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わたしの家の ばけもの

作者: 西の宮

 あのばけものが、いつからあたしの家に住んでいるのかは知らない。




 亡くなった祖母が、子供の頃にはすでに居たらしいから


 100年くらい?






 普通のペットなら、ともだちみたいに、ペットロスで落ち込むこともあるだろうが


 ばけものというのが幼い頃は嬉しかった、だって死なないんだもん!




 昔、わたしが車にひかれそうになった時、庇ってくれた時は頼もしかったけど、こわかった。


 ばけものが、死んじゃうんじゃないかって






 はね飛ばされたばけものは、3日くらい姿を見せなかった。


 あの3日が生涯で最悪の日々だったっけ?




 でも3日後に、何事も無かったように帰ってきてくれたの!






「大丈夫なの?」




 って、わたしが聞いたら




「大丈夫だよ、僕は ばけものだからね」




 って、ほほ笑み返してくれたのは まるで王子様みたい!




 なんでわたしの家にずっと居るのか


 子供のころに聞いてみたことがあるけど






「君が小学校を卒業したらお祝いに教えるよ」




「卒業おめでとう、もう中学生か。


 君が高校生になれたら教えてあげるね?」




「時間が経つのは早いね、もう大学生か


 うん、大学を卒業したら教えようかな」






 こうして、わたしは何度もばけものに


 聞き続けたけれど、1度も答えてもらったことはない。






 おばあちゃんが亡くなる前日だったかな?




 ばけものが珍しく、おばあちゃんの部屋に篭りっきりだった。




 いつもは猫のように、うろうろと家の中を徘徊してるばけものだから


 こんな日もあるんだなと、少し驚いたのを覚えてる。




 おばあちゃんとの最期の会話は




「知りたかったら、あたしみたいに長生きしなさい」




 だった。




 おばあちゃんは、ばけものから理由を教えてもらったみたい。




 おばあちゃんが亡くなったっていうのに


 ばけものはいつもの笑顔を絶やさない。




 やっぱり、ばけものはばけものなんだな


 人の気持ちがわからないんだなって。




 祖母を見送りながら、怒った。




 祖母の遺品を整理し始めると


 毎日書いていた日記が出しっぱなしになってる。




 いつもは、片付けを忘れない祖母だが


 最後の片付けは忘れたみたい。




 このまま、祖母の遺品と一緒に 燃やした方がいいか悩んだけど


 ごめんなさいとおばあちゃんに謝りながら、祖母とばけものが一緒に居た


 あの日の日記を読ませてもらう




 1日中一緒に居たのに、祖母の日記に書かれていたのは


 ただひと言。




「ばけものに、教えてもらった」






 ばけものは今日も笑いながら、家族が出かけるのを見送る。




 祖母の居なくなったあの家で


 残されるばけものは、何をしてるんだろう?




 でも、1つだけわかってることがある。




 今日も帰ったら、あの笑顔で「おかえり」と言ってくれることを。







お別れを言い損ねたので

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