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TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い  作者: SIS
怪物を連れる少女

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『私はお前のお母さんみたいなもんだからな?』



 新しい隠れ家は、無人の小学校に決まった。


 地上の校舎は爆撃か何かで大半が破壊されており一見隠れるところもない廃墟だが、地下にはボイラー室や給食の調理室があり、人目や追跡を割けてプルートゥと一緒に潜むにはちょうどよかったのだ。


 特にボイラー室がよい。燃料もないので暖をたく事はできないが、用途もあってか断熱性が高く、地上と比較して温度の変化が少ない。そこから使われる事がないであろうボイラーをどかせば、プルートゥの巨体がしっぽを丸めて横になれるぐらいの空間を用意する事ができた。


 ボイラーそのものは細かく刻んで調理室に放り込み、体育館などから毛布を集めてきて敷き詰める。


 ようやくできたふわふわの快適空間に体を丸めるプルートゥのおなかに、私はゆっくりと体を預けた。


「ふぅ……ようやく人心地ついた」


 ぶにぶにのおなかはクッションのようである。これで気合をいれると鉄のようにガチガチになるのだから、生体兵器というのはまあよくできている。


 まあでも、こんな超巨大マシュマロみたいな感触、人間の家具でもそうそうないかもしれない。


 そんな事を考えながらぼーっとしてると、プルートゥの尻尾の先端が私の前でふらふらと揺さぶられた。先端だけ甲殻で覆われたしっぽが、ねこじゃらしのように動いているのを見て振り返ると、横になった彼の複眼がいたずらっぽい光を帯びているのが目に入った。


 こいつぅ。


「ほほう……いいだろう、ちょっと遊んでやろう」


 ゆらゆら揺れる尻尾に向けて、私はさっと両手を繰り出した。気分は蚊を叩き落とすそれである。


 が、素早い私の手を逃れて、ひょい、と尻尾はすり抜けてしまう。二度、三度繰り返すも結果は同じ。


 あざ笑うように不規則に蠢く尻尾にむぎぎぎ、となっていると、背後でくっくっとプルートゥが笑う気配があった。はっと振り返ると、彼は素知らぬ顔でそっぽを向いていた。


 だが私には見えた。にんまりとゆがめられた口の端が。


 こんのぉ……。


「ふ……いいだろう。私の本気を見せてやる! あとから後悔するなよ!!」


 腕をまくり気合を入れる。


 今こそ人間を越えた力というものを示す時だ!


 その力の前に、いまさら恐怖に震えたとしてももう遅い!


「てややーーー!!!」




 なお一度も捕まえられませんでした。




「ふーん、ふふーん。ふーん」


 へったくそな鼻歌を歌いながら、私は校舎の裏庭で焚火の上でフライパンを動かしていた。じゅうう、と音を立てて香ばしい匂いを放つのは、大豆の乾燥ミートを焼き肉のたれに漬け込んだ奴だ。どちらも未開封なら常温保存が可能なもので、結構そのへんのスーパーとかにも取り残されている。私にとっては貴重な栄養源である。


「まあこんな感じかな」


 火が通ったのを見て、焚火を消して地下に戻る。ボイラー室に戻ると、焼き肉のたれに反応したのか、ねっころがっていたプルートゥがぴくり、と鼻先を動かして起き上がった。


『ミィー。ミミミミィ』


「ご飯だよー。あ、ちょっとまってね、お前の分も用意するから」


 鼻先を擦り付けるようにして顔を寄せてくるプルートゥの頭をひとしきり撫でて、私はボイラー室の一角に転がしてあるクーラーボックスを開いた。


 中には、青白い液体で満たされた中に、得体の知れない塊がでろんと浮いている。


 肉といえば、肉。


 これらは、最近しとめた侵略者どもの肉だ。人肉……じゃないな、エ肉? まあなんでもいいや。


 連中は地球の生物とは根本的に構成物質やらなにやらが違うらしく、細菌で腐ったりしないのでこうして常温保存ができる。いやまあ普通に考えたら地球の細菌で腐敗しなくても、連中がもともと持ち込んできた細菌で腐敗しそうなものなのだが、現実として常温保存しても問題ないのだから仕方ない。体内に細菌が存在しないか、あるいは完全に身の回りから菌類を一掃しているのか。


 まあ、科学的な考証は今はどうでもいい事だ。私はクーラーボックスを抱えて、プルートゥの前に運んで行った。


「ほい、召し上がれ。次はいつ食べられるかわからんから味わって食えよ」


『キュキュキュ~~』


 猫のような鳴き声を上げて、舌で器用に肉片を口に運んでいくプルートゥ。基本的に肉なら何でも食べるプルートゥだが、どういう訳かある意味製造元である侵略者達の肉が一番好きだ。


 これがあるうちはこれだけしか食べない。まあ無くなると普通に一般人を食欲の目で見つめるので本当に気が抜けないが……。


 めったに(あずか)れない事は理解しているのか、味わうように少しずつくっちゃくちゃしてる彼を微笑ましく見守りつつ、私も自分の分の食事に口をつける。


「ん……ちょっと漬け込み時間が短かったか」


 ちょっと芯のある食感に顔をしかめる。まあでもこんなご時世だ、失敗したとしても食べられるもんは食べておこう。


 コップの水と一緒にもぐもぐ腹を膨らませていく。


 一方で、私が一皿食べ終えるよりも早く、プルートゥはクーラーボックスの中身を綺麗に食べつくしてしまったようだ。名残惜し気にボックスの中を舌先でぺろぺろ意地汚い事をしていたが、それも完全に味がしなくなったのか、雑にぽいっとボックスを放り投げた。


 こらこら。


「プルートゥ。ボックスも今じゃ新しく買えないんだ、大事に扱いなさい」


『キュ~』


 怒られたのと思ったのか、首を縮める可愛い子。直立すると4m近い巨躯の怪獣みたいなやつが子猫みたいな仕草をするのは普通だったら違和感がすごいのだろうが、私の目にはとてもラブリーな仕草にしか見えない。目に入れても痛くない、とはこの事か。我が事ながら、親ばかの気があったとは自分で自分にびっくりだ。


 とはいえ、しつけはしっかりしないといけない。巡り巡って困る事になるのはこの子の方なのだ。


「物は大事にしなさい。そう、それでいい。やればできるじゃないか、よしよし」


『キュルルルル』


 投げ転がしたクーラーボックスをちゃんと元に戻した事を褒めると、喉の奥を鳴らしながらすり寄ってくる。


 私はまだ食べてる途中なんだが、そんなのお構いなしに身を寄せてきて、長い舌を首に絡ませてくる。


「こらこら、ちょっと。食べてる最中なんだけど」


『クルルル……』


 んー。なんだか、少し様子が変だな。


 首に絡みついてきた舌先が、私の服に潜り込んでくる。着古したぼろのトレーナーの中に入り込んできた舌が、ぬるぬると唾液をこすりつけながら絡みついてくる。


「ちょ、くすぐった……い、いや、これ、ちょっと……?」


『キュー、キュルル。クルルル……』


 ビックリして振り返った先、私をじっと見つめるプルートゥの複眼と目が合った。


 黄色い、瞳孔の無い瞳。それが、じっとりと濡れたような光を宿して私を見つめている。


 それに加えて、黄色一色だった彼の皮膚が、ほんのり桃色を帯びているようにも見えた。


「……ああ、そういう事か」


 プルートゥは、侵略者が遺伝子操作で作り出した生体兵器だ。元となった遺伝子は恐らく地球のそれのみに限らず、いろんな星のそれが含まれていると思われる。


 それでも、命である事に変わりはない。兵器として歪に歪められているとしても。


 幼体から成長期、成熟期に高速で到達し。一生のうちで一番長い成熟期が終わると、次は繁殖期。そして、次世代を残した命はその役目を終える。


 ……プルートゥは、今、繁殖期に入ったのだ。


 そして彼らの繁殖は母胎に卵を産み付ける事で行われる。そして今の所、彼らの寄生に耐えた実績がある生命体は、地球上に私しかいない。


 私は一つため息をついて、服の裾をまくり上げた。


「しょうがないなあ……」






 数日後。


 私はプルートゥの墓に手を添えていた。


 瓦礫を積み上げただけの簡素な墓には、彼の残した頭殻が供えられている。


「さて……しばらく身を隠すか」


 卵に寄生されている間、私は満足に動けない。この間に侵略者どもにとっつかまったら事だ。


 人間にも見つかりたくない。しばらくは、地下水路にでも身を隠す事にしよう。


「はぁ……長くて一か月か。もうちょっと寿命を長くしてやりたいんだけど……亀は効果が薄かったな。鶴を食べたらどうなんだ?」


 鶴は千年、亀は万年。


 まあ、単なる言い伝えだが、藁にもすがりたいとはこの事だ。


 墓に背を向けて歩き出した途端、ずきん、と脇腹が痛んで私は手を押し当てた。


 皮膚の下で、変なしこりみたいな感触が、どくどくと震えている。


「場所的に腎臓のあたりか……? 痛いところに植え付けやがって」


 まあ、痛いのには慣れている。


 侵略者どもにとっつかまって全身弄り回されているよりはずっとましだ。


 マンホールから地下に降りつつ、私はふと、私がこうなる以前の事に思いをはせた。


 それはそう、4年ほど前の事。


 まだ、地球で平和という幻想が信じられていた頃の話だ。







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