変わり者公爵令嬢の記憶喪失 3
すみません、タイトルを一部変更させていただきました。
物語の内容は変わっていません。
「え?」
つい、公爵令嬢らしからぬ呆けた声を出してしまった。
嫌な妄想が膨らんでいく。
「‥‥‥まさか。あれは‥‥、予知夢?」
自分の放った言葉が体中に広がっていき、嫌でも頭に理解させる。
信じられないと思う反面、こんな偶然普通ではないと主張する私の中の声が大きくなっていく。
そこからのアンリの行動は早かった。
すぐさま家に帰り、メイルにすべてを話した。
信じてくれるか心配だったが、流石のメイル。
状況をすぐに飲み込み、疑う様子なんて一瞬も見せなかった。
その後、アンリとメイルは普段通りに過ごした。
――—そして、ついに12時から30分前の、11時30分。
警戒を強め、周囲を警戒する。
二人の緊張がマックスまで達したその時、ドォォンっと外で音がした。
「な、何!?」
「なんですか!?」
二人して叫び、インターホンから外の様子を確認する。
そこには、美しく空を舞う花火の残り火が。
「花火‥‥よかった」
アンリが安堵のため息をつくと、チャイムが鳴った。
インターホンには、満面の笑みのお隣さん。
〈よかったら、一緒に花火観ませんか? よく見えるところを知ってるんです!〉
アンリが返事をするより早くメイルが言葉を発した。
「申し訳ありません、食事中なので、またの機会に」
一方的に言い切り、インターホンをオフにしてしまう。
「メイル? なんで切ってしまったのですか?」
不思議がるアンリに、メイルは真剣な表情で、周囲の警戒を崩さずに答えた。
「お嬢様、もしお隣さんが言っている " 花火がよく見える場所 " があの大通りだったとしたら‥‥‥?」
はっと息をのみ、目を見開く。
「そうでしたね‥‥! ありがとうございます、メイル。危うく外に出てしまうところでした」
そこから二人とも言葉を発しず、ただ時間が過ぎるのを待った。
12から15分前の、11時45分。
外から騒ぎ声が聞こえる。
「火事だぁぁぁぁぁ!!」
家の中でも聞こえたその声は、アンリとメイルに心情の変化をもたらした。
インターホンから見えたのが、フェリー家の家の前のお屋敷が燃えている様子だったからだ。
このままだと、火が燃え移ってしまうかもしれない‥‥!
すぐさま外に出て、火事の家から遠い場所に避難するメイルとアンリ。
今日は父も母も家におらず、メイドたちも休みの日だったため、屋敷にはメイルとアンリしかいなかったのだ。
アンリとメイルは大通りから遠ざかるように逃げていたのだが‥‥。
運悪く、大勢の人がいる商店街に入ってしまった。
何かイベントでもあるのか、多くの人たちが同じ方向——あの大通りの方向へ向かっており、人波ができていた。
アンリとメイルはあっという間に離れてしまい、それぞれ人の波に飲み込まれた。
アンリは必死に人波に抵抗するが、ついに押し流されてしまい、大通りに出てしまった。
「どうしましょう‥‥‥! やはり未来を変えることは無理なのでしょうか‥‥?」
思わず青ざめたその時。
誰かにドンっとぶつかられ、よろめいたアンリはそのまま車道へと飛び出してしまった。
映った景色は、あの夢と全く同じ。
目の前に迫るトラック。
人々の悲鳴。
全てがスローモーションのように見え、アンリは目の前が絶望の色に染まっていくのが分かった。
「——————ッ!」
ぎゅっと目をつぶる。
なぜか痛みも衝撃もやってこず、恐る恐る目を開ける。
トラックはアンリの体からおよそ1センチのぎりぎりのところで止まっていた。
トラックから運転手が顔を出し、怒声を上げる。
「危ねーだろ! どこ見て歩いてんだ!」
慌ててアンリは謝り、そそくさと歩道に戻る。
近くにあった公園でスマホを取り出し、メイルに向かってメールを打つ。
〈 ぎりぎりだけど事故は阻止した。生きてる。メイルは今どこ?〉
打ち終えるとため息をつき、アンリはだらしなくベンチに寄っかかると、目を閉じた。
絶望の色が、安堵の色に変わっていくのがわかった。




