プロローグ
何作目か分からない死に戻りのお話。
グッ……
く、くる、苦し……
苦しい
「たす、けて……」
それが、多分、わたくしの最後の言葉でした。
踠いているうちに意識が遠退いて。
背後の誰かに形振り構わないで両腕を振り回していた感覚がして。
でも結局、それは無意味だったのだと思います。
首に巻き付いていたらしい紐のようなものは外れなかったので。
薄れゆく記憶の中で窓に映った人影は、わたくしより背が高く思えます。
それと愕然とした表情に真っ青な顔色の夫が慌てて駆け寄って来ました。
わたくしを殺そうとしている人物はフードを被ったコートを着ているから顔は判明せず、駆け寄ってくる夫の顔を見れば、夫はこの事態が思いがけない事なのだろうと思うのです。
だから解るのは……
夫はわたくしを殺したい程、嫌っても憎んでも恨んでもない、という事。
それだけ解っただけでも、わたくしはこの結婚を受け入れて良かった、と安心しました。
だってわたくしは夫に嫌われても仕方ない女でしたから。
でも、解らないことが有ります。
もし、わたくしが殺されるとしたら、殺す相手は夫だろうと思っていました。
夫になら殺されても構わない、と思っていましたし、わたくしは夫の手で人生を終わらせてもらえるならそれは幸せかもしれない、と思えるくらいには、夫を男性として愛していました。
しかし、わたくしを殺そうとしているのは、夫では無いのです。
では、わたくしは一体誰に殺されようとしているのでしょう……?
夫に殺される以外、わたくしが殺される理由が解らないのです。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
名前は有りません。
わたくし、夫……のように進みます。




