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TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い  作者: SIS
愛しき母に穏やかな午睡を

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『愛と勇気だけが最後の武器さ』



 白く光り輝いていたディスペアの輝きが、収まっていく。


 再び青く燃える炎の神の姿を取り戻すディスペア。それに対し、私達の方には何も起きていない。


 そう。何も起きていないという事が、すでに異常だった。


「……そちらの宇宙船は、どうやら駄目だったようだな」


『その……ようだ……ゴホッ』


 プラネットデストラクターがどんなもんかは知らないが、これだけの時間が経過しても何も起きていない、という事はそういう事だ。


 恐らく先ほどの異常な力の高まりは、それを迎撃する為のもの。


 正真正銘、最後の策が打ち破られた訳だ。


『もう……終わりだ……なにもかも……っ』


「マスター……」


『すまない……すまない……っ! 我らは、無力だ……』


 宇宙人の謝罪。


 そんなものを聞く日が来るとは思わなかったな。侵略者の分際で何いってやがるテメー、というのが本音だが、まあこいつらにも色々あるというのはわかっている。


 吐血に咽返りながら謝罪してくる相手を罵るのは、それこそ人道にもとるというものだ。謝ってきたのがあの三馬鹿の誰かなら、容赦なく頭を蹴飛ばすがな?


「まあそう気を落とすな。お前らのやった事は無駄じゃない。むしろナイスだ、ファインプレイってやつだな」


『……何?』


 私はディスペアに目を向ける。


 青く燃える、鎧持つ邪神。その青白い輝きは一見、何の変化も無いように見える。だが同種の力を持つ私には、その力が大きく減じているのがはっきりとわかる。


 頭を締め付けるような頭痛が遠のいているのがその証拠だ。いくら奴でも、惑星を破壊するような一撃を凌いで反撃までするのは相当に負担が大きかったらしい。


 そして……。


「今なら、これが出来る!!」


 私は強く念じ、全身から青黒い炎を噴き出した。憎む者を焼き尽くす、恩讐の炎。もっとも、目の前のディスペアには宇宙人ほどの憎しみがないから、これを直接叩きつけた事で焼き尽くす事はできない。こいつが宇宙人どもを操っていたとかなら話は別なんだが、残念ながらそうではないと直感が訴えてきている。


 だが、同種の力である事に変わりはない。


 そう、目には目を、歯には歯を。燃え盛る炎には、同じ炎を!


「アステリオス!」


『クルルル!』


 大人しく状況を見守っていた我が子が隣に出てくる。その両手の籠手から、じゃきんと骨芯が展開されるのを見て、私の炎を腕に纏わりつかせる。


 ゲートをハッキングした時と同じだ、私の炎を纏った骨芯がクロスボウのように打ち出されてディスピアへと突き刺さる。


 そう。


 同質の力でコーティングすれば、こちらの攻撃も通用するはず!


『■■■■』


「効いてる……!?」


 葵ちゃんの言葉通り。私の炎と合わせれば、物質世界の攻撃も通じる!


「おい、宇宙人ども! 実体弾の武器があるなら出せ!」


『……そ、総員! ハンドガンに持ち替えろ!』


 マスターの指示に、兵士達がレーザーライフルを投げ捨てて、腰の後ろから拳銃を引き抜く。拳銃といっても、人間が撃ったら腕が吹っ飛ぶような大口径、ぶっちゃけハンドキャノンだ。


 思ったよりちゃんとしてて安心する。そうだよ、いざって時は状況を選ばず運用できる酸化剤を用いた鉛玉がものをいうんだ。ハイテクかぶれしてないのは素直に褒めちゃう!


 私が大きく腕を振ると、それに合わせて青黒い炎がヴェールのように広がる。その炎の膜目掛けて、兵士達が引き金を引いた。


 耳をつんざく発砲音。炎の膜を通り抜けた弾丸が、灼熱の炎弾と化してディスペアに降り注ぐ。甲殻が罅割れ、その肉体を構成する炎が僅かに散らされる。


 よし! 少しは効いてる!


「だったら!」


 そこで、葵ちゃんの出番だ。アステリオスと反対側に出てきた彼女がガトリングガンを構えるのを見て、私もそっと左手を触れさせる。燃え上がった炎が彼女の腕を伝い、ガトリングガンに宿る。


 一瞬驚いたように目をみはる彼女だが、そのまま狙いを定める。そう、これはあくまで宇宙人絶対ぶっ殺すファイヤーだからね、その真反対である葵ちゃんに害があるはずないのだ。ちょっと熱いのは勘弁してほしい。


「消し飛べぇっ!!」


 そして放たれるガトリングガンの掃射。秒間数百発の超高速連射で、炎を帯びた機関砲が叩き込まれる。さきと違い蹴散らされずに突き刺さる弾丸に、暴風に煽られる蝋燭の炎の如く、ディスペアを構成する炎が激しく揺らいだ。


 このままなら、奴にトドメをさせる。


 しかし、10秒も立たないうちにガトリングガンは弾切れになってしまう。ここまでで無駄玉を撃ちすぎたか。


 くそ、あと少しなのに。兵士どももバンバン撃ってるが、今必要なのは一発の威力より密度だ。ハンドキャノンじゃ攻撃速度が足りない!


『クルルルルゥ!』


「! アステリオス……わかった!」


 そこで、我が子が前に出る。しゅるり、とアンカーワイヤーを鞭のように伸ばすその様子から意図を悟り、私は口惜しくも頷いた。


 すまない。危険だが、お前に任せる!


『グラァアアッ!』


 私の炎を受け取ったアステリオスが、ディスペアめがけて突進する。それを見たディスペアが、その腕を大きく振り上げて叩きつけてくる。さきほどマスターが容易く一撃でやられた攻撃を、アステリオスは軽いフットワークで回避した。そして充分な距離まで近づくと、その両手を高速で振り回す。


 炎を帯びたワイヤーが鞭のようにディスペアへ叩きつけられる。2度、3度と叩きつける度にその勢いは加速し、目で追えないほどになる。


 まるでカンフー映画のヌンチャク捌き。音速を超過した炎鞭が、ディスペアの全身を激しく打ち据える。


 甲殻が砕かれ、炎が散らされる。形を維持できなくなった炎神のシルエットが、崩れるように揺らいだ。


 その、一瞬。


 胴体。甲殻に守られていた炎の向こうに、キラリ、と光る何かが見えたのを、私は見逃さなかった。


「……結晶体?」


 そう。炎の中に隠れて、なにか宝石のようなものが確かに見えた。


 物質? 妙だな、てっきり奴は完全にこの世界に依存しない存在になったものかと思っていたが。


 もしかして。


「まさか……コア?」


 ひょっとして奴はまだ、完全に上位次元の存在になった訳ではない? いや、それはそうだ、間違いない。マスターだって言っていた、どうにもならなくなる前に奴を滅ぼす、と。逆に言えば、今はまだどうにかなる訳で……それはつまり完全ではないという事。


 つまり。奴は未だ、現実世界に依存している部分が残されている。


 じゃあ、それを砕けば……。


「……アステリオス! 胸だ! 胸の甲殻の奥……パイルバンカーでぶち抜け!!」


『クルルルゥ!』


 私の指示を受けて、アステリオスが大きく右腕を引く。ばちぃん、と音を立ててワイヤーが巻き取られ、代わりに鋭くとがった骨芯が展開される。


 岩国基地で大型個体を仕留めた一撃。炎を纏ったあの一撃なら、甲殻を貫いてコアに届く。


 これで終わりだ、とアステリオスがディスペアの胸殻に右腕を叩き込む。骨杭を打ち込む為に、籠手の筋肉がぎゅぅ、と締め上げられた。


 兵士達が、葵ちゃんが、マスターが息を飲む。


 そして、決着の一撃が……。




『■■■■』




 気が付けば、私は壁に叩きつけられていた。


 遅れて痛みと衝撃、轟音がやってくる。


「が、あ……!?」


 視界が明滅する。壁からずり落ちるようにして床に倒れた私は、霞む視界で周辺を見渡す。


 傍らに、アステリオスの姿。我が子は右腕を根本から吹き飛ばされ、青い血を流しながら気絶している。そして少し離れた所には、葵ちゃんが倒れている。彼女は翼が折れ、ガトリングガンも銃身がへし折れた状態で、俯せに床に転がっている。その体の下から、じわじわと血が広がっている。


 マスターや、兵士達。彼らは、てんでばらばらに、部屋のあちこちに倒れ込んでいた。壁にめり込んでいるものもいる。


 そして、ディスペア。


 奴は吹き飛ばされた私達の中心で、ゆらゆらと燃え盛っていた。


「が、ぐ……」


 油断、した。


 奴の反撃が無かったのを、私達はもっと気にするべきだった。


 いくら弱っていたとしても、多少の反撃はできて当然。それをしなかったのは、恐らく力を蓄えていた。私達を一網打尽にするために、敢えて攻撃を受けつつエネルギーを貯め込み、一気に解放して私達を吹き飛ばした……。


「ぐ、ぐぅ……」


 だが。だとしても、奴が弱っているのは変わりない。


 燃え盛る炎は明らかに勢いを減じている。惑星破壊砲の迎撃、そして私達の猛攻で、ディスペアはかなりの力を失っている。


 放っておけば、時間経過とともに失われた力も回復してしまうだろう。


 今しか。今しか、奴にトドメを刺すチャンスはない。


「ぐぐぐ……!」


 なんとか身を起こし、ディスペアに対峙する。


 私には子供たちのように爪とか角とかはないし、所詮子供の肉体だがそれでも一般的な成人男性よりは力がある。頭突きでも噛みつきでも、とにかくとりついてあのコアを砕いてやる……!


 そう決意してよろよろと歩み寄る私に、ディスペアはす、と右腕を向けた。


 炎がまるで指のような形に開かれて、青白く光る。


 瞬間。


「い……!?」


 まるで吸い寄せられるかのように、私の体がひとりでに奴の手の中に納まっていた。さっきと逆、弾き飛ばすのではなく招き寄せる。


 危険を感じて距離を取ろうとするが、吸い寄せる力が強すぎる。逃れられず捕まった私を、炎の指がわしづかみにした。


 って、熱い熱い熱い!!


 焼ける!! めっちゃ熱い!!


「あ、あづづづづづ!?」


『■■■■』


 指の中から逃げ出そうともがくが、見た目と違い炎の指はしっかりしていて振り払えない。ねこじゃらしみたいにジタバタしていると、ディスペアの頭殻が、じっとこちらに向けられているのが分かった。


 もはや中身のない甲殻の、眼窩だった場所から噴き出す青い炎。それが、まるで瞳のように揺れながら、私を見つめている。


『■……■■……マ、マ……』


「……っ!? や、やめ……」


『イッショ……ママ……イッショニ……』


 牙を剝くように、口を開くように炎が膨れ上がる。私の抵抗も虚しく、視界の全てが青白い輝きに包み込まれ……そして、ブツリと暗転した。


 暗闇の中に、堕ちていく。




 遠くで、誰かの悲鳴が聞こえた気がした。





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