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軍議の結末 ー足利義昭が降伏するまでー

作者: 宇占海

 永禄十一年(西暦1568年)、尾張の大名織田信長は上洛し、足利義昭を将軍に立てて畿内の実権を握った。


 やがて義昭は、信長の傀儡(かいらい)(操り人形)でいることに不満を持ち、ひそかに反織田の大名たちをそそのかして信長打倒を画策していたが、元亀四年(西暦1573年)、ついに自ら挙兵した。


 が、頼みにしていた味方の来援が来ないまま、槇島城(今の京都府宇治市)に孤立し、織田軍の重囲に(おちい)ってしまった。


     ※     ※     ※


「今日、織田弾正忠(信長)どのから軍使が来た。降伏すれば命は助けると言うておる。

 降伏するべきか、それとも抗戦するべきか。」

 その日、槇島城本丸で軍議が開かれ、このことについて意見が交わされていた。

 降伏やむなしと言う者、抗戦して味方の来援を待つべしと言う者、なかなか意見がまとまらない。


 その時、軍議の末席から、

「断然、降伏すべし!!」

と吠えるように叫んだ者がある。


 その者は熱弁を振るった。

「これ以上戦っても、(いたずら)に犠牲を増やすだけでござる。

 無益に兵を殺し、民を苦しめて、何のための戦でござるか。

 そんな不仁なことをするよりは、ここで降伏して無辜(むこ)の生命を救うことによって、天下泰平への道を開き、もって将軍家累代の愛民の理念を示す時ではござらんか!」


 まるで抗戦するのは不仁で悪いことーーと言わんばかりの言い方に、とうとう抗戦派の真木嶋昭光が腹を立てた。


「貴様あ。黙って聞いておれば…。

太平とか愛民とか、きれい事ばかり言ってないで、

怖じ気づいたなら怖じ気づいたと正直に言え!

 この腰抜け侍が。」


 すると、

「拙者は怖じ気づいたのではござらん。腰抜け侍でもござらん。」

()()になって言い張るので、上座にいた足利義昭も感情を害した。


足利義昭

「おぬし、そこまで言っておいて、どこが怖じ気づいてないというのじゃ。

 大体おぬしは・・・って、何でおぬし、ここにいるんじゃあ!?」


真木嶋昭光

「そうじゃ! よく見たら貴殿は明智十兵衛(光秀)どのではないか!

 貴殿は織田家に寝返ったのではなかったか!?」


明智光秀

「左様。今の拙者は織田家家臣でござる。

 たった今、この槇島城総攻撃の命令が下ったので、

拙者が本丸まで討ち入ったところ、

この部屋で方々が軍議を開いていたので、

失礼ながら、同座させていただいていたのでござる。」


真木嶋昭光

「なんと! そこに自然に座っているから、

てっきり味方がいるものと勘違いしたではないか。」


明智光秀

「そういうわけだから、拙者は織田家家臣として降伏をおすすめしたのであって、決して怖じ気づいたわけではござらん。腰抜け侍でもござらん。

 そのことは、お分かりいただけましたかな?」


真木嶋昭光

「わ、分かった。確かに怖じ気づいたわけではないな。

 腰抜け侍などと言ったのは、わしが悪かった。取り消す。

 しかし、明智どのがここに来ているということは、この槇島城の本丸は既に破られているのじゃな。

 それにも気がつかないで、ここでのんびり軍議をやっていた我らは何なんじゃ。」


足利義昭

「待て昭光。そち達のせいではない。

 この義昭が愚かであった。

 この義昭が大それた野心を抱いたために、皆をこのような戦に巻き込んでしまったのじゃ。

・・・十兵衛の言うとおり、降伏して無辜(むこ)の生命を救おう。」


 かくして足利義昭は、織田信長に降伏、開城した。

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