変わり者公爵令嬢の危機と歓喜 5
よろしくお願いします。
たくさんの方に私のような未熟者の作品を見ていただき、恐縮です。
ありがとうざいます!
アンリは呆然としてカイを見つめたが、再び冬斗が発した悲鳴で現実に引き戻される。
「早く冬斗の処置をしなければっ‥‥‥!」
カイの腕から抜け出し、冬斗へ向かって駆け出すアンリを見て、カイは一瞬悲しそうな顔をした。
が、すぐに顔を引き締め、アンリに続き冬斗の元へ駆けつけた。
冬斗の上に覆いかぶさり、全体重をかけて地面に押さえつける。
「カイ、そのまま押さえていてくださいねっ!」
アンリは冬斗の腕を取り、慎重に包帯を巻き付け、止血をする。
「ぎゃあああっ!!」
冬斗はカイを押しのけようとするものの、裏の世界で鍛えられたカイの力には敵わない。
手早く応急処置を終えたアンリは、靴の裏に仕込んでいた麻酔針で冬斗を眠らせた。
「とりあえず、これくらいですかね‥‥‥」
汗をぬぐって立ち上がる。
「‥‥‥‥アンリ」
名を呼ぶカイに対して、アンリは冷ややかに答えた。
「なんですか、カイ?」
◇◇◇
アンリが俺を見ている。
―――心臓を射抜くような冷たい眼差しで。
どうしてそんな目で俺を見る?
まるで虫けらでも見るような目で‥‥‥。
「‥‥‥なぜそんな目で俺を見るんだ?」
一瞬飲み込みかけた疑問を言葉として発する。
飲み込んでしまったら、その疑問は最初からなかったことになる。
それは嫌だから。
「確かに、殺人鬼の手を斬ったのは俺が悪い。だが‥‥‥。言っただろ? 俺はお前を助けるために」
ガッ!
強烈なパンチ。
平手打ちなどという可愛いものではない、アンリは本気で俺を殴ってきた。
腫れあがった頬を抑え、目を丸くしてアンリを見つめる。
◇◇◇
アンリは殴った衝撃で後ろに倒れこんだカイを見下ろす。
「‥‥‥っ、言われないとわからないのですか?」
アンリは苦し気な表情を浮かべ、カイに問う。
「言われないと‥‥‥、わからないよ」
「‥‥‥私に‥‥言わせるのですね。いいでしょう、わかりました」
アンリは一瞬息を深く吸い込み、決意を込めた瞳で言う。
「本当の殺人鬼は、あなたですよね?」
「‥‥‥‥何を言っているのかわからないな」
「白を切りとおすつもりですか。いいでしょう‥‥‥。全てご説明申し上げます」
「あなたは殺人を犯し続けている。‥‥‥そうですね、私の前から去った時、あなたはもう殺人を犯していたのではありませんか?」
「‥‥‥‥‥」
沈黙するカイを一瞥してから、アンリは話を続ける。
「そしてその大量殺人の罪を、全てあの人‥‥‥冬斗になすりつけた。そうですよね、カ―——」
冬斗のほうを見てからカイを振り返ったアンリの瞳が、恐怖で見開かれる。
ナイフが飛んでくる。
アンリに向かって一直線に。
恐らく、先ほど冬斗を攻撃した際に使ったナイフだろう。
こんな時でも頭が回ってしまう自分にあきれる。
―――もう自分は、終わりなのかもしれない。
裏の世界で鍛えられたカイのナイフ投げの技術は恐らく相当のもの。
避けきれるはずがないのだから‥‥‥。




