表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/168

これではどうにもならん

 カサードの町は壊滅、あるいは焼失した。


 サイコ・ゴブリンに敗れ、無秩序に兵が逃走した際、いくつかのかがり火が倒れ、それが火災を引き起こしたのだ。


 サイコ・ゴブリンに追い回されていたハルバ伯爵らに消化活動を行う余裕などなく、かがり火を火元とする火災はカサードの町に燃え広がっていった。


 今は秋から冬に向かう、木枯らしが吹き、乾燥している季節というのも、災いした。あっという間に燃え広がった火の熱気は、サイコ・ゴブリンを夜明けを待たずに去らせたが、それだけの火勢、戦いと敗走で疲労したハルバ伯爵らに消化できるものではなかった。


 また、サイコ・ゴブリンから逃げ回る夜をすごし、逃げ癖がついていたカサードの町の住人らは、火を前に無秩序な避難行動を取り、ハルバ伯爵らの動きを阻害した。


 結局、火と煙によって、焼失したカサードの町の人口とハルバ伯爵の手勢は半減してしまった。


 当然、その半減したハルバ伯爵の手勢の中にも、カサードの町に転がる焼死体の中にも、ユリィやリタの姿はない。


 焼け出されたカサードの町の住人の対応でそのような暇はないと思いつつも、リタと共にユリィはスウェアの町に、借家に戻って荷物をまとめると、すぐにブランムの町に行き、そこで潜伏した。


 もちろん、スウェアの町に留まらず、ブランムの町に潜伏する理由、ハルバ伯爵に寝ろと命じられかねないので、しばらく姿を隠して様子を見る、と手短にウィルらに説明はしているが。


 ウィルとしてはユリィとリタに同行したかったが、自らの体調を思えば足手まといになりかねないし、セラの状態も放置できるものではない。何より、孤児院に手紙を送った以上、ウィルはそこに記した住所に留まらねばならない。


 さすがに状況が状況である。恋という盲目で守秘義務という条項が見えなくなっているベルリナのもたらす情報によれば、ハルバ伯爵はユリィの所在を探させている余裕などないであろうとのこと。


 何しろ、ユリィとブランムの町に潜伏した夜、何とか敗残兵と生き残ったカサードの町の住人をまとめたハルバ伯爵は、そこにサイコ・ゴブリンの襲来を受けてしまったのだ。


 それでも生き残ったハルバ伯爵は、


「これではどうにもならん。領地に戻って兵を連れて来る」


 生き残った供の者や兵を連れて去ると、呼び集められた兵らも戻って行き、サイコ・ゴブリンと火災で住む所を失った民らは途方に暮れた。


 もっとも、再び夜になればサイコ・ゴブリンの襲来があるかも知れないので、いつまでも途方に暮れているわけにもいかず、生き残ったカサードの町の住人、いや、元住人は行く当てがあるなしに関わらず、ゴブリンと火災で滅びた故郷より去った。


 その後、サイコ・ゴブリンは夜な夜なカサードの町の周辺の村々を襲い、滅ぼしていき、次はスケルツの町に来襲すると予想されていた。


 位置的にカサードの町の跡からブランムの町はけっこうな距離があり、スウェアの町に次いで近いのがスケルツの町なのだが、この予想は外れてしまう。


 何しろ、サイコ・ゴブリンはスウェアの町の上空に姿を見せたのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ