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TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い  作者: SIS
『空白の席の主』

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122/123

特別編:ルーディ

◆◆




 極東地域にいくつも作られた宇宙人達の要塞。


 それは軍事基地であると同時に祭祀場であり、神殿であり、監獄であり、処理場であり、実験場であった。


 分厚い隔壁に覆われた安全な塀の内で、宇宙人達は捕らえてきた人間達を悪意のままに弄んだ。


 彼らからすれば、人間達の尊厳と生命を踏みにじる事は神に対する捧げものであり、同時に神に選ばれた自分達の絶対性を噛みしめる遊戯でもあった。


 彼らは常に加害者であり、上位者であり、愉しむ側であった。


 それが逆転する事など、考えた事もなければ有りもしない事。圧倒的な技術力に、制宙権を取っているという地の利、何よりも誇りや人道という概念を持たない彼らはいかなる悪辣な手でも平然と取り、地球人類に対して優位に立っていた。


 だがそれも、今夜覆される。


 突如として、分厚い隔壁が弾け飛ぶようにして粉砕された。赤く焼けて餅のように膨らんだ隔壁が破裂すると、灼熱の破片が周囲に向けて降り注ぐ。その赤い飛沫一つ一つが超高熱にして超重量の特殊合金の成れの果てであり、その下敷きになった不運にして幸運な宇宙人は、灼熱によって一瞬で骨の髄まで焼かれながら圧死した。


 即死を免れた者達の呻きと、鉄の焼ける音と共に立ち込める異臭に満ちた白い煙の向こう、何かがずしゃりと地を踏みしめて塀の大穴を潜ってくる。


『ギギュルルルル……』


 それは一言でいえば、外骨格の鎧をまとった巨大な獣であった。


 全長は3mほど。肩や背中、頭部、胸部や大腿部といった広い面積が紫色の甲殻で覆われ、頭部からは剣のような鋭い角をはやした、直立二足歩行する恐竜のような怪物。両腕には六本の指があり、背中からは長い尻尾が鞭のように伸びて振り回され、逃げ遅れた宇宙人の頭を打ちのめして弾けさせる。


 ひゅんひゅんと死の音を引き連れながら、巨大な怪物が進軍する。言うまでもなく、事前調査において地球上にこのような生物は生息していなかった。


 さらにもっと奇妙な事に、この怪物は肩に一匹の現住生物、人類の幼体を引き連れていた。黒い髪、黒い瞳の、襤褸のような服を纏った一人の女の子。彼女は厳めしい怪物に怯えるどころか、まるで愛しい子供にそうするようにその首筋に頬を寄せて、やさしく甘やかすようにその喉や頬を撫でた。


「いいわよ、ルーディ。お前は強い子ね」


『ギュルルル……クルルル……』


 幼子の言葉に、喉を鳴らして怪物が応える。傍から見ても、この一人と一匹はなんらかの深いつながりがあるように見えたが、その意味を宇宙人達は残念ながら理解できない。


 と、そこでけたたましい音と共に、キャタピラを唸らせながら宇宙人の機甲戦力が到達した。


 巨大なパラボラアンテナのような発信機にキャタピラを直接取り付けたようなそれは、クロノス・オーダーが誇る対生物殺傷兵器だ。有機物の破壊に特化した光線を放射するそれは、過去、人類軍の戦線を散々に破壊し、戦車や防壁はそのままに、その中に隠れる兵士達を黒焦げの炭のように変えてきた忌むべき兵器。


 それが、巨大な怪物を葬り去ろうと砲口を向ける。


 それに対し、窮地にある筈の怪物は、のっそりと余裕そうに真正面からみがまえた。


 その全身の骨格から生えた棘の先端が、ぱちり、とスパークする。


「……ああ。またけったいな物を持ち出してきたわね。そんなものが、うちの子に通じるとでも?」


 リフトアップされるパラボラアンテナ。


 その先端が眩い光を放ち、殺人光線を発射した。七色に輝くプリズム光が、怪物目掛けて放射される。逃げ遅れた宇宙人が、巻き込まれて一瞬で細胞という細胞を焼き尽くされて、黒い人型の炭になった。


 そして、怪物は……。


『ガギュルルルル!!』


 体の各部から伸びる棘、それを繋ぐように雷光が光った。まるで光の繭のように、その全身を包み込む青い光。それは降り注ぐ虹色の殺人光線を、真正面から跳ねのける。


 特殊な防御シールド。非対称透過性防壁とでもいうべきその光の壁を、たかだか一機甲兵器如きの出力が越える事は叶わない。


 それどころか飛散した虹色の光が安全地帯に居た筈の宇宙人達に降り注ぎ、盛大な二次被害を巻き起こす。


 それを見て、戸惑ったように殺人光線の放射が停止される。


『ギュガアア!!』


 今度は返礼と言わんばかりに、怪獣が全身から稲光のようにスパークを放った。


 いくつもの電撃が地を薙ぎ払うように放たれ、軌道上のあらゆる物質を破壊していく。宇宙人達のアーマーが弾け飛び、基地の設備が破壊され、そしてそれはパラボラ砲戦車にも降り注いだ。


 常軌を逸した高圧電流で、一瞬にして弾け飛ぶ戦車。大破炎上して燃え上がる車体から、パラボラアンテナが傾いて地面に倒れる。突進した怪物が戦車に組み付くと、両手でその何十トンとある塊を持ち上げると、基地に向かって放り投げた。


 頑丈そうな基地の外壁にぶち当たり、爆発炎上。燃料に引火でもしたのか、瞬く間に炎が広がっていく。


 その真っ赤な炎の運河の中で、逆光で黒く染まる怪物が遠吠えのように雄たけびを上げた。


『ガギュルルルルルゥ!!』


 そして始まる、大殺戮。


 全方向に放たれる電撃、隔壁を突き破り兵士の頭を握りつぶす剛腕。あらゆる反撃は電撃の壁に阻まれ、あるいは外骨格に弾かれた。


 抵抗は無意味。


 どんなに巨大で重装甲な戦車も、どれだけ巨大な大砲をもってきても、あるいは訓練を受けた精兵たちの包囲攻撃も、何一つとして怪物と少女に通じる事はない。


 まるでそれまでの暴虐を何倍にしても返すような、それは宇宙人にとって破滅の具象化であった。


 巨大な基地は一晩にして瓦礫と死体の山と化す。燃え上がる炎を前に、怪物は勝利に遠吠え、少女は鈴のような声で高らかに笑った。


「はははは……ふふふ……あははははは!! 死んじゃえ、お前達、皆死んでしまえ! あはははははははは!!」


『ガギュルルルルゥウ!!』




 その様子を、撮影する一つの人影があった。


 人類軍の斥候。


 反抗作戦に向けて偵察を行っていた彼らは、その一連の大破壊を見届けた震える手で、ぱしゃり、と怪物の姿を撮影する。


 直後、ぎろり、と怪物が反応して視線を向けてきた事で、彼らは大慌てで撤収した。命からがら逃げ延びた彼らは、追撃が無い事に心底安堵したという。


 この時撮影した写真は、人類軍において最重要情報として取り扱われ、以後、歴史的な一枚として未来永劫保存される事になる。


 その写真データを、偵察班は再度確認する。


 手元の端末に表示される、一枚の画像データ。


 どこまでも続く侵略者の屍山血河。積み上げられた無数の屍。燃え上がる拠点を背後に、屍の山の上からこちらを見下ろす真っ黒な巨躯と、その傍らに佇む小さな人影。




 最重要目標X-0。あるいは、ノワールクイーン。


 その存在を、人類軍が正式に認めたのは、この事件がきっかけであった。




◆◆




 尚。遠い未来において。


「えっ、この時のアレ写真撮られてたの……っていうかなんで名画みたいになってるの!? 凄い芸術家がこれ題材に何百枚も油絵とか色々描いてる?! ナンデ!? ナンデコワイ!?」


「そうは言われましても……クイーンの存在が正式に認定されたきっかけの写真ですので……」


「きょ……教科書の表紙にもなってるの!? わ、私のプライベートとか肖像権はどうなってるのぉ~~~!?」


 ちなみにこの発言が元で、目玉が飛び出るような和解金(その為の財団が存在して長年資産運用していた、総額で星が買える)を提示されて再びひっくり返る女の子の姿があったとかなかったとか。


『ピリルルル(これがルーディ兄ちゃんか。一杯描かれてて羨ましいなあ)』


 アースは単純に羨ましがった。






◆◆


●シャフト


形態:寄生獣


特殊能力:ブレインジャック


詳細:ケラトの残した卵から生まれた第五のチルドレン。未熟な卵だったうえに植え付けられたのが太ももと、到底繁殖に適さない条件であった為、かなり危険な未熟児として生まれてきてしまった。本来ならばそのまま死に絶えるはずだったが、自分の血を食料として与える葛葉の身を削る行為によって持ち直し、それなりに安定した能力を持った個体に成長した。これは血にそういう力があったとかではなく、あまりに必死に子を思うが故の葛葉ママの脳波動(この時点では本人に自覚は無かった)が、不安定なシャフトの成体維持機能を補助したからだと考えられる。


 その影響もあってか不完全体なりに能力を獲得しており、ブレインジャック能力を手に入れた。寄生された宇宙人は意識はそのままに肉体の制御を完全に奪われ、常軌を逸した激痛の中、最後まで意識を持ったまま肉体を貪り尽くされる事になる。あの世があったら、宇宙人から嫌な死因チルドレン堂々のNo1だと考えられる。なお腐らない皮を大量に残したため、そういうチルドレンがいた事は人類軍に把握されている(当時は新種の生体兵器の管理に失敗したのかと思われていた、まあ間違ってないが)。


 意外と強力な個体だったが、元が超未熟児であった為か寿命は短く、20日程で天寿を全うするも、卵はちゃんと残した。


 母に無事に大きくなれた事を示すように、事あるごとに巻き付くように抱き着いていた。




●ロッグ


形態:両生類


特殊能力:熱強制転移


詳細:蛙のような見た目のチルドレン。体温もひんやりしているが、これは自身の能力で意図的にやっていた事で、普通に恒温動物である。暑かったので母を気遣っていた。能力は口から吐く冷凍ガスを充てんしたシャボン


……ではなく、自身の粘液を媒介とした熱の強制転移。熱は高い所から低い所に移る、という法則を自身の能力で異常なレベルで極端化し、自分の放つシャボンより1度でも対象の持つ熱量が高ければ、その全てをシャボンに移し替えてしまう。結果、急激に熱量が上がったシャボンは弾けるようにして焼滅し、全ての熱量を奪われた対象は一瞬にして絶対零度近くまで凍り付く。実は滅茶苦茶強力な能力であり、後のフレンドにも時々いる、極めて致命性の高い投射物に特化したタイプである。ちなみに体表を覆う粘液も対象であるため、ロッグに接近戦をしかける事は死を意味する。


 ロッグに殺害された宇宙人の氷像は現地では後に怪談話になったらしい。


 つまらないダジャレが好きで、常にぶつぶつ呟いては一人で笑っていた。




●ルーディ


形態:甲殻獣


特殊能力:電気生成・操作


詳細:後のプルートゥやアステリオスに繋がる、外骨格を持った竜人の姿をもったチルドレン、その基礎となった個体。


 強固な外骨格と体格から来る圧倒的なパワー、攻撃的な性格と合わせて高い戦闘力を持ち、ルーディの登場によってはじめて葛葉は宇宙人達の基地を真正面から襲撃、殲滅する事が可能になった。


 またルーディが拠点を落とした姿が人類軍に観測され、X-0の存在が発覚した事もあり、いろんな意味でターニングポイントになったチルドレンでもある。


 能力は電気生成。電流、電圧も自在にコントロールできるが、それに加えて体表に含まれる宇宙由来のレアメタルに高電圧を流す事で、一種の防御スクリーンを展開する事が可能。それによって絶対的な防御力を発揮し、宇宙人の破壊兵器を真正面から粉砕する事が可能である。それでいて、その高電圧に母を巻き込まないほどの繊細なコントロールも可能。


 身体能力と特殊能力のバランスが取れた極めて強力な個体であり、この系譜は以降も発展を続けプルートゥで完成を見る事になる。


 実は歯並びが悪くよく肉が挟まっていたので、その度に涙目でママに掃除してもらっていた。




●カフェオレ


形態:マスコット


特殊能力:強酸性粘液投射


詳細:チルドレンではなくフレンドだが、その中でもかなりの強者なのでここに記載。ウサギのような頭をもったカギムシという一見すると極めて無害なフレンドだが、口からは強い粘着性を持った粘液を糸のように噴射する。この有効射程は300mにも及ぶ。そしてこの粘液は対象に付着したあと一定時間が経つと、今度は鉄をも溶かす強酸性を発揮する。チルドレンもドン引きの極めて致死性の高い能力である。最も、今の所それを発揮する機会は一度もめぐってこなさそうではあるが。


 アースやママを前にしても平気でチャーハンを独り占めするようなとんでもない図々しさの持ち主。ふてぶてしい。





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