」


 ウィルが愕然となるのも当然だろう。


 サイコ・ゴブリンは目につく建物を壊し、目につく人間を殺しながら進むゆえ、ウィルは自分たちの所に来るまでにまだ時間があると踏んでいた。


 しかし、今回のサイコ・ゴブリンは破壊や殺戮をそこそこに、夜空をいつもよりずっと早く巡っていた。


 実のところ、スウェアの町とスケルツの町を間違えたサイコ・ゴブリンは、眼下の光景に見覚えがあることに首を傾げ、見えざる手足を振るうのをひかえるほど戸惑っているだけなのだが、ウィルの方はそう取らなかった。


 手傷を負わせた自分たちを探していると勘違いしてしまい、


「ワンワンマークにおいて命じる! ポチよ、サイコ・ゴブリンを倒せ!」


 ウィルの声に応じ、その右手の甲に犬の絵が浮き出て消える。


 そして、スウェアの町の上空は新たなる客を迎えた。


 漆黒の鱗を持つエンシェント・ドラゴンを。



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