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第四話 紅白の巫女と紅色の妖怪主従

相変わらず独自設定注意です。あと今回いろいろ荒いかもしれません。

唐突に出現したレミリアは、普段のものと比較すると少し質素に見えないこともない、それでもやはり真っ赤な日傘を持って美鈴の背後に佇んでいた。

霊夢からは美鈴越しに翼だけが顔を覗かせているレミリアだが、その体に纏うオーラからしてその不機嫌さを物語っている。

美鈴もそれを背中に感じているのか、あわわわわと呟きながら、可哀想なくらい顔を青くしていた。


「美鈴」

「はいっ!」


レミリアが声をかける。と同時に、美鈴がバネのような動きで直立不動の姿勢に移行した。

わあこわい、と霊夢は他人事のように呟く。

思いも寄らないことの連続で、己の思考が未だ少し麻痺していることを霊夢は自覚していた。


「ねえ美鈴、いつから門番の仕事には主人の内心を想像して客に語ってやることが含まれるようになったのかしら?」

「いやそのこれはですねお嬢様」

「美鈴」

「はいっ!」


美鈴の回りをゆっくり歩きながら喋るレミリアに、美鈴はおろおろしながら弁解しようとしていた。

しかし、名前を呼ばれると跳ね返るように返事をして直立不動に戻るし、

その上緊張からか出てくるのは「いやあのこれはですねその」などの言葉ばかりで、中身のある発言が全く出来ていないようだった。

これはまともな弁解にはなりそうにないな、と霊夢は見ていた。

そもそも考えてみれば、一介の従者が「うちの主人は寂しがり屋ですから構ってあげて下さい」なんて発言をするのは確かに色々とまずい。

普通の主従に関する礼式とか作法とかの知識が殆ど無い霊夢にもそれぐらいのことは分かる。

ただ少し、レミリアが身内に向かってそういう事を咎めることは意外なことに感じられた。

その意外さは或いは、紅魔館の各員の、謎に包まれた関係に端を発しているのかもしれなかった。


「ねえ、美鈴」

「はいっ!」

「お前は――妖怪にしては少し、人間を特別にし過ぎるわ」

「……それは、どういう意味でしょうか?」

「里の人間が勝負に来たら相手の力と技量に合わせて手加減してあげたり、勝っても負けても必ず送り返してあげたり。それに魔理沙や霊夢を、あなたはよく眩しそうな顔をして見ている」

「それは――」

「美鈴。お前は――人間に、未練があるの?」


美鈴の前に立ち、美鈴の目を真っ直ぐに見据えて、レミリアは問う。

その瞳には少し、不安の色が混じっていた。


「……私は。紅美鈴は、その名を背負って生まれた時から妖怪ですよ」

「……そう。済まなかった。私の失言だな」

「いえ、私の至らなさが原因です。申し訳ありません」


微笑を浮かべて応える美鈴に、レミリアは痛ましいとでも言うような顔をして謝罪する。

それにもやはり美鈴は笑みを以て答え、そして霊夢は完全に蚊帳の外であった。

なんか二人で世界作ってるし帰ったほうがいいかなぁと思っていたりする。

そんな霊夢の様子に気づいたのは、レミリアが先だった。


「さて……ごめんなさい霊夢、見苦しいところを見せてしまったわね」


まるでそこで語りかけるのが既定事項だったかのような顔をして、レミリアは霊夢に声を掛けた。

その後ろでは突如現れた咲夜が美鈴を、耳たぶ掴んで館内に連行していっている。

レミリアに向き直って、構わないわよ、と霊夢は手をひらひらと振った。

「傘を返しに来てくれたのだったな」と言うレミリアに、「それと事情聴取ね」と霊夢は付け足す。

今ならレミリアもある程度素直に答えてくれるだろうという目算があった。

紅魔館の連中が、レミリアも含めて、今のような身内向けの顔を見せるのはひどく珍しいことだ。

紅霧異変の時にはパチュリーですらレミリアを「お嬢様」と呼んでいたほどである。

それほど明確に身内だけの時と部外者がいる場合の言動を分けている集団なのだ。本来は。


「事情聴取?」

「霧の湖の霧が吹っ飛んでた件よ。喧嘩すんなとは言えないけど、あれは何?」

「ああ、あれか……」


眉根を寄せて答えるレミリア。

その顔に、また面倒事の匂いがするなぁ、と霊夢は心中で嘆息した。


「フランがね……外になんて出たくない、って言うのよ。私とパチェと、咲夜と美鈴が居れば、それでいいんだって」

「あら。いいことじゃない。出したくないんでしょう、外に?」

「怒るわよ、分かってるくせに」

「……ああ、そういう。そうね、私にもあったわ。修行が嫌で嫌で、拗ねて「ご飯なんていらない!」って言って先代巫女おばあちゃん困らせたことが」

「おや、霊夢にもそんなことがあったのか。……でも、そうね、だいたいそういうことよ」


生まれてすぐ幽閉されて数百年経って、外に出たくないわけがないのだ。

愛する妹を不本意に数百年も幽閉して、外に出してやりたくないわけがないのだ。

それでも出してやることは出来ない。

少なくとも、今のフランドールが外に出るとなれば、レミリア達も、紫も、そして霊夢自身も止めざるを得ない。


「で、なんとか出られるようにしたいわけだ。お姉ちゃんとしては」

「茶化すな。取って食うぞ」

「わあこわい」


どちらともなく苦笑する。

霊夢が持ってきた傘を差し出すと、うむ、と頷いてレミリアが受け取った。

何に頷いたのか、敢えて聞くことはしなかった。そんなものは聞くまでもなかったからだ。

だからその代わりに、お節介な言葉を掛けた。


「私の出番がありそうなら、先に言いなさいよね。いきなり異変起こされても面倒だし」

「ふむ?」


レミリアは少し意外そうな顔をして、ならこれを渡しておこう、とポケットから手紙を差し出した。

なにその「自分から働こうとするなんて珍しいな」って顔は、と視線で語って、それから霊夢はその手紙を受け取る。

今は開けないでくれ、とレミリアは言った。

じゃあいつ開けるのよ、と霊夢が訊くと、何故か自信満々に、開けるべき時は自ずと分かる!とレミリアは胸を張っていた。

きっと何かの本辺りに影響されたに違いなかった。


ほどほどにね、私に面倒が掛からない程度に頑張んなさい、とだけ言って、霊夢は後ろを向いた。

背中から、「前向きに検討するわ」という声が聞こえて、霊夢は口角を上げる。

そのまま飛び立った霊夢は一度も振り向かずに、一路博麗神社へと帰っていった。

だから気づかなかったのだ。

レミリアが悲しそうなような申し訳ないような、そんな顔をして霊夢の背中を見つめていたことに。

※この作品、というか私の中では美鈴は元人間(武術家)です。

短編一本分くらいのドラマがあって妖怪になり、お嬢様に拾われました。

その話はいつか書くかもしれません。

ただ、PCとか持ち込めないとこに住み込み就職になりました。これの次すらいつになることか分かりません……。申し訳ありません。

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