秘密
口に出しては絶対言わない。これが俺たちのルールだった。
言ったら最後何かが終わるとか、心に重しが圧し掛かる理由があったわけではなく、二人で秘密を共有したいだけのかわいらしい理由だった。
しかしいつしか秘密にしていることも忘れて、ふと口にしてしまったのだ。
「***」
一言で、終わってしまうものがあるなんて思いもしなかった。
あの頃からあいつは口をきかず、おれもあいつに目を合わせなくなった。
もうあの秘密は俺たちの絆とはなりえない。
だけど引き裂く理由には十分すぎた。
あの時ルールなんてつくらなければ。
あの時俺が思わず言ってしまわなければ。
二人にとってなんでもない存在だったあの秘密が、いつしか強い絆になっていたんだと、今さら気付くなんて遅すぎる。
「***」
他人には通じない秘密なんだ。
だから言ったところでどうにかなるとも思わなかった。
だって本当に、なんでもないことだったんだ。