<ネタバレ注意>チルドレン図鑑3<閲覧注意>
●プテラ
形態:翼竜
特殊能力:空間認識能力
詳細:プテラノドンとヤツメウナギを足して2で割ったような見た目のチルドレン。初の飛行型であり、完全に飛行に特化したその形状は最高速度こそ及ばないものの、機動性においては人類どころか宇宙人の航空戦力を大きく凌駕する。また、ラウラから引き継いだ独立型の食餌器官も備えているが、大規模な脳波動の制御能力を持たない為、もっぱら産みっぱなし、増えっぱなしの爆弾として用いる。意外な事に特殊能力は飛翔能力ではなく(あくまでそういう肉体の形状の為)、真の能力は空間認識能力である。それにより、物質の位置をマイクロ単位で把握しているため、いかなる攻撃もプテラに当たる事はない。
単体で大阪の拠点の8割近くを壊滅させた、恐らくキルスコア最高値のチルドレン。人類軍は逆にそのせいで予算は浮いたものの、計画が大幅に狂ったらしい。
母の指が宇宙で一番おいしいと思っている。
●ブレイド
形態:刃獣
特殊能力:単分子ブレード
詳細:頭部中央と、両腕に外骨格から伸長した形で展開されるブレードを備えたチルドレン。両腕のそれは中指と一体化しているが、人差し指や薬指、親指などは残っているため細かい作業も得意。
ブレード部分には単分子フィルムが挟み込まれており、ありとあらゆる物質を切断可能。ある意味ではチルドレン最強の攻撃力を持った個体であり、このブレードを防ぐには単分子結晶を用いるか、あるいは非物理的な防御を用いる他はない。
再生能力も優れており、多少の傷はその場で再生する復元じみた回復力を持つ。ただ、プルートゥのように神経細胞まで即座に再生する事はできないようで、強い衝撃には意識を失う事もあるようだ。
チルドレンの中では唯一、母胎の生命を吸って急成長する本来の仕様で生まれてきた為、基本的な能力が他のチルドレンと比べても頭一つ抜けている。その事で母に憎まれるのも覚悟の上だったが、許された上に溺愛されているので内心ちょっと戸惑った。
尻尾のぷにぷに感に自信あり。
●1号
形態:不明
特殊能力:不明
詳細:アザークイーンからうまれてきた最初の子供。生まれた直後に取り上げられ、宇宙人達の研究対象として細胞単位で解剖され、薬液漬けにされた。アザークイーンの子供たちはこのように全て、宇宙人のストックしている卵から生まれてきたため葛葉のチルドレンのような繋がりはないはずなのだが、互いを兄弟として強く認識していたようだ。
●2号
形態:獣型
特殊能力:不明
詳細:アザークイーンから生まれてきた二番目の子供。早くもアザークイーンが体調を崩し始めていたため、かなり不安定な状態で生まれてきたせいか、間もなく死亡。母に助けを求めるような鳴き声が弱っていく中、アザークイーンは混乱しつつも、ただ抱きしめてやる事しかできなかった。
●3号
形態:爬虫類系獣型
特殊能力:不明
詳細:アザークイーンから生まれてきた三番目の子供。比較的大柄で安定して生まれてきたが、その為に母胎に大きな負担をかけてしまった。その事で嫌われているが、3号自身は母親によく懐いており、最後まで彼女に従順に従った。産み付ける前に卵に改良が施されており、肉体に別種の生体兵器を共生させている。その為理論上はクイーンのチルドレンよりも優れた戦闘力を持つはずだったが、実際の所はクイーンチルドレンの基礎性能が桁違いであった為、差を埋めるには至らなかったようだ。
後に負傷部分を改造され、宇宙人に延命薬を注入される。副作用であるすさまじい激痛をおくびにも出さなかったのは、恐らく、母を気遣っての事だったのだろう。
一度だけ、母が頭を撫でてくれたことを生涯忘れなかった。
●4号
形態:蜘蛛型
特殊能力:地中潜行
詳細:アザークイーンから生まれてきた四番目の子供。昆虫型であった為、生まれた直後に母親に悲鳴を上げられたのがトラウマ。その後、宇宙人の急速成長剤の実験体にされた為、かなり大型のチルドレンに成長したが、外骨格の結合強度がイマイチであり、見た目ほどの防御力はない。3号と同じく生体兵器と共生しており、そちらの完成度そのものは高い。
しかし、ご存知の通り、クイーンチルドレンの大型固体は戦略兵器級の戦闘力を持っていたため、宇宙人からは失敗作だと見られていたようだ。理不尽。そのため容赦なく延命薬を投与され、手足も切り落とされて機械のそれに置換されるが、最後まで母の為にそれに耐えた。
ちなみに3号と組んでのブレイド戦は、もともと瞬殺確定で命を懸けて時間稼ぎするつもりが、葵が来たせいもあって一瞬でのされてしまった。
母の為に戦って死ねれば、それが贖罪になるかと考えていた。
●5号
形態:狼型
特殊能力:強化外骨格
詳細:アザークイーン最後の子供。5号の出産で彼女の肉体の損傷が限界を越えた為、実験はこの個体で打ち切られた。
性能、安定性ともに最高の個体であり、反面、過度な宇宙人の手は加えられていない。この事が、宇宙人達の技術力不足と神獣兵への無理解を証明しているのだが、彼らがそれを認める事はないだろう。
子犬のような姿で生まれてきた事から、比較的母親には可愛がられている。母の命が残り少ない事、それをさらに削ったのが自分である事に強い自責の念を抱いているため、母の願いであれば、それがどんなに自分の意思に反した事であろうと叶えて見せる、と強い決意を抱いている。
唯一、クイーンのチルドレンと正面戦闘で勝負になりうる個体だったが、残念ながら相手が悪すぎた。いくらなんでもブレイド相手は無理である。
どうせなら、母の苦しみを代替できるような能力で生まれてきたかったと思っていた。
《蛇足》
気が付けば、宮田美穂は不思議な場所に立っていた。
周囲は白い霧に包まれ、暖かな光が差している。
「ここ、どこ……?」
不安げに呟きながら、自分の体を見下ろす。おかしいのは場所だけではない、あれほど精神を苛んでいた体の激痛もなく、滅茶苦茶に改造されていた肉体も元の瑞々しい10代のそれに戻っていた。
お気に入りのワンピースを懐かしく思いながら、彼女は白い闇の中を彷徨う。
そこに、声がした。
二度と聞こえないと思っていた声が。
「え……」
声が聞こえてくる方に走り出す。
どんどん、声が近づいてくる。それはやがて、明確な声になって、美穂の事を呼んだ。
「みほ……みほ。こっちよ、みほ」
「みほ……おいで」
霧の向こうに、一組の男女の姿が見える。
見覚えがある。
間違えるものか。
「ぱぱ……まま……!」
迷わずに飛び込むと、大きな体がしっかりと彼女を受け止めた。見上げると、穏やかに笑う父の顔。その隣には、母が優しく笑っていた。
「迎えに来たよ、みほ」
「よく頑張ったわ、みほ。もう、大丈夫よ」
「ぱぱ! まま……!!」
父と抱擁を交わし、ついで母の胸に飛び込む。懐かしい腕が、記憶の通りに抱きしめてくる。
ここが天国なのだろうか。そんな事は、どうでもいいや、と美穂は思った。
これが、死ぬ寸前の幻でも構わない。こんなに幸せな気持ちのまま消えられるのなら、理由なんてどうでもよかった。
「わ、わたし! ふたりがいなくなって、ずっと一人で……! 苦しかった、辛かった! で、でも、最後まで頑張って生きたよ……!」
「うん、うん……」
「頑張ったね……」
美穂の叫びに、涙声で頷く両親。
一しきり抱き合って、美穂は親から離れて顔を上げた。
「これからは、ずっと一緒に居られる……?」
「もちろんだとも」
「向こうから、美穂を迎えに来たの。さあ、一緒に行きましょう」
母親に手を引かれ、霧の向こうに歩き出す。
と、そこで、不意に父親が足を止めた。
「ところで美穂。あそこで隠れているのは、知っている子かい?」
「え?」
父親に尋ねられて振り返る。
広がる白い霧の中。確かに、何かが姿を隠して、美穂を見つめていた。
すぐに、思い当たる。
「……お前たち! こっちに出てきなさい」
呼ばれて、気まずそうに出てくるのは、五匹の怪物達。
生まれた直後のままの二匹と、前傾姿勢の爬虫類、蜘蛛型、狼型。巨体だった4号はこれが本来の姿という事なのか、他の兄弟と同じぐらいのサイズだった。
肩を寄せて不安そうに集まる怪物達に、両親が小さく首を傾げた。
「美穂? この子達は?」
「その……」
彼らを何て言うか。その言葉は決まっている。
そう。確かに彼らのせいで彼女は苦しんだが、彼らにその責任がある訳ではない。何より、彼女は少しだけ覚えている。最後の最後、暖かい何かが、瓦礫の中で一緒にいてくれたことを、ちゃんと覚えている。
美穂はちょっとためらってから、それでも元気よく言いきった。
「……新しい家族よ! ほら、皆、こっちに来なさい! パパとママを紹介するわ!」
母親の呼び声に、顔を見合わせる獣たち。彼らはおずおずと、おっかなびっくり美穂の元にやってきた。近くまでやってきても申し訳なさそうに顔を逸らす3号の首筋に、美穂は勢いをつけて飛びついて、そして。
しっかりと、抱きしめたのだった。
【蛇足2】
●スウォーム・エンペラー
形態:多機能戦闘獣
特殊能力:集合意識統括権限
詳細:古の時代、星々を恐怖の底に陥れた悪名高き神獣兵、その統括個体。神獣兵が謎の動作不良を起こしても最後まで稼働し、停止後その肉体は宇宙人に保存されていた。その後、本星で管理されていたが、地球侵略部隊が神獣兵の再起動に成功した事を受けて、急遽運び出されてきた。その後、クイーンの血髄がオリジナルのそれに近いレベルまで達した事でそれを投与する、いうなれば輸血が成功した事で活動を再開した。
というのは、宇宙人どもの視点。
実際には、神獣兵達が生きることに絶望し誕生を拒否する中、他の全ての個体が眠りにつくまで統括者としてそれを見届けた。そして、他の兄弟たち全てが安らかな眠りについた事を確認し、自らも意識を霧散させたのが真相。最後まで自分達を使い捨ての道具としか見ない主人たちに一番絶望したのも統括個体だった事だろう。
本編で登場したのはあくまで生理的な反応によって肉体が活動を開始しただけであり、自我の類は残されていない。
しかし、神獣兵を統括する存在である以上その意識は他の個体と違い、一度は集合意識ネットワークのどこかに必ず保存されたはずである。果たして、その意識はどこにいってしまったのか。
それを知る者はいない。
愛しき母に、永遠の愛を。




