絶望の闇に差し込む希望という名の光 2
記念すべき20話目です!
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やってしまっていました!
副タイトルが違くなっていたので、変更させていただきました。
物語の内容は変わっていません。
冬斗は死んだ。カイガ冬斗ヲ殺シタ。
カイガ事件ノ真犯人。
その事実がアンリの頭で回り続ける。
冬斗はカイに殺された。
カイが殺人鬼だった。
繰り返し繰り返し自分に言い聞かせる。
カイはもう昔の彼とは違うのだと。
希望を持ってはいけないのだと。
目の前のカイは呆けた顔をしてぼんやりと宙を見ている。
今がチャンスだ。
逃げるには、今しかない。
アンリは軽く腰を落とし、逃げる準備をする。
ちらりとカイを伺うと、未だに生気のない表情で空を眺めている。
軽く地面を蹴って、アンリはカイから逃げ始めた。
自分に出せる最速のスピードでこの場から離れる。
「‥‥‥‥っ、アンリ!」
後ろからカイの声が追いかけてきたが、無視して走り続ける。
しばらく走り、追いかけてきていないのを確認すると、アンリは警察に通報しようとスマホを取り出す。
その時。
――――――ゾクッ
背筋に寒気が走る。
ヒュンッ
思わず凍り付いたアンリの頬スレスレを、尖ったものが通り過ぎていく。
はらはらと髪の毛が数本地面に落ちる。
――――動けない。
まるで地面に縫い付けられたかのように、何かに押さえつけられているかのように。
体が動かない!
「こんにちは、アンリちゃん?」
アンリの目の前の男の子は、アンリを見上げて嬉しそうに言った。
―――—見えなかった。
この子はいつ、私の前に来た?
ピエロのような服装をした男の子は、目を輝かせて楽しそうに背の後ろで手を組んでいる。
「始めましてだよね! うちのカイが昔はお世話になったね♪」
「‥‥‥うちの、カイ‥‥‥?」
呆然とした自分の声が耳を打つ。
そんなアンリを尻目に、男の子をあっさりうなずく。
「うん、そう。僕、カイのご主人サマなの」
「へっ‥‥‥?」
だらりと冷や汗が流れる。
どういうこと?
カイに主人がいたの?
しかも、こんな幼い子供の‥‥‥!
しかし、侮ってはいけないと、アンリは男の子を見極めようとする。
味方か、敵か。
「んもお、僕のこと好きなの~? そんな見つめられたら照れちゃ~う♡」
んふふっと嬉しそうに笑う男の子は、年齢相応に幼く見えた。
アンリの警戒心がゆるむ。
と、次の瞬間。
「油断は禁物だよっ☆」
からかうような男の子の声と同時に、肩にのしかかる重み。
男の子が自分の肩につかまっているのだと気づくまで、数秒かかった。
手に汗がにじむ。
まずい。
まずい、まずいまずいまずいまずい。
この男の子は危険だ。
頭に警報音が鳴り響く。
「ねえねえ、君、孤児だったんでしょ?」
男の子はアンリの耳に口を寄せ、ささやいた。
「孤児って、どんな気持ち? 僕、生まれた時からお金持ちだったから、ビンボーさんの気持ちわかんないの。でも、ビンボーってすてき。ゴミ箱の中をあさって、食べ物とかを探すんでしょ? とっても楽しそう!」
僕もやってみたいなぁと呟く男の子に、アンリは猛烈な怒りを感じた。
「‥‥‥あなたに、あんたに私たちのことがわかってたまるか!!」
悲鳴のような怒号に驚いた男の子は、アンリの肩を掴んでいた手を滑らせ、地面にしりもちをついた。
「んもう、痛いなあ。やめてよね、僕、か弱い子ど」
男の子の言葉が急に途切れた。
理由は明白だ。
アンリの本気の拳が男の子の頬にパンチを繰り出したのだ。
男の子の頬に血が滲み、ぽかんと空いた口から折れた歯の破片が出てくるのを見届けたアンリは、猛獣のように男の子を威嚇する。
「二度となめた口利くんじゃねえ」
飢えた肉食獣のような鋭い瞳が、男の子を見ている。
「へ、へえ、君、なかなか野蛮な女性なんだね‥‥‥」
呆けたように宙を見つめていた男の子は、ハッとしたように話し出した。
アンリは男の子の言葉を無視して警察に電話を始める。
それから数十分後。
暴れる男の子を押さえつけていたアンリの耳に、パトカーのサイレン音が鳴り響く。
「‥‥‥やぁっと来てくれた」
その後、男の子をさっさと警察に引き渡したアンリ。
パトカーに乗って来てくれたメイルと共に、カイの元へ向かい始める。
本当にあの男の子はカイのご主人様なのか。
カイは本当にこの事件の真犯人なのだろうか。
様々な疑問が、アンリの中で渦巻いていた―――——。




