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絶望の闇に差し込む希望という名の光 1

今回の話、すごく残酷です。

苦手な方は飛ばしてください。

色々残酷な部分をすっ飛ばして今回の話を簡単にまとめたものを、次回の話の初めに貼っておきますので、この話は無理に見なくても大丈夫です。

状況に絶望したアンリが目を閉じようとした、その時。

大きな影がアンリの前に飛び込んできた。

「えっ‥‥‥‥?」

鮮明に飛び散る血しぶき。

アンリの頬にべちゃりと飛び散った血は、アンリのものではない。

不吉な考えがあたまをよぎる。

嫌だ。嫌だ。

そんなわけがない。

そんな、わけが‥‥‥‥。


残酷な光景。

背中に刺さったナイフ。

そこから作り出される血の海。

うつぶせになっているので、顔は見えない。

でも。

アンリにはわかる。

それが誰なのか‥‥‥。

「冬斗っ‥‥‥‥!」

アンリが傍に駆け寄ろうとするよりも早く、ナイフの主が冬斗に近づく。

そして―――――。

ダンッ

背中を思い切り踏みつけた。


「さっさと死ねよ。往生際が(わり)いんだよ!」


ダンッ ダンッ

冬斗を踏みつける足が、刺さっているナイフに何度もあたる。

さらに深くナイフが刺さり、早送りのように血が流れていく。

「ぇ、ぁ‥‥‥‥‥‥」

アンリの顔は真っ青だ。

冬斗を助けたい。でも、今行ったらカイに殺される。

なかなか死なない冬斗にしびれをきらしたカイが、背中に刺さったナイフを抜いた。

冬斗の悲鳴が響く。

「あああぁぁぁぁッ」

ぶしゃっと宙に舞う赤い液体。

それを見てつまらなそうにつぶやくカイ。


「はん、汚ねえ花火だ」


知りたくなかったカイの正体。

こんな男に騙されていたなんて。

誰よりも、誰よりも貴方のことが好きだったのに‥‥‥。

「や、やめて‥‥‥」

「あ"? んだてめえ。てめえの番はこいつの後だ。それとも今殺してほしいのか?」

ナイフを見せつけるように手を動かすカイ。

「‥‥‥‥ッ」

アンリが息をのんだ、その瞬間。

カイがナイフを持つ腕を大きく振り上げた。

「な、何する気!? やめてっ!」

アンリが叫ぶも、カイは動きを止めない。

冬斗の背に狙いを定め―――――ナイフを突き刺した。

「ぎゃああああああっ!!」

――――冬斗は死んだ。

彼のあげた最後の悲鳴がいまだに宙に残っていた。


「次はてめえか」


懐からナイフを取り出し、アンリに向かって標準を定める。

当の彼女はまん丸に目を見開いていて、そこから涙があふれ出ている。

「カイ‥‥‥」

アンリが名前を呼んだその瞬間。

チカッと目の前がフラッシュバックした。

カイの視界の真ん中にいるアンリの姿が揺れる。

頭に記憶が思い浮かぶ。


ぼんやりとした表情で、一人の幼い少女が地べたに座っていた。

ボロボロの服を着た少年が、彼女に声をかけた。

「親、いないの?」

少年に比べれば比較的綺麗な服を着た少女は、不思議そうに顔を上げ、少年を見つめる。

「‥‥‥おにいさん、だぁれ?」

質問に質問で返してきた少女に不満を持つも、少年は答えた。

「俺の名は、カイだ。孤児たちを保護して、育てている」

その言葉に、少女が反応した。

素早く立ち上がり、それでも随分低い身長を精一杯伸ばし、一生懸命に言う。

「わたしも、つれていってください」

「‥‥‥‥は?」

目を点にして、少年———カイは呆けた声を出した。

「おねがいです。わたしも、つれていってください!」

なおも一生懸命頼み込んでくる少女をカイはいぶかしげに見つめる。

「わたしはおかあさんとおとうさんにすてられました。すむばしょもないし、おかねもないです。だから、おねがいです。わたしもつれていってください‥‥‥!」

カイは目を細めた。

「‥‥‥お前の言うことが本当だったとして、なぜ俺がお前を助けなければいけないんだ?」

「えっ、だって‥‥‥!」

驚いたように少女が目を丸くする。

純粋な瞳に見つめられ、カイの目は怒りに燃えあがる。

「お前は恐らく、両親に大切に育てられたのだな。生まれてすぐ捨てられた俺と違って。悪いが、俺はそこまでお人よしじゃない。他をあたってくれ」

そう言って去ろうしたカイを慌てて少女は引き留める。

「でも、でも! あなたは、だれかにひろわれたんじゃないんですか? そして、そのだれかにそだててもらったんじゃないですか? そだててもらったおんがあるのに、あなたはそれをムダにするんですか?」

「‥‥‥‥‥嫌な言葉を使うな。お前、かなり頭が回るようだな? いいだろう、俺がお前を責任もって育ててやるよ」

「っ‥‥‥! あ、ありがとうございます!」

歩き始めたカイの後ろにくっつくようにしてついてくる少女を、ふと足を止めたカイが振り返る。

「そういえば名前をまだ聞いていなかったな。お前の名前は?」

少女は満面の笑みを浮かべて答えた。

「わたしのなまえは、アンリです!」


ゆらりと映像の中の幼い少女が消え、現実のアンリと重なる。

訝し気にカイを見つめる彼女は知らない。

事件の真実を。

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