貴族令嬢、釈放される 【最終回】
警察 (公安) ・検察 (法務) ・裁判所 (司法) は、それぞれ独立した組織である。
つまり、警察がパクって、検察が「こいつ有罪やろ」と判断、裁判所が「せやな」と決定するのだ。
ニュースで見るような大事件は裁判所で判決を下す、いわゆる通常裁判だが、しょーもない事件は簡易裁判と言って、チャチャっと終わらせてしまう。
私は以前、被害者側の立場で裁判に出廷したことがある。その前に検察へ呼ばれ、事情聴取を受けた。おどろくなかれ、なんと日当 (お金) が貰えるのだ。たしか数時間もかからない聞き取りだったが、晩ご飯を食べられる程度は貰えたとおもう。
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さて留置所に入って8日目、私は検察に呼び出された。今回は加害者側なので日当はなし。実は二度目の呼び出しで、一度目は事件の事情聴取、今回は起訴する罪状を、検察の検事さんが丁重に説明してくれた。
「黒い安息日さん、被害者が大ケガを負ってはいますが、初犯だし相手の迷惑行為も酷いので、傷害ではなく暴行罪での起訴となります」
「わかりましてよ」
「ところで、この被害者の人、なんで数十回もドアを開けようとしたんですかね」
「警察でも同じこと聞かれましてよ」
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さらに二日後、裁判所からの呼び出し。余談だが検察庁と裁判所は完全に別の独立した組織であるが、たいていは隣接した場所にある。私が逮捕された地方都市も、かつて住んでいた大都市でも同じだ。
以前裁判に出廷した時は、いかにも裁判所って感じで気分も上がったものだが、今回は簡易裁判、風情も何もない事務所の一室だった。そこで裁判官らしき人が、A4の用紙を手渡してきた。
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[略式命令]
主文 被告人を罰金100,000円に処する
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あまりに淡々としていたので覚えていないが、主文読み上げとかはなかったと思う。裁判所内での、ものすごく長い待ち時間の割には、一瞬で裁判は終わった。5分もなくない?
釈放、だがまだだ、まだ終わらんよ (クワトロ・バジーナ)
再び検察……、隣の建物だがそこに連れていかれ、罰金の支払い方法について説明を受ける。後日全額を支払うか、日当5.000円で労役するかだ。
まあ10万円なら即金で……と思ったが、釈放で浮かれていた私に悪い考えが頭をよぎる。
まてよ、労務刑っていうのもなかなか経験できないぞ。さすがに20日も行きたくないが、9万払って二日だけ体験するとか……迷うねェ♥
このとき私の顔は、アルカとキルアを殺そうとするヒソカのようだった。
検察の徴収担当係の人が私に聞いた。
「……で、支払いはどうしますか」
「全額即効で支払いますわ」
【実録】貴族令嬢の華麗な留置所生活 [完]
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追記
裁判所で釈放された私だったが、ここは交通量のない中途半端な場所。逮捕時の部屋着であるジャージ姿で、素足のクロックスを引き摺りながら歩いた。平日のお昼に、こんなみっともない理由で人を呼びたくなかったし、タクシーを呼ぶにも現金がない、まずはコンビニだ。
バスも路線がよくわからないので、とりあえず近くの駅までトボトボ歩いた。まあミジメったらありゃしない。もうコリゴリだよ……
終 劇
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読んでくださり、ありがとうございましてよ、ホーホホホ!