②
「余が天気予報士に?」
「あぁ、そうだ。お嬢ちゃんは可愛いし、どうせ任されるのは深夜枠だから好きにやっちゃっていいよ。」
番組名は「絶対命中!天気予報」になった。
インパクトはある、売り文句は『気象庁に喧嘩を売れ!魔法少女が天気を必ず的中させる!』だった。
魔法少女?
「失礼しまーす」
「おぉ出来たか。お嬢ちゃんにはこれを着てもらう」
「……スカートが短くないか? 」
フリルが大量に使われた、非常に可愛らしいドレスだ。
余は長らく黒衣のローブを着ていた。足など全く出していない。
嫌々着てみる……うわぁ、太ももまで丸出しではないか。
しかし鏡を見てみると可愛いというのも頷ける。
「魔法少女 きゅーてぃくるうぃっち☆ルミルミです。一人称は余ではいけません。ルミたんにしてください」
「お、おう……」
一緒に同居している男がやけに熱く語っている。
そういえばこやつの引き出しの中に大量の映像媒介があったが、どれもこのような服装のおなごが書かれていた。
いや、何だこの未来は。余とこの男がひたすらテレビで、その魔法少女とやらの映像を見続ける未来が見える。
「で、ルミさんにはこれから勉強してもらいます」
「べ、勉強?」
まさかこの未来の事か?
未来を見ると丸々三日、魔法少女とやらの映像を見続ける未来になっているのだが……。
い、いかん。回避せねば。
「しかし、仕事があるのだろう?余には構っている時間は……」
「有給を取りました。一週間。」
「い、一週間!?」
三日間の未来の先を見てみる。
魔法少女の映画、雑誌、そして魔法少女としての練習をしている余の姿が見える。
駄目だ、この未来は何らかの力で固定されておる。
回避は、回避は出来ないのか……!
■ ■ ■ ■ ■
それから十日後、本番の撮影が始まった。
深夜日曜日に五分だけ放送する小さな番組だが、最初はそれでいい。
いつか部下の目に留まる事を信じ……いや、この姿は見られたくないな……。
「はーいじゃあ本番行きまーす。ごーよん。さん。にー……」
カメラという機器を向けられる。
流石に三百年を超える年を重ねた身でも、こんなことになるとは思いもよらなかった。
そして番組が始まる。
「はぁーい、良い子の皆ぁ!はじめまして!きゅーてぃくるうぃっち、ルミルミだよ!ルミたんって言ってね!
ルミたんは魔法が使えるんだ!この世界の天気だってばっちり分かっちゃうんだから!
横浜市の水曜日の天気、キショウチョウは三十パーセントの雨って言ってるけど、そんな曖昧な表現、ルミたん許しません!
水曜日の天気は晴れです!小田原では五時から局地的に雨が降るけど、横浜ではぜーったいに降りません!」
こうして間違った魔法少女像を抱きながら、ルミたんの日本での生活が始まった。