ある意味チートだった聖女
以前から聖女ものを書いてみたかったのですが、ようやく形にすることができました。
すごい力を使ってバーン!みたいなチート能力も好きなのですが、努力する聖女って素敵だなって思っていたので…
私の朝は早い。
おじい様に連れられて、町はずれの小さな教会に行き、掃除をし、女神像に祈りをささげる。
その後教会の裏にある泉に行き、沐浴する。風が冷たい日も、雨が降る日も。
寒い時期はおじい様が火を焚いて冷えた体を温められるようにしてくださる。
それから家に帰り、朝食をすませたら、おばあ様と地下の書庫に行き、写本をする。
私には読めない、古代語で書かれている本を、意味も分からないまま書き写す。
午後からは敷地内にある庭の管理をする。
雑草を抜いたり、薬草に水をやったりしている。
くたくたになったところで、一日が終わる。
どうして田舎とはいえ貴族の娘である私がこんなことをするのか、年子の妹は普通に淑女教育を受けているのに自分はそうではないのか疑問に思うのだけれど、家族の誰に聞いても優しく微笑んで首を振るばかり。
教会に行くのを止めたい、と言えばその日はお休みにさせてくれるけれども次の日には「行った方がいいんじゃないか?」と優しく促され、自分もその方がいいような気がして教会に足を向けている。
古代語の本も、意味は分からないけれど同じ文字列が並んでいるのがわかったりすると嬉しく感じて。
そうやって、何年も過ごしていた。
ある年、お父様が妹のマリエッタを社交界デビューさせるとおっしゃった。
年子なので、私もデビューの年のはず。
けれど私の事については何も教えて下さらない。
ドレスや、準備の事を聞いても
「どうだろう、シルフィーヌ。教会で聞いてみては?」
いったいどういう事…教会と社交界デビューのことは何も関わりないはず。
日々、妹の準備が整っていくのを横目で見るばかり。
ついに社交界デビューのパーティーが行われる日になってしまった。
今日も私は教会にいる。
じっと女神像を見つめる。
女神像に祈る際に「私は一体何を為すべきなのでしょうか」と心の中で尋ねてみる。
もちろん、返事はない。
私は毎日何のために何をしているのか…虚しくなってしまった。
ふと、女神像が持っている本には何が書かれているのか気になって、覗き込んでみた。
石でできている本には古代語が彫ってあるのだ。
昔の自分だったら、読めなかった。
しかし、今なら意味がわかる。
『光と共に』
そのとたん、女神像と私が光に包まれた。
そして、何もかも思い出した。
私が幼いころに高熱を出して、寝込んで生死をさまよったこと。
その時にこの世界が、前世で読んでいた『聖女は復讐をやり遂げる!』だったことに気づく。
主人公のシルフィーヌは、社交界デビューのパーティーでその国の第3皇子と運命的な出会いを果たすが、なんとそのパーティーに魔族が紛れていて、第3皇子も大切な家族もみんな殺されてしまう。
なんとか生き延びたシルフィーヌは、命からがら町はずれの教会で聖女になるための修行をし、外遊していた第2皇子と魔族を倒す旅に出るのだ…
しかし、幼い私は大切な家族や第3皇子を失うことが恐ろしく、それを回避するために全力を尽くすことを誓う。
魔族が出る前から聖女になるための修行をするのだ。
しかし、突然そんなことを言っても家族は驚き、悲しむばかり。
それを説得して、おじい様には教会、古代語はおばあ様に担当してもらい、他の家族にも他言できないように魔法のかかった誓約書を書いて協力してもらっていたのだ。
だから、私が理由を聞いても教えてもらえなかったのだ。
私自身も、物語自体の元に戻ろうとする力が働いては困ると思い、今日という社交界デビューの日まで戻った記憶を再び眠らせる事を誓約したのだった。
そして 今 すべて思い出した。
私は女神像の足元にある隠し扉から聖女のベールを取り出し、おじい様と一緒に城に向かった。
会場に入った途端、第3皇子から声をかけられる
「やあ、シルフィーヌ。やっと会えたね。」
その声を聞いて泣きたくなってくる。
物語の中とはいえ、一度は恋に落ちた仲。愛おしい相手。
しかし、今はそれどころではない。
聖女のベールをかぶって、祈りをささげる。
「ギャー!!!!」
会場に紛れていた魔族が悲鳴を上げる。
慌てて対処する騎士たち。
めちゃくちゃになる会場。
そっと寄り添ってくれる家族。
「今まで本当にありがとう。私たちのために力を尽くしてくれて。」
皆が命を落とさなくて本当に良かった。
これは私の、終わりの始まり、終わらないための努力
体調を崩してベットでごろごろしている間にようやく完成しました。
書き始めてから一年以上経っていて驚きました。
創作は初めてです。
お目汚し、すみません。
読んでいただいてありがとうございました。




