表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

貴族令嬢、逮捕されるッ!

令和7年検第○○○号


起訴状


○○簡易裁判所 殿


○○区検察庁

検察官 副検事 〇〇〇〇


拘留中待命 黒い安息日


公訴事実


被告人は、令和7年○月○日午後○○時頃、○○において

○○○○(当時○○歳)に対し、その顔面を数回殴るなどの暴行を加えたものである


罪名及び罪状


暴行 刑法208条



◇◇◇



 若く美しい貴族令嬢である私、黒い安息日は〇〇警察の取調室にいた。部屋には私と私服の警察官が二人、おそらくどちらも刑事だ。


「では黒い安息日さん、通常逮捕ということで」


 正面に座る刑事さんが告げる。もう一人の刑事(?)さんが私に手錠をかけた。


チャキ、チャキキ……


 手錠は意外にも軽く細い。ずいぶんと使い込まれ黒い塗装が一部剥げた手錠は左右が鎖で繋がっており、中央には武骨な紺色の紐が結ばれている。それは紐というにはあまりにも長すぎた。長く、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた(ベルセルク)。むしろ紐が本体じゃないのかと思った私だったが、取り調べは続いた。



◇◇◇



 話は一年前にさかのぼる。


 若く美しい貴族令嬢(ここ重要)である私、黒い安息日は某地方都市のマンションに引っ越した。ここは閑静な住宅街にありながらもお店が多く買い物にも困らない。徒歩圏内に業務スーパー、コープ、高級マーケット、ラ・ムー、ドラッグストアがあるのだ、控えめに言って神立地である。


 しかし悩みがあった。引っ越した当初から、何者かが深夜に私の家のドアを開けようとするのだ。


 最初は気にならなかった。近所のドアが開閉する音がひびいてるのかと思ったからだ。しかし徐々に音の精度が上がり、それが私の家を開けようとしている、ということに気が付いた。それは日増しに頻度が上がり、連日続くようになっていった。


 私は身体に大きな障害があり、走ることが出来ない。事故で足を損傷しているからだ。ゆえにドアを開けようとする人物を掴まえたくても、玄関まで時間が掛かってしまい間に合わない。ドアを開けてもスコープを除いても、常にもぬけの殻である。ドアのカギは必ず閉めているので侵入されたことは無いが不快感は半端ない。


 半年前、ついに耐えきれずマンションの管理会社に連絡したが、警察に相談してくれと言われた。その後ドアを開けられそうになるたびに110番通報を繰り返していたが、ようやく犯人が見つかった。真上に住む住民だった。


 その住民は家を間違えましたと謝りに来たが、それにしても回数が尋常ではない。数えていたわけではないが週に二度以上のペースで過去数十回は確実に、正確にカウントすればおそらく100回以上は行っていただろう。私は警察に逮捕を要求したが、曰く迷惑行為での逮捕(起訴)は難しいという。


 ……しかし、その後も迷惑行為は続いた。


 おそらく本当に間違えているのだろうとは思う。別に物取りや変質者といった感じではなかった。しかし回数が尋常ではない。警察2名と同行して再度謝罪に来た時は私の堪忍袋が限界に近づいていた。もうしませんと頭を下げる犯人に私は声を荒げ、次同じことをしたらどうするのかと問い詰めた。彼は警官を前に私へ向かってこう言い放った。


「つ、つぎ同じことをしたら私をシバイてください」

(原文ママ)


注釈)

「シバイてください」とは「殴ってください、暴行してください」という方言。



 ……しかし、その後も迷惑行為は続いた。


 迷惑行為、マンション、一年間。何も起きないはずがなく…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お帰りなさいませ、貴族令嬢様!…と思ったら、ノブレス・オブリージュ(物理)が、不埒な輩を(物理で)教育したということでしょうか…(・_・;)<でも、これは流石にキレますわ…警察まったく役に立たん… …
 むこうから、強烈な前フリが来ましたね(汗)  お笑い時空なら待ってました、なんですが。
シバいてくださいと言いながら、訴えやがったのか、そいつ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ